消費者のオムニチャネル化に販売方法を対応させる
Leonis&Co.は、2011年にオムニチャネル専門のコンサルティング業務を軸に創業。現在はスマホ向けオムニチャネルマーケティングシステム「OFFERs」などのシステム開発・提供との両軸で展開を行っている。伊藤圭史氏は、昨年のトランスコスモスとの業務提携を経て、同社のオムニチャネル推進室の室長も兼任している。
伊藤氏は講演を始めるにあたり、オムニチャネルの定義を「消費者がオムニ化した時代に対応するための経営戦略」と解説する。
企業のオムニチャネル戦略を支援する中で、「『オムニチャネル』とは具体的に何なのか」とよく訊ねられる、と伊藤氏は続ける。「私もこの領域に携わって4年ほどになりますが、米国で先行する好例を日本でそのまま捉えても、なかなかうまい取り組みに結びつきません。多くの企業様と取り組む中で、前述のように位置づけ、まずは消費者の新しいショッピングスタイルを理解し、それに対応する販売方法を考えることが解決の糸口になると考えるに至りました。」。
つい最近まで、人々の購買行動は最初から最後まで単一チャネルで完結していた。一方、チャネルが多様化しスマホが普及した今では、店舗で目にした商品を価格比較サイトやSNSの口コミで調べ、最終的に店舗で買うなどチャネル間を行ったり来たりすることが当たり前になってきた。
現在の消費者の購買行動を、伊藤氏は「オムニチャネル型ショッピングスタイル」と表現する。「当然、買い方が変わったら売り方も変わる。ゲームのルールが変わったんです。今までと同じやり方では勝てません」。
商圏の概念が消滅 “Winner Takes All”の時代へ
“Winner Takes All”。新しいルール下での競争においては、いち早く市場を独占した企業がその後も一手に顧客を獲得する、独占性が高くなるのが特徴だと伊藤氏は解説する。例えばこれまでの実店舗をベースとした小売流通業では、物理的に顧客が足を運べる範囲、つまり「商圏」における「地域No.1」であることが、勝ち残る条件だった。
それがオンラインの販売とも競っていく状況が訪れた現在、いわば商品を届けられる場所のすべてが商圏。今や日本では「翌日着」は珍しくなく、遠方へも2−3日あれば十分だ。となると、商圏は「日本全国」になり、ほとんど「全国No.1」でなければ勝てないということになる。
国土が広い米国と違って、この点では日本での競争はよりシビアだ。「小売流通における実店舗は大切な顧客接点なので、完全にオンライン有利ではありませんが、自社はどのように『全国No.1』になるかの戦略を描くことは不可欠。これがひとつ、オムニチャネルに取り組むときに考え続けるべきことです」。