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O2Oからオムニチャネルへ

APIによる「解放戦略」に活路を見出す小売業界、米国事例に見るオムニチャネル戦略


消費者はどこにいるか

 米スターバックスは、飲食業界という比較的ネットサービスの脅威にさらされにくい業態でありながら、デジタルを活用したイノベーション・顧客サービスの向上に取り組んでいることで知られています。とくに、この数年の動きが目覚ましく、2011年に自社のアプリをローンチし、業界でもいち早くモバイルプリペイドカードにおけるキャッシュレス支払いサービスの提供を開始しました。

 また、2012年にはfacebook上の友人にスターバックスクーポンが送れるギフトサービスや、モバイル決済企業であるSquareのモバイルウォレットでも支払いが可能となりました。これらの取り組みにより、2013年の7月時点で店頭での支払いの実に10%以上がモバイルアプリ経由になったと米メディアで報じられています。ここからわかるのは、彼らが自社のプラットフォームに必ずしもこだわらず、積極的に顧客のいる場面に出て行こうというスタンスを取っていることです。

 自社のコアユーザーは、自社のアプリで。ソーシャルグラフでエンゲージメント拡大を図る場合にはfacebook。現在地から一番近いカフェを探している人に向けてはSquareのローカルサービスから。さまざまな文脈で、消費者接点を用意しようとしています。重要なのは、単にプロモーションのために行っているのではなく、きっちりと購買までの導線を引いていることです。

問われる企業としてのスタンス

 スターバックスは、こういったデジタルの施策において、頭一つ先に行っている感がありますが、その背景には新興テクノロジーベンチャーとの深い交流が挙げられます。CEOのハワード・シュルツがいま米国でもっとも注目を集めるスタートアップのひとつであるSquareの経営陣に名を連ねており、資本提携も結んでいます。また、facebookのCOOであるシェリル・サンドバーグがスターバックスの社外取締役を務めていた時期がありました(現在は退任)。

 消費者の興味関心の移り変わりがはやいからこそ、消費者をつかんでいるテクノロジー企業の「身内」になることで、そのエッセンスを取り込む。これだけ深い関係になっているので、サービスレベルでも融合を図ることが可能になる。前述の「開放戦略」と近い「取り込み戦略」も言えますが、小売業界の雄であるウォルマートも、テクノロジー企業を積極的に買収しています。

 多面的多角的に消費者との接点を探る姿は、あたかも企業そのものがオムニチャネル化しているとも言えるでしょうす。国内でも、経営レベルでデジタル戦略に携わろうという機運は生まれてきているように感じますが、事業会社が新興テクノロジー企業を買収するような事例はほとんど出てきていません。これからの時代で「負けない」ためには、まさにこういった米国企業のような貪欲な経営姿勢が必要となってくるのかもしれません。

 次回はいよいよ、国内企業のオムニチャネルの取り組みについて見ていきたいと思います。

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この記事の著者

新田 剛史(ニッタ タケフミ)

東京ガールズコレクション・プロデューサーとしてビジネス面の責任者を務めた後、2009年、株式会社ミクシィ入社。NIKEiDとコラボレーションした“ソーシャルバナー”や“mixiXmas”などのヒットコンテンツを生み出す。オンラインから店頭への送客施策においても先んじて実績を残している。2012年、株式会社Showcase Gig設立。

<受賞歴・講演等>
2007年、2008年モバイル広告大賞、2...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/02/20 12:43 https://markezine.jp/article/detail/19012

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