不適切な環境で表示された広告のインプレッションをもとに、広告費を得ようとする広告詐欺への懸念が高まっていることから、米国では複数の業界団体が調査研究を行い、その対策を模索してきた。
MRC(Media Rating Council)が今年6月に発表したガイドラインでは、「ビューアブル・インプレッション(Viewable Impression、人間が目視可能なインプレッション)」に分類されるには、ブラウザのウィンドウ内、あるいはアクティブなタブの上に表示された広告が、あらかじめ指定された面積と時間についての基準をクリアする必要がある。ディスプレイ広告の場合、広告のピクセルの50%以上が表示されていること、描画されてから1秒以上連続して上記ピクセルが表示されていることが求められる。
IABが16日に発表した “State of Viewability Transaction 2015”は、デジタルメディアおよび広告業界が、ビューアブル・インプレッションの割合を100%にするために必要な方針を示したもの。その前提となっているのは、MRCが今年10月に示した「現在では、広告キャンペーンの分析において、100%のビューアビリティ実現を求めるのは無理」という現状認識だ。
異なる広告ユニット、ブラウザ、プレースメント、ベンダー、測定手法が、異なるビューアビリティの数値を生み出している。そのため、より強い共同作業と信頼の構築が必要として、IABは2015年を100%ビューアビリティを実現するための移行の年と位置付け、マーケター、エージェンシー、パブリッシャーが2015年に厳守するべき7つの原則を明らかにした。以下はその抜粋である。
1. すべての請求は、キャンペーンで配信されたインプレッション(Served Impressions)の数をもとに行なうことを継続し、2つのカテゴリ「Measured(測定されたインプレッション)」「Non-Measured(測定されていないインプレッション)」に分けるべきである。(※)
※MRCは、測定されていないインプレッション=非ビューアブル・インプレッションとみなすべきではないとしている。
2. 現在のテクノロジーの限界、およびパブリッシャーの測定に30~40%の相違が見られたことから、2015年は、閾値として、測定されたインプレッションで70%のビューアビリティを固守することを推奨する。
3. キャンペーンが70%のビューアビリティを達成できない場合、パブリッシャーはその閾値を満たすまで、追加のビューアブル・インプレッションを補填するべきである。
4. 上記の補填は現金ではなく、適切な時間の枠内での配信によるものとする。
5. 242,500ピクセルかそれを超える大きな広告フォーマットの場合、その広告のピクセルの30%が最低でも1秒間ビューアブルであれば、ビューアブル・インプレッションと計測される。
6. バイヤーとセラーの間のすべての取引は、MRCが認証したベンダーのみを使うこと。
7. バイヤーとセラーは事前に、ひとつの計測ベンダーについて合意すること。
IABは2015年を100%ビューアビリティを実現するための移行の年と位置付け、これらの原則を守ることを広告業界に呼び掛けている。
また、Videologyが17日に発表した動画広告のビューアビリティに関するレポートでは、VASTによる広告呼び出しによって配信された広告はビューアビリティを計測できず、VPAIDによって配信される広告だけが計測可能と説明。現在では動画広告在庫の約30%は、ビューアビリティの計測が不可能だとしている。また同調査では、各種ターゲティングがビューアビリティに与える影響、業界ごとのビューアビリティの違い、さらには、ビューアブルと測定されたインプレッションとそうでないインプレッションのROIを比較するデータを紹介し、ビューアビリティを重視しすぎることのリスクについても指摘している。
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