統合的な視点でスマホを捉え、200%、500%の伸びを狙う
―― 自社のマーケティングストーリーをひも解いたら、踏み込まない選択肢がなかった、という経緯は説得力がありますね。そこまで振り切れる広告主は多くないと思いますが、サプライヤーやエージェンシーサイドはどうですか?
加藤:鈴木さんのお話を伺うと、テクノロジーのサプライヤーとしては、効率化を追及するあまり、本当のマーケティングニーズから広がるストーリーを提案できていないのでは? という危機感を覚えます。良くも悪くも、PCで培ってきたノウハウが一気にスマホに持ち込まれ、まだ市場が広がる可能性があるのに効率化などの細かい話に終始しているところは、変えていかなければと思います。
山下:そうですね。自戒も込めて、エージェンシー側でも「ユーザー環境がそうだから一気にスマホに」といった話はあまり出ません。現場担当者同士だと、どうしてもKPIに捉われて、110%には伸ばせるかもしれませんが、200%、500%と大当たりを狙うことはできないのが現状です。
それを突破するには、「とりあえずリスティングに7割」のような前提を壊して、PCも含めたWebの予算をトータルで、あるいはマーケティング全般をトータルで見たときにスマホをどう活用するか、という視点で戦略を立てていくことが必要ですね。
鈴木:今やっと、CMOと呼ばれる人たちがデジタルが分からないなんてありえない、という状況になりつつあります。と思ったら、今度はPCの経験に捉われてスマホに舵を切れない。その思考が偏っていることに気づくことが、まず大事です。
セレゴ・ジャパン株式会社 マーケティング・ディレクター 鈴木 知行氏(写真中央)
ユナイテッド株式会社 執行役員広告カンパニー副カンパニー長 山下 優司氏(写真右)

広告主とエージェンシー、ベンダーが一体になり先例を
小澤:ただ、ほとんどの会社で事例はないかと聞かれるので、その最初の例をどこかが作るのが突破口になりそうです。今、媒体側もさまざまなソリューションベンダーとデータを安全に連結させて多様な取り組みをしているので、信頼できるパートナーを見つけて、効果の得られる施策を一緒に探る姿勢がカギになると思います。
山下:メディアで共通IDを持っているなら、例えばクッキーを多く有しているプラットフォーマーと組んで、PCでのアプローチがスマホ上のアクションにどう影響するかを見るなどもできそうです。
加藤:何か目的があって開いているPCと違い、スマホのほうがより一般生活に溶け込んでいます。そういうユーザーの状況に合った出し分けにも、データを活用してもっと取り組んでいきたいですね。
株式会社AMoAd プロダクトマネージャー 加藤 英也氏(写真右)

鈴木:生活に密着している点、また即時性に強みがある点で、私はスマホはOOHとの結びつきに可能性があると思っています。セグメントされているからこそできる広告クリエイティブも追求してみたいです。
―― ミクロな視点に偏らずに、プランニング自体にPCとスマホの横断を組み込んでいくことが今後の飛躍のポイントになりそうですね。我々もスマホ事業には乗り出して間もないので、PCでのノウハウを活かしてさらなる提案につなげたいと思います。