消費者視点のストーリー構築力が重要
キュービックホールディングスは、デジタル広告を中心とする広告代理事業や、インターネット集客代行などを営むデジタルエージェンシー。増大するリスティング広告の運用負荷を軽減するため、マリンソフトウェアが提供する広告運用プラットフォームMarin Search Enterprise を導入。業務状況の改善と、CVR大幅向上を果たした。改善成功の過程を同社代表取締役CEOの世一英仁氏とディレクターの小川正隆氏に聞いた。
キュービックホールディングスには、ほかの広告代理店にはないユニークな特長がある。それは自社でWebメディアを運用して広告媒体としての価値を高め、広告主に広告出稿をしてもらうビジネスモデルも展開していること。一般の広告代理店や、リスティング広告など運用型広告の代行業者は、広告主から広告費を預かって運用し、手数料を取るものだが、キュービックホールディングスは、メディア運営事業と広告代理事業を融合した形で、広告主の利益を最大化する広告戦略を展開する。
例えば同社が運営するメディア内に掲載した純広告記事に対しては、記事を掲載して終わりではなく、その記事ページや広告主のランディングページへの集客もフォロー。コンバージョンを上げるため、リスティング広告に使うキーワード選定や運用までを請け負うといった具合だ。報酬は成果に応じて支払われるため、広告主にとってはほぼリスクゼロで効果的な広告戦略が展開できるわけだ。
「広告費を預かって運用するタイプのビジネスモデルと違い、自社でコストを負って広告媒体となるWebメディアを運営しているため、1円も無駄にできません。リスティング広告の運用も、すべて当社負担で行っています。クライアント企業と同じ立場に立ちながら、プロフェッショナルとしてのノウハウで広告を運用し、収益向上を支援するのが最大の強みです」(世一氏)
特長はほかにもある。それは広告の制作から運用、メディア運営まで一気通貫で行っていること。多くの広告代理店や制作会社では、「運用だけ」「制作だけ」というように受け持ち範囲やフォローする媒体が分断されており、一貫したブランディングストーリーを作り上げることが難しい。一方で消費者は、1つの製品を購入する際にも、さまざまな比較ページを見て悩み、広告主のサイトに行って検討し、また比較ページを見て考え、ようやく購入に至る……と、さまざまな媒体やプロセスを行ったり来たりするのが普通だ。そのため、検索から購買や登録までに消費者の行動を促すためのストーリー作りが重要になる。
その点、キュービックホールディングスは、広告の制作・運用・メディア運営まで一括して行うため、こうした消費者視点のストーリー構築において、他社にはない強みがある。しかし、手間をかける分だけ、現場の人手も必要になる。これが同社の大きな経営課題だった。
リスティング広告の運用負荷が極限状態に
キュービックホールディングスが現在運営しているメディアは「金融」「求人」「美容」「士業」の4ジャンル。
弁護士や税理士、司法書士など「士業」のサイトを運営・集客するチームに所属する小川氏は、Google AdWordsやYahoo!プロモーション広告などのリスティング広告の運用を担当するほか、サイトのデザイン、改善など、マルチに業務をこなしている。だがリスティング運用にかかる負荷が大きくなり、サイト改善にまでなかなか手が回らなかった。人手を増やしたくても、ノウハウの共有や教育が難しいため、「増やしたくても増やせない」という状態だったという。
リスティング広告の効果を上げるためには、日々の運用業務が欠かせない。例えば集客数が見込めるキーワードを選んだり、日々の予算配分に無駄や抑制がないか確認したりと、気を抜けない業務だ。「すべては自社コストなので、担当者が管理画面に就業時間中ほとんど張り付く必要があり、非常にシビアです」(世一氏)
常に最適化を行わないと、たちまち獲得数は悪化してしまう。だがこうした運用ノウハウは属人化しがちなので、人材採用を増やしても教育が難しく、一人前になるのは難しい。キュービックホールディングスでは、小川氏のほか、学生インターンにもリスティング広告の運用業務を割り振っていたが、「人によって向き・不向きがあり、学生全員の技術を一定に保つのは非常に難しいという現実がありました」と小川氏。また学生の場合、試験期間や帰省時期には来社することができず、その期間はフォローが手薄になってしまうという問題もあった。
担当者1名につき、担当するのは20アカウント前後。すべてのアカウントについてデータ分析やレポート作成を行う手間を考えると、人手もしくは自動化ツールが必要だった。そんな時に出会ったのが、マリンソフトウェアだ。小川氏によると、その出会いはユニークなものだったという。
国内製から考えを変えたきっかけは、他社からの推薦
「実はマリンソフトウェアを知ったきっかけは、アクセス解析ソリューションを展開している他社の方から教えていただいたことです。競合にもなりかねない製品を推薦してくれるのだから、優れたツールだろうと考えました」小川氏は語る。
限られた人数で作業を効率化するには、人間の手作業を削減する方法しかない。こうした思いから小川氏は、「できれば日本製のツール」ということを念頭に、国内のアドテク関連企業にヒアリングを重ね、最適なソリューションを探していた。そんな中、アクセス解析ツールの企業から「リスティング広告ソリューションなら、マリンソフトウェアがお勧め」だと教えられたという。
一方、数多くの海外カンファレンスに参加してきた世一氏は、マリンソフトウェアについては見知っており、「こうした運用広告ソリューションに関しては、やはり海外の方が一日の長があるためノウハウも蓄積されている」と判断。念のために類似ツールを数社ほど含め、検討を開始したという。
費用対効果を検討したところ、最もパフォーマンスが良かったのがMarin Search Enterpriseだった。マリンソフトウェアの検索広告ソリューションは、Google AdWordsを始め、国内外の主要なリスティング広告すべてに対応している。当初、「日本国内でしか展開していないYahoo!プロモーション広告に対応していないのでは」という懸念があったが、海外はもちろん、日本国内のニーズにも確実に対応していることが分かった。一度キャンペーンを登録すれば、自動で最適な運用を実行するほか、複雑な運用に関しては例外管理を適用することで、細かな要件に合わせて運用を最適化する。こうした機能と費用対効果を見て、導入を決めた。
導入直後は不安もあった
もちろん、導入に不安がなかったわけではない。世一氏は、「繰り返しになりますが、運用は属人的な作業です。なので導入するまでは、ツールでどこまで自動化できるのか分かりませんでした。そのため導入直後は、システムの挙動について、現場にかなり細かい部分までヒアリングしていました」と語る。実際、自動化ツールによっては、管理画面から目を離した途端にCPCが突然上がったり、キャンペーンが突然停止したりするという不具合もある。それを心配したわけだ。
また、効果の問題もあった。前述のとおり、リスティング広告の運用に当たっては人的作業もコストもすべてキュービックホールディングスが負っている。最適なリスティングでランディングページや広告ページまで誘導はできたとしても、実際にランディングページから商品やサービスの購入・登録が完了するとは限らない。そのため、広告主の求める最終的なコンバージョンと、広告運用プラットフォームで管理するサイトへの集客との間にズレが生じる。これについては、広告主に集客状況を連絡し、最終コンバージョンのフォローに努めた。
こうした種々の不安がありながらも、実際に稼働してみると、作業負荷はみるみる削減できた。管理画面に張り付いていなくても、リスクを自動的に排除して運用を最適化するといった効果が表れ始め、小川氏はその分をサイト改善に費やすことが可能になってきたという。
リスティング作業工数は劇的に削減、CVRが140%に!
作業負荷の変化で小川氏が最も実感できたものが、レポーティング作業だという。運用のモニタリングや広告効果に関する指標は多数あり、レポートを書く際にはどうしても数字を加工する手間が生じる。だがマリンソフトウェアのレポート機能により、同じテンプレートで必要な数字が抽出できるようになり、作業工数が大きく削減した。「以前は午前中一杯かかっていた作業が、いまは半分以下になりました」(小川氏)
空いた時間をサイトデザインや改善作業に費やせるようになったほか、全体のPDCAサイクルも早くなったという。運用広告は、競合会社の状況はもちろん、季節変動の影響も大きい。そのため、CVR改善策を実施して効果があったとしても、そのまま放っておくとあっという間に下がってしまう。再びCVRを向上するには、なぜ下がったのかという原因究明が必要だ。
Marin Search Enterpriseを導入したことで、そのサイクルが迅速化。これまで数か月に1度実施するのが精一杯だった「ストーリーの見直し」の頻度が上がり、その結果、導入前と比べてCVRが140%向上した。「効果を上げるには、リスティングの運用だけでなく、ユーザーの訴求ポイントや消費者ニーズを把握して、最適なキーワード選定やサイト改善を行うことが重要です。Marin Search Enterpriseの導入により、そこに割ける時間が増え、CVRの改善につながりました」(小川氏)
さらに、想定していなかった効果もある。それは1つの画面で、過去の広告パフォーマンスを比較できるようになったことだ。Yahoo!プロモーション広告の場合、期間ごとでパフォーマンスを比較するには複数のウィンドウを開く必要があった。しかし、現在では一画面でGoogle AdWordsもYahoo!プロモーション広告も関係なく比較できる。「こうした使い勝手の良さが、現場の運用担当者に刺さる部分です」(小川氏)
企業の成長・拡大に向け、さらなる期待
今後、キュービックホールディングスではマリンソフトウェアをどのように活用していくのか。この点について小川氏は、2つの可能性を述べる。
1つは広告クライアントを今まで以上に増やすこと。これまでは人手の限界があり、クライアント数の拡大にも不安があったが、Marinがあることで煩雑で難しい運用広告のフォローが楽になる。もう1つは、対象となる広告媒体を増やすこと。
現在同社では、マリンソフトウェアを活用して主にリスティング広告を運用しているが、その対象を広げ、ディスプレイ広告やDSP、またソーシャル広告などにも展開することを視野に入れている。当然、管理画面も増え、新たな用語や運用法などを覚えていく必要がある。そうしたこともマリンソフトウェアの活用を通して伸ばしていきたいと考えているという。
クライアント、広告媒体を増やし、企業の成長を加速するにはマリンソフトウェアが重要なカギとなるわけだ。キュービックホールディングスの今後の成長に期待がかかる。