約1,700名が参加した大イベント「テクマトリックス CRM FORUM 2014」。本稿では、27セッションの中から、注目の3セッションを紹介する。まず、伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 エンタープライズサービス営業推進チーム コンタクトセンタービジネス推進課の伊藤仁美氏による「目指すべきオムニチャネル・分析活用への次の一歩~事例に見るCRM導入の現状から~」と題した講演。
CRM導入の現状と求められる要件
まず、CRMを導入した小売業や不動産事業の例を元に、課題と導入後の変化を紹介。例えば、小売業では、店舗の窓口とECの窓口が別というケースが多く、情報共有に煩雑な作業が伴ってしまうという問題があった。さらに顧客からの問合せも、電話、メール、FAXなど、様々なチャネルに寄せられた情報が、バラバラの状態で溜まっていることが多く、これもデータ活用を妨げる要因となっていた。
「システムを統合することで各窓口がスムーズに連携でき、また、チャネルの統合によりお客様がどのチャネルから問合せしても、一元的に管理できるようになった」と、伊藤氏。これらの事例から見えるCRM に求められる要件は「オムニチャネル化」「ノンカスタマイズ志向」「業務の多様化」の3つだとした。
まず、小売業に限らずどの業界でもチャネル統合の要請は高いため、『オムニチャネル化』が必要であるという。そして、なるべくカスタマイズなしで標準で使いたいという要請から『ノンカスタマイズ志向』も必要だ。さらに、オムニチャネル化が進むと、様々なデータベースからのアクセスが必要になるので、他システムと連携してスムーズにアクセスできる環境も必要になってくる。それが『業務の多様化』となる。
加えて、CRM導入にあたり、もう1つ大きな課題がある。様々な業種の企業へのインタビュー結果から『費用対効果が不明確』というコメントが大半なことからわかるように、効果が見えづらいというのが大きな課題となっている。確かに、コンタクトセンターの丁寧な対応の結果、顧客の支持を得て次の購買に繋がったとしても、なかなか定量的な評価できない。「ただ、コンタクトセンターの最適化という枠から、より全社的な利益に貢献していくという流れを作ることこそ、今後求められるものだと思います」と伊藤氏は話す。
では、どうすればこの利益貢献に繋げられるのか。オムニチャネルへの流れとして、まず、この1年で、シングルチャネルから、クロスチャネル、そしてオムニチャネルという風に、チャネルの多様化が進んでいる。それに伴い「そこに加わっているお客様の情報も社内的に一元管理していくという流れが出てきている」と伊藤氏は言う。
オムニチャネル時代に即した“個客”対応
そして、そのようなオムニチャネル時代のCRMに求められるものとは、顧客起点のチャネル横断管理、すなわち、一人一人の“個客”への対応だという。オムニチャネル化とは、それぞれのチャネルの中心に顧客が居て、チャネルを横断した管理を行うものだ。そしてその中で、コンタクトセンターは横断した管理が可能な上、実際に人が対応できるという点で重要な役割を担う。
ここで求められるのが次の3点だ。
- 様々なデータへのスムーズなアクセスによる的確で迅速な対応
- 分析・活用が可能な形でのデータの蓄積
- “個客”対応による売上・利益への貢献
この3点の中でまず大切なのが1番と2番だ。例えば、お客様の相談の中でデータは溜まっているものの、様々な種類のデータがそのまま一つのかごに入っていることがよくある。このような分析に繋がらない状態のままでは、データはうまく活用できない。整備されたデータを蓄積できるかが重要なのだという。
さらに、3番による売上・利益への貢献については、会員制生鮮品宅配サービス事業への導入事例を紹介しながら伊藤氏は事例を紹介した。
「コンタクトセンターには問合せ、顧客属性、購買・利用履歴など、様々な情報が溜まっている。一方、基幹システムでは商品が管理され、配達員により位置情報を管理している。これら全てをリアルタイムで計算し、どのルートでいけば最適な配送ができるのかを地図表示した。さらに、進捗状況や配送の一覧もリアルタイムで計算し、センター側からダッシュボードで見られるようなシステムも構築。このように、全てのデータを統合し、かつ、センターと配達員の両方にその情報が共有され、連携できる状態を作った。今後は、このような“個客”対応により、売上・利益に貢献していくということが必要ではないか」
DMP実装ニーズの高まり
問合せ内容や、広告への反応履歴。店舗や代理店の来店履歴や、ポイント情報、キャンペーンの履歴。さらには、Webの閲覧履歴などの多様なデータが存在する中で大切なのが、これらの情報とコンタクトセンターに溜まった顧客情報を統合的に見ていくということだ。これを包括して管理するプラットフォームである「DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)」に注目が集まっている。DMPを利用する際には外部のサービスを利用するケースと、自社で構築するケース(プライベートDMP)があるが伊藤氏はプライベートDMPの重要性を説く。
従来のCRMは、何らかの契約や購入があり、それをきっかけにデータを溜めて、活用するところがメインだった。しかし、プライベートDMPを利用すればまだ顧客になっていない段階から、全てのチャネルでの顧客の動きを把握できるようになる。
「モバイル、ソーシャルの普及により、Webを中心とした購入前の動きを把握できるようになったことが大きい。従来から、One to Oneマーケティングというキーワードは存在した。ただ、プライベートDMPの登場によりリアルタイムかつ見込み客の動きが把握できるようになりました。Web解析の向上と、チャネルが統合してきたこと、この2つの要因によってOne to Oneマーケティングが進化してきています」
伊藤氏曰く「当然のことだが、お客様はご自身に合った情報を求めている。だからこそ、一人一人のお客様に対する個別の対応が求められており、そこを意識することが、結果的に利益拡大に繋がる。そのために必要な仕組みがプライベートDMPです」
各顧客接点に合ったデータ統合、分析による“個客”対応が、利益拡大に繋がる。最後に伊藤氏は、社内外に存在する購買を中心とした「定量データ」と、コンタクトセンターに溜まったテキストデータのような「定性データ」。この2つを掛け合わせて分析・活用するという伊藤忠テクノソリューションズ提供のデータ分析ソリューションを紹介し、講演を締めくくった。
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