Facebook広告に革命を/アライドアーキテクツ社との連携
MarkeZine編集部(以下、MZ):ここ最近、ゼロスタートさんはGMOメイクショップ社やブレインパッド社との連携など、様々な企業との提携を進められています。そして、先日発表されたアライドアーキテクツ社とのFacebookソリューションにおける連携にも、大きく注目が集まっています。
山崎:アライドアーキテクツ社との連携発表に先駆けて、新製品「ZERO ZONE AD(ゼロゾーンアド)」という、ECサイトに訪れた消費者の検索条件に応じて広告を出すという広告最適化エンジンを発表しました。これはただのリターゲティングではなく、消費者が設定した検索条件を高度な分析にかけて次の行動を予測し、それに見合った商品の広告を表示するものです。今回のアライドアーキテクツ社との連携はその第一ステップとして、Facebookタイムライン上の広告の最適化を行います。
MZ:ECサイトでの検索情報が広告にも非常に有効であることを、御社はこれまでも一貫して打ち出されていますね。
山崎:ええ。例えばユーザーが賃貸住宅の検索をしたとして、はじめからすぐに希望通りの物件が見つかる可能性は低い。希望の物件に出会うためには、ユーザーは継続してサイトを訪れ、物件をチェックし続ける必要があります。つまり、良い物件は未来に出る可能性が高い。そこでユーザーが「下北沢駅から徒歩5分以内」「家賃7万円以下」「築3年以内」というように、どんな条件で検索したかということがわかっていれば、その条件に合う未来の商品、検索した時点ではなくても、未来で登場した時点で広告を出すことができるのです。
これは旅行でも同様です。希望日に良い宿がない、また価格が折り合わずに予約できなくても、その後に直前のキャンセルが出たり、ディスカウントが起きることがあります。それはまさに、未来に希望の商品が出る可能性が高い商材と言えるでしょう。また、欲しいと思っていた商品が後々に値下げされたり、在庫切れだった商品が入荷するような、物販でも十分に活用できるでしょう。このような未来の商品の広告というのは大きな需要がある、そしてそれには検索条件が欠かせないと前々から考えてきました。
なぜユーザーはその商品を見たのか。本質的な情報をリマーケティングに活用する
MZ:しかし現在のリマーケティングは、いわゆるリターゲティング施策が多いように感じています。一回見た商品、あるいは買った商品しか広告を出せていないという現状がありますよね。
山崎:はい。しかし、「どの商品を見たか」よりも一歩踏み込み、「なぜこの商品を見たか」という消費者の本質的なニーズに寄り添った情報を使うことで、より正確に消費者を理解して本質的なリマーケティングができるはずです。もしかすると、一度見た商品でも、消費者にとって不要だった可能性もあるわけです。一方で、なぜその商品を見たかという元情報、つまり検索条件はそのユーザーを理解する最適な情報と言えます。だからこそ、我々は検索データの広告への活用をとかつてから視野に入れてきました。そして、今回のアライドアーキテクツ社との提携もその一環です。
また今回の提携の配信システムはFacebook内の広告ということもあり非常にわかりやすく、またFacebookでは類似オーディエンスへの広告配信ができることも利点でした。例えば優良顧客であるAさんに広告を出すだけでなく、Aさんに似た行動データを持つ人に対して広告を表示することができます。これは一般的なアドネットワークでは不可能です。両社のソリューションを合わせることでより優れたサービスができると、お互いの勢いが上手くかみ合い、連携の話が始まってからわずか1か月ほどで実現に至りました。
検索条件からレコメンド商品を考えるアルゴリズム
MZ:この製品を利用できるのは、ゼロスタートの検索システムを導入しているサイトに限られるのでしょうか。
山崎:いいえ。他社の検索エンジンでも検索クエリは取得できるので大丈夫です。弊社のシステムは検索自体ではなく、検索条件からどんな商品がいいか考えるところが本質です。「検索→出力」という他社の検索プロセスが、「検索→何の商品が良いか分析→出力」という形になります。そのため他社の検索エンジンを使われているお客様は、「Facebookには妙にツボをついた広告が出てくる。サイト内の検索結果よりも、Facebook広告のほうが欲しいものがレコメンドされてくる……」といった現象が起きてくるかもしれません。その場合は、ぜひ検索エンジン「ZERO ZONE SEARCH」を導入していただければと思います。またECに限らず、ブランドサイトにも活用の幅は広がっています。今や、実店舗で買い物をする時でさえ、ネットで商品情報をチェックしてから購入の判断を行うことが常識になりつつあるので、オフィシャルサイトでの商品検索が上手くいかなければ購入機会の損失につながってしまうのです。
MZ:これからも、様々な企業との提携が視野にあるかと思いますが、その指針は?
山崎:当面はこれまでと同様、検索データを使って、消費者にECサイトの外でも訴求をしていくというのが弊社の方向性です。メイクショップ社やブレインパッド社と提携したのも、弊社の検索データをより広い面で活用できるようにしたいという思いからでした。今回のアライドアーキテクツ社との連携によってさらに弾みが付きましたし、今後はまずは様々なアドネットワークとの提携を進めていき、最終的にはプラットフォームをつくっていきたい。消費者のオンライン上の行動データやECサイトでの購買データを蓄積・分析して、未来の行動を予測して広告を出せるような世界を実現していきたいですね。
検索条件からユーザーの意図をくみ取る世界を実現する
山崎:また、今後弊社の取り組みと融合させたいと思っているのが、昨今注目が高まっているAIやディープラーニング。今は画像認識やIoTでの活用が注目されていますが、現地点でECで活用しようとしている人はほとんどいないでしょう。だからこそ、取り組むには今がチャンスだと思っています。
ゼロスタートと他社の商品検索システムの根本的な違いは、「行動予測」です。例えば、「水」と検索すると、その文字列が入っているからといって、化粧水や撥水マットをヒットさせるような検索は、ある意味では正確ではありますが、ユーザーにとって最適な提案ではないわけです。ユーザーの要求に応えるには、「水」という文字が入っていなくても、気を利かせてクリスタルガイザーやボルヴィックを提案できなければならない。弊社が目指しているのは、このようなユーザーが入力した検索条件から意図をくみ取る検索です。
たとえ入力した条件が間違っていても、結果を0件にするのではなくて、気を利かせて結果を出す。また忠実に検索すると在庫切れになる場合は、代わりの商品を提案する。さらには新機種が発表された時期に、ユーザーが入力した商品の型番が一世代古いものだった場合に、検索結果に最新機種のものも表示して提案したり。それを実現するために、AIやディープラーニングの技術を活かすことができると考えています。
消費者の購買思考を「予測」する
山崎:これまで弊社が取り組んできたことの根底には全て、お客様の行動を予測する努力がありました。実店舗では、「釣りを始めたいんですけど、何を買えばいいですか?」といった漠然とした質問でも、店員さんは丁寧にお客様に商品の提案を行いますが、ECサイトではまだできていない。今まさに弊社が取り組もうとしている事柄に、新たな視点から、それを実現するテクノロジーがようやく使えるレベルになって登場しつつある、と実感しています。
MZ:今がちょうど良いタイミングですか。これまでにも、ベイズ理論をECで先駆けて活用したりと、ゼロスタートは時代の先を見据えた取り組みをされてきましたよね。
山崎:弊社がベイズ理論をECのレコメンドに活用し始めたのは2007年。当時はベイズ理論もマイナーで、スパムフィルターのテクノロジーといった認識の程度でした。しかし、ここ1年で注目が一気に高まり、その恩恵もあってか弊社も去年のレコメンドの売り上げはよかったですね。市場が成熟してから取り組んでも出遅れてしまうからこそ、AIやディープラーニングについても、早めに取り組んでいきます。
「予測/Predict」に関しては、広告やEC、実店舗の人たち全てが、将来は消費者の購買思考の分析に熱心になると思います。既に事例として、海外のスーパーチェーンでは、どの人がどの商品を見てどの商品を買ったかというデータを商品DNAと呼び、蓄積を始めています。それほど膨大な情報であれば、AIやディープランニングの活用先として十分です。その過程から、各消費者の欲しいものを理解して、顕在化していないニーズを提案する。今の多くのレコメンドは、「Aを買っている人はBも買っています」という初歩的なレベルです。しかし3~5年後には、「趣味で自転車にはまり、ステップアップにはどんな商品が必要か」というような、実店舗の店員が会話と経験を通してお客様に答えるような質問にも、ECで答えられるようになっているのではないでしょうか。
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