商品化を決めるのは、生活者
今回は、連載1回目で紹介したファンが集まる共創コミュニティとは少し異なる共創事例を紹介します。「どの商品を販売するのか」は通常、企業内で検討して決めることです。しかし、その決定を生活者に委ねることで成長しているプライベートブランドがあります。
生活者と企業が共にマーケティング活動を行う共創マーケティングの中で、商品の評価を生活者に任せ、商品開発から店頭販促にまで生かす。それが西友のプライベートブランド「みなさまのお墨付き」です。生活者延べ13万人と商品テストの共創により、売上前年比30%アップの成長を維持しています。同プライベートブランドの戦略企画を担当する、本間哲太郎氏に成功の秘訣を聞いてきました。
支持率70%以上の「お墨付き」で商品化
――「みなさまのお墨付き」のブランドコンセプトと誕生した経緯を教えて下さい。
本間氏:「みなさまのお墨付き」は、消費者テストで70%以上の方が「非常に良い」「良い」と評価したものだけを商品化するというコンセプトで展開しています。支持率が70%未満の商品は、いただいたコメントを元に改良して再度消費者テストにかける。これを繰り返して商品開発を行います。
そもそもこのアイデアは、世界最大の小売業者である米国ウォルマートのグループ会社で、イギリスの大手小売業者ASDA(アズダ)が成功させた「Chosen by You」というブランドをヒントにしています。これは文字通り、お客様に選ばれたものを商品化するという試み。プライベートブランド先進国であるイギリスにおいて、非常にお客様から支持されています。「みなさまのお墨付き」はこの成功事例を参考に、日本版にアレンジしたものです。
西友では2005年から「グレートバリュー」というプライベートブランドを展開していました。これは、西友の親会社であるウォルマートのプライベートブランド名を日本においても展開したものです。ですが、アイテムが増えていく中で価格や品質などが多様化し、ブランドのコンセプトが曖昧になってきていました。
そこで、ブランドのポジショニングを「消費者テストで好評価」かつ「有名ブランドのNB(ナショナルブランド)商品と同等以上の品質で、価格は1~2割低価格」と明確に定義した新しいブランド「みなさまのお墨付き」を2012年12月に立ち上げ、商品開発を始めたという経緯があります。過去の同等PB商品に比べ、「みなさまのお墨付き」商品の売上は前年比30%アップを継続しています。お客様にはご支持いただいていると感じています。
企画・開発・マーケティングを1事業部で実施
――新ブランドの立ち上げというと、大きなプロジェクトになると思います。社内の調整はどのように進めていますか?
本間氏:まず重視したのは「ブランド価値」の形成と提供をしっかり行うことです。以前は商品部が単独でPB商品開発を行っていました。ですが「ブランド価値」の提供を本質とした商品開発を行うため、マーケティングもPB開発に参画するようになりました。さらに、「みなさまのお墨付き」を中心とする新プライベートブランドの成長が著しいため、今後も西友の事業にとって大きな軸として位置付けることができると判断されました。そこで、2013年10月にマーケティング本部の中にプライベートブランド事業部を作り、その下に戦略企画、商品開発、サプライヤー開発の3つのチームを置いたのです。企画・開発・マーケティングまで1つの部署で完結できるようになったので、目的の共有がより確実になり、意思決定も早まりました。