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Yahoo!広告活用の今を追う(AD)

勢い増すキリンのデジタルシフト 広告主企業の組織はどうあるべきか

 新たな広告ソリューションやデータ活用サービスの開発にも力を入れているYahoo! JAPANによる本連載。この数年の“爆速”的な変革に加え、2015年4月にはマーケティング機能をセントラライズ化し、ドラスティックなマーケティング活動を推進している。今回は、キリンのデジタル戦略の舵を取る上代晃久氏を迎え、「広告主の組織はどうあるべきか」という大きなテーマに真正面から向き合った。

デジタルコミュニケーションに対応し、お客様に新たな価値を提案するためにデジタルマーケティング室を新設

友澤:この連載は開始からもう2年ほどになりますが、昨年までは比較的プロダクトカットでさまざまな話題を扱っていました。これからは「誰が動かすのか?」ということが大きなテーマになってくると思っています。まさに、組織や人材育成の話ですね。

上代さんとは直近でもJAA(日本アドバタイザーズ協会)のWeb広告研究会のフォーラムでご一緒しましたが、組織論、特にこれまでマス広告を中心にマーケティングを展開してきた“トラディショナル”と言われる大手企業の組織を議論するなら、ぜひ上代さんにと思ってお招きしました。

キリン株式会社 CSV本部 デジタルマーケティング室 デジタルマーケティング担当 主査 上代晃久氏(写真左)ヤフー株式会社 マーケティング&コミュニケーション本部 本部長 友澤大輔氏(写真右)
キリン株式会社 CSV本部 デジタルマーケティング室
デジタルマーケティング担当 主査 上代晃久氏(写真左)
ヤフー株式会社 マーケティング&コミュニケーション本部
本部長 友澤大輔氏(写真右)

上代:お手柔らかに頼みます(笑)。

友澤:まずは簡単に上代さんの経歴をうかがえますか?

上代:元々は統計の仕事をしていたんですが、ネットが広がり始めた頃にこの世界に興味を持ち、制作会社などを経て直近では日本マイクロソフトに8年ほど勤めていました。オンラインサービスの広告宣伝やソーシャル全般のマーケティングを担当し、昨年秋、毎日の生活の中にある商品でマーケティングに挑戦したいと考えてキリンに転職しました。

友澤:キリンは、昨年1月に大きな転換期があったんですよね。

上代:ええ。従来型マーケティングから脱却し、デジタルを重視するという姿勢を体現するため、キリン株式会社内に、社内から選抜された人材を集めてデジタルマーケティング室が新設されました。事業会社のキリンビール、メルシャン、キリンビバレッジ内のマーケティング、広告、メディア担当とともに、デジタルを含めたマーケティングを力強く推進していくためです。

皆さんは飲料の専門家、自分はデジタルの専門家

友澤:事業を横断的に見るデジタル専門チームを設けるケースはときどき耳にしますが、入社時はどんな状況だったんですか?

上代:いろいろ調整しなければならないことが山積みでした。まず、デジタルマーケティング室と各事業会社のブランド担当に課せられた目的にも異なる考え方がありましたし、その年の売上も見ている事業会社と、未来への投資を考えるデジタルチームでは視点も違いますし。

友澤:特に大手日系企業だと、本来はプロパーで入社し、その後いくつかの部署を経てマーケティングコミュニケーションを担当する場合が多いですよね。それって会社全体を理解しないとできないので。でもデジタル領域はその専門性から、上代さんのように知見と経験を持ったマネージャークラスの方が外部からリーダーに就任することが多い。今回の就任で、苦労したことや工夫されたことなどはありますか?

上代:1年後は分かりませんが、「皆さんは飲み物のプロ。私はデジタルのプロ」という立ち位置を明確にしていますね。今から私が飲み物のプロにはなれないので、皆さんのお手伝いをするために来ました、と。

 入社当初はどうしても「マスorデジタル」という雰囲気がありましたが、「いやいやそうではなくて『マスandデジタル』ですよ、掛け算なんですよ」と社内で言い続けていますね。消費者のタッチポイントも増え、マスだけデジタルだけという媒体別の戦略ではだめだと思うんですよ。社内でも啓発をし続けて、考え方について理解を得られ始めたかなというところです。

デジタルマーケティングではいかにお客様と接触するかが重要

友澤:そもそも、御社の中でデジタルマーケティングをどう位置づけようとお考えですか?

上代:入社時にお話ししたのは、デジタルマーケティングとは「各種デバイス上のテクノロジー、コンテンツやサービスを使って、キリンがお客様と上手にコミュニケーションするかを考えること」ということです。お客様は本来、企業の情報見たさにPCやスマホを買ったり、使っているわけではないですよね。そんなふだん使いの中で、キリンのことを上手にアプローチしないといけない。「キリンがいいね」っていってもらうために必要なのは、日々の運用とエンゲージメント。……そんな内容でした。

友澤:運用と、エンゲージメント構築という考え方が必要だと。

上代:ええ。日々のコミュニケーションの積み重ねで、エンゲージメントはできていきます。だからデジタルマーケティングは運用が“命”なんですよ。だから、まずはお客様との毎日のコミュニケーションの品質を向上させることができる組織にしましょうと、そう提案しました。

友澤:日々のユーザーへの接触は、ヤフーでもまさに課題です。デジタルの運用だけだとボリュームが出ないので、近年はテレビCMをはじめマス広告や、検索大賞などのイベントを行ったりしていますが、「ユーザーの生活の中に企業がどう入っていけるのか」というのは今考えるべきポイントですね。

広告はメガホンを脱して「会話」をつくれるか?

友澤:特に、テレビとPCとスマホのトリプルスクリーン。これを統括してきれいにプランニングするのが理想だなと。今、日々の生活の中で、この3つのスクリーンに接する時間がすごく長いですよね。もっと言えばIoT時代で時計もスクリーンになったり。

上代:そうですね。まだまだ当社はテレビCMありきで、新商品発売時にマスを集中投下してそこからデジタルへという流れですが、目的やブランドによっては先にデジタルで情報を小出しにして話題をつくり、当日どかんと盛り上げる、というのもありだと思っています。映画やゲームなどのプロモーションはそうですよね。

友澤:だからまさに、組み合わせや使い分けそして配分が今年は重要になると思います。だから余計に、組織の壁を越える必要がありますね。

上代:少し未来の話になりますが、トリプルスクリーンやIoTの時代になると、そこにおける広告はどんなふうになると思われますか?

友澤:ここ最近、広告で考えるべきは「枠から人へ」と言っていましたが、次は多分「人からタイミングへ」でしょうね。リターゲティング広告だって、欲しいタイミングで欲しい情報であれば役立つし、それは会話になっていく。だから、広告が会話になれるか、ただ広く告げるメガホンになるかは、デバイス活用の仕方、特にスマホにおいてはとても重要な視点だと思っています。

広告主と媒体社が近づいてユーザーのタイミングを把握

上代:なるほど、同感です。タイミングという視点だと、企業のサイトやアプリに四六時中アクセスしている人なんかいないので、そうするとオウンドメディアの充実と同時にリマインドになるようなタイミングをどうつくるかを考えることがマーケティングコミュニケーション担当者には求められますね。

友澤:その意味では、広告主と媒体社がもっと近くなっていかないといけないですね。今、広告主のファーストパーティーデータ、そして調査会社などのサードパーティーデータは組み合わせて使われていますが、媒体社のセカンドパーティーデータも加えてデータを扱っていく。オウンドメディアと媒体社のメディアは、規模は違っても同じメディアなので、そこもどう組み合わせていくか。

上代:それらのデータを踏まえて、テレビCMを見た1カ月後に、実際に購入した人がどのように態度変容しているのか? そういった方にどういった広告を打っていくのか、PCではなくスマホでどんな広告を打てばリマインドになるか、ひょっとしたら半年先はどうか、そんなふうにストーリーを考えるスキルも必要になりそうですね。

友澤:そんな中での人材育成、仕事の切り分け方が大切だと思っていて、僕は最近「“コア”と“ノンコア”を決める」という話をしているんです。デジタル担当者が考えるべき領域はすごく広がっていて、今言われたようにストーリーも考えなくてはいけなくて、PDCAもリアルタイムに近づくと、正直もう担当者レベルではできない。そこで、コアを決めて、ノンコアはアウトソースなり機械なりに任せるというふうにしないと、非効率だし組織も肥大化してしまいます。

常に人がいる場所かどうかで“コア”と“ノンコア”を分ける

上代:言われてみれば私も、常に生活者が行き交うソーシャルとヤフーのようなメディア、そこにおける広告は“ノンコア”としてアウトソースしていますね。人が多すぎて、それぞれに適切な対応を考えていられないので。逆に自社サイトやメールなど、接触頻度の低い場は社内でフォローしています。

友澤:すでに実践されていますね(笑)。アウトソースするための経験やスキルもまた必要なので、そこは日々パートナー企業とやり取りして、OJTで会得すると。

上代:ソーシャル、メディア、広告の領域は進化が速いので、同じ言語を身につけて実働は任せるというのが適していると思います。オウンド領域はある程度は社内で身に付くので、うまくアウトソースできる人材の育成により重きを置きたいです。

友澤:組織づくりは簡単ではありませんが、新年度を迎えてさらにドライブがかかりそうですね。組織についてはこれまで何度もお話しさせていただきましたが、上代さんのなかでどういう組織を目指したいかを教えてください。

上代:部内には「テクノロジーとコミュニケーション」または「テクノロジーとメディア」のどちらかを選んで目標とスキル設定をしてコミットしてくださいと話しているんです。テクノロジーは、マーケターには必須です。また、ウェブ、ソーシャルなどデジタル内でも起こりがちな組織のサイロ化を防ぎ、デジタル全般に強いメンバーの集団になりたいですね。

ヤフーに対するデジタルマーケティング領域での期待

友澤:最後に、ヤフーを活用した今後のデジタルマーケティングの取り組みについてご意見お聞かせいただけたらと思います。いかがでしょうか。

上代:ヤフーというと、Yahoo! JAPANトップ画面のブランドパネル。“認知”に貢献できる絶対的な数字を持つ唯一のメディアという印象が強いですね。お客様がたくさんいる。PCでは日本でNo.1のポータルというポジション。

 そして今後さらに、マス×リアル×デジタルのストーリーのハブとなるメディアとしての役割、また購買データを組み合わせた分析やメディアプランといったデジタルマーケティングを推進していくための重要なパートナーとして、ともに連携できればと思ってます。また、スマホで新しいデジタルマーケティングの形をどう作っていくかというところもヤフーさんには期待しています。

友澤:そうですね、ヤフーのアセットであるビッグデータをいかにデジタルマーケティングに活用していただくか。また、スマホ領域でのコミュニケーションはどうするのかは大きなテーマですね。直近ではYahoo! JAPANのトップページやスマホ版Yahoo! JAPANのトップページなどのデザイン、広告ラインアップの刷新も予定しています。今後のヤフーの取り組みにも期待していただけたらと思います。

参考情報

スマートフォン版「Yahoo! JAPAN」、Yahoo! JAPANアプリのトップページの広告ラインナップを一新します

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2015/04/22 11:00 https://markezine.jp/article/detail/22252