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マーケターのためのアナリティクス活用講座(AD)

データ活用に大きなインパクトを起こすには? 会社を成長させる「ウォレットサイジング」を解説

ウォレットとは何? 2つの視点で考える

 ウォレット・サイジングの方法論の説明に入る前に、マーケティング担当者のあなたにとって「ウォレットとは何か」を考えることが必要です。ここには「ウォレットの範囲」と「ウォレットの意味」という2つの観点があります。

ウォレットの範囲

 ウォレットの範囲は、前述の「生活ウォレット」のように、現在の自社のビジネスにとらわれずに広義に捉えることが可能です。もちろん、現状の「自社が提供している製品やサービスが該当する顧客の予算」とすることも可能です。

 例えばコピー機が商材ならば、コピー機本体、プリント枚数/コピー枚数/ファックス枚数、トナー費用に掛かる全体予算、などがその一例です。

ウォレットの意味

 ウォレットの意味も大きく2つ考えられます。「顧客の予算」そのものを指す場合と、「十分に顧客に食い込んだ場合に期待できる売上の最大値」をウォレットの代理とする場合です。

 後者をリアリスティック・レベニュー(Realistically attainable revenue)と呼び※1、顧客の予算に比較して小さい値になります。リアリスティック値は本来の「ウォレット」とは異なりますが、前のページで述べたような施策を実施するには十分に有効です。

仮説ベースでもOK、得られるインパクトを重視せよ

 ウォレット・サイジングの難しさは「正解データが稀少なこと」にあります。アンケート調査で「ウォレット」の情報を十分な量と質で収集するには莫大な費用がかかり、データ分析の初期段階でそんな費用を出す決断はできないことが普通です。

 そんな中どうウォレット・サイジングをするのか、いくつか提案されている方法を紹介します※2。日経リサーチの事例※3では「世帯貯蓄総額」を調査データとして収集した上で、それを個人属性などで説明するモデルを提案しています。調査データを集めることができるリサーチ会社の立場をフルに活用しています。

 またIBMの事例※4では、アンケートは実施せず自社の売上データを活用する方法を提案しています。ポテンシャルのマックスまで購買していると考えられる顧客の年間売上総額に絞った上で、それを顧客属性で説明するモデルです。ウォレットの範囲としては「自社が提供している製品やサービスが該当する顧客の予算」と定義し、「ウォレット」の意味は予算でなく、上述のリアリスティック値としています。

 これはどちらにも考慮点があります。前者は調査費用がかかること、後者は「正解」データが無い中でのデータ分析なので、別途モデルによる推測値の検証が必要になることです。方法論に難しさはあるものの、ここで強調したいことはウォレットを使った施策で得られるインパクトに着目すべきだという点です。

 「カスタマー・マーケティング・メソッド」(ジェイ・カリー、アダム・カリー:東洋経済新報社)では「最後の手」として人間の「あて推量」でウォレットを見積もるのでも良いとしています。同書の筆者であるカリー親子は先ほど提示した図に似た顧客階層を設定した上で、その中での移動がどれだけコスト・インパクトや売上インパクトを生むかシミュレーションしていく様子をとてもいきいきと描いています。ぜひ読者の皆様方もウォレット・サイジングの精確さにこだわって時間を空費せず、仮説ベースでも良いのでウォレットの活用に進んでいただきたいと思います。

 ウォレット・サイジング、いかがでしたでしょうか。独特な世界ではありますが、上手な活用をすることでインパクトの大きな取り組みになることが、このコラムで伝わればと思います。ちなみに、弊社SASもこちらのツールで対応いたしておりますので、ご興味ある方は参照ください。さて、次回のテーマはテキスト・マイニング、人工知能との関わりに触れつつ基本から議論します。お楽しみに!

※1、※4:Rosset, S., Perlich C., Zadrozny B., Merugu S., Weiss S., Lawrence R. (2006). IBM research report: Wallet estimation models. Computer Science.
※2:ここで2つの方法論を紹介していますが、網羅的であることを意図しておらず、あくまで例示です。
※3:飯塚久哲・星野祟宏・鈴木重央・大黒未鈴(2013).データ融合を用いたシェア・オブ・ウォレットの推定.日経リサーチ.
また、リサーチデータを使うものとしては以下もあります。
Du, R.Y., Kamakura, W.A., and Mela, C.F. (2007). Size and share of customer wallet. Journal of Marketing, 71, 94-113.

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この記事の著者

津田 高治(ツダ タカハル)

USの大学院から経済学修士を取得した後、2001年よりアナリティクスを始める。流通・保険・メディア・製造など各種業界でアナリティック・コンサルティングを実施した後、SAS Institute Japanのソリューション・コンサルティング  シニア・マネージャー(現職)として日夜アナリティクスのお客様適用に研鑽を積む。趣味は料理とショッピング。■講演 Analytics 2013 - SAS® Fo...

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2015/09/01 08:00 https://markezine.jp/article/detail/22899

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