見せたいコンテンツと見られるコンテンツは違う

押久保:今、デジタル上でのユーザーの気持ちを捉えるタイミングやコンテンツ、というお話が出ましたが、それはマス広告とは切り離して考えるということでしょうか?
坂田:そうですね。確かにずっと「マス広告の補完」の意味合いでデジタル広告を扱ってきましたが、ユーザーもデジタルとの向き合い方がこの数年ですごく変わってきていると思うので、同じ出し方やコンテンツだと視界に入らなくなってきています。ユーザーのその瞬間の気持ちに寄り添って、デジタルの世界だからできることを探る必要があると感じています。
友澤:動画広告でも、企業が見せたいコンテンツと実際に見せたいコンテンツはまったく違う。C.C.レモンでも、最後にしかブランドコミュニケーションを入れなかったからこそ逆に印象が強く、これだけ広まったんだと思います。
板澤:当社も動画を沢山制作していますが、視聴や取り上げられる文脈が不明瞭だとあまり観られませんね。実例を挙げると昨年タウンワークですごい技を持っているアルバイトスタッフの取材動画を制作してヒットしました。「このバイトスタッフの技術がすごい」といった取り上げられる文脈が明確なコンテンツだったので、動画制作にあたっては取り上げられる文脈を意識することも重要だと思っています。
友澤:新手法が続々登場する一方で、これまでの効率を求めるデジタルマーケティングの予算規模では、こうした施策の実施が難しいという課題が出てきています。KGIとKPIを切り分けて、マーケターがそれらをしっかり設計することが今後求められていくと思いますね。
スピード感ある施策の実施には社内理解が不可欠
押久保:デジタル活用の目的が効率化にとどまらくなってきたことで、例えば社内のデータベース連携や部門を越えた取り組みなど、また新たな課題も出てきていると思います。それらを含めて、今後の展望をお教えいただけますか?
板澤:効果測定です。意識的に時間とお金を使うのはこれからマストだと思います。実際にLINE関係の施策なども、シングルソースパネルを使って間接指標も含めて説明できるようにしつつ、ユーザーとの新たなコミュニケーション構築に注力している所です。また、前例のない施策については社内理解も大切なので、今後も十分に配慮していきたいですね。
坂田:社内への理解は、私も重要性を痛感しています。いち早く新しいことをといっても、ブランドの大事な広告費をテストに使うわけにはいかないので、そこは私たちが媒体社とトライアルする形をとったりして開発の部分をフォローしたり、ヤフーさんと一緒にデジタルクリエイティブの開発イベントを行ったりもしています。
友澤:動画やリッチアドが広がり、今デジタルは大きな潮目を迎えていると感じます。広告主は直接サプライヤーや媒体社とつながって、イメージを一緒に形にすることが大事になると思います。
押久保:皆さんのお話から、デジタル活用やデジタルマーケティングが次のフェーズに進みつつあることがよく伝わってきました。今後の事例などにも期待したいと思います。
