マーケターとしてのつまずきと成功体験

――今までの経験でつまずいたことはありますか。
白江さん:今担当しているサービスのリリース後に、最初のキャンペーンを行った時です。新規顧客の獲得とサービス自体の認知向上をねらって、「最大2か月無料」などの特典を一定期間付けるようにしました。このキャンペーンは好評で、500社を超えるお客さまから約4万IDという、想定以上の申し込みがあり、我々にとっては嬉しい悲鳴でした。ところが、無料期間が終わると解約者が続々と出てきてしまったんです。当初は、何が起こったのか全くわかりませんでした。
――BtoBの業態で4万IDの申し込みはすごいですね。でも、解約者が続出した理由は何だったのでしょうか?
白江さん:調べたところ、解約した人の大半がサービスを申し込んだだけで、実際の利用を開始していなかったことがわかりました。営業担当者やお客様にヒアリングした結果、その最大の理由は、利用者にとって初期設定作業が、我々が想定して以上に複雑だったということでした。
気楽に利用してもらうため特典を付けたのに、その後の手続きは全然楽ではなかった。申し込ませようというサービス提供者側の視点に偏ってしまい、利用者側の視点が欠けていました。
――なるほど、つまずきはしたものの、同時に気づきも多かった経験ですね。では、成功体験は?
白江さん:そのキャンペーンの失敗から、問題を分析してサービスを改善したことです。 まず、初期設定の作業工程で利用者がどこでつまずくのかを洗い出し、そこに対する改善を行いました。さらに、無料期間中に申し込んで、まだ利用をしていない人にフォローを入れるようにしました。こういった工夫を重ねたことでサービス利用率が改善し、無料期間終了時の離反率を減少させることができました。
――素晴らしいですね。では、今、抱えている課題は何かありますか。
白江さん:これまで営業を通して大企業を中心に販売してきたので、中小企業へも販路を拡大するために、Web経由での販売増加を画策中です。
――Web施策としては、どういった点に取り組まれているのでしょうか。
白江さん:個人的にはまだ不慣れな分野ですので、勉強しながら、SEO対策をはじめ一般的な取り組みは行っているつもりです。試行錯誤を重ねてPV数は徐々に増加傾向にあるので、次はコンバージョン率を高めることが課題ですね。他には何か良い方法ってあるでしょうか……。
――一般的にはコンテンツの内容を変えたり、キャンペーンを実施したりですが、最近は「なぜ、ユーザーは離反したのか?」を推測するためのツールが色々と出てきていますよね。昔のように「勘」だけでコンテンツをいじる時代ではなくなってきています。
例えば、商品をカートに入れたのに、その後会計に進まなかったユーザーに何が起きたのかを推測するツールです。ユーザーのマウス遷移を録画したり、ヒートマップを作ることで、ユーザーのUXを改善したり、コンテンツ内容を改善したりします。一定期間経つとチャットウインドウが出て、チャットで困っている点をリアルタイムで聞く、というのも「背中を押す」には有効だと思います。
白江さん:ありがとうございます。ほかには、せっかく申し込みフォームのページまで到達しても、なかなか実際のお申し込みへつながらないことも課題です。申し込みフォームの項目数を減らすなど、工夫はしているのですが……。
――そうなると、ユーザーが本来必要とする情報が見当たらなかったり、何か躊躇してしまうものがあるのかもしれませんね。そもそもの誘導方法自体を見直さないいけないかもしれませんね。
白江さん:はい、そうですよね。今はサイトに訪れた方の期待をコンバージョンに繋げられるように、インバウンドに改善していきたいと取り組んでいます。
