マーケティングツール別データの選び方の基本
ここまでの連載ではデータにフォーカスをしてデータ活用について述べてきました。最終回の今回は、DMPのデータを活用する先のマーケティングツールにフォーカスしてデータの活用について述べていきたいと思います。
まずはマーケティングツールにどのデータを使うか選ぶ際の判断軸について考えます。どのデータを使うかはデータが持っている要素(Cookie IDとか、メールアドレスとかマーケティングツールに連携できる要素のこと)と、DMPに登録されているデータの種類、その量によって判断することが多いです。
量については多いか少ないかになるのですが、データの要素に関しては、例えばCookie IDを持っていれば広告配信ツールに使う、メールアドレスを持っていればメール配信ツールで活用するなど、マーケティングツールごとに活用できる要素が異なるため、判断の重要なポイントになります。また、データの種類はツールとデータの連携のしやすさに関係してきます。
次から、広告配信ツール・ネットリサーチ・LPOツール・CRMツールのマーケティングツールごとに、どのようなデータが活用できるかご紹介しましょう。
広告配信ツールへの活用
広告配信ツールへは以下のようなデータの活用がオススメです。
- データの要素:Cookie ID、IDFA/Google Advertizing ID、IPアドレス
- データ種別:自社データ、外部データ
- データ量:小~大
広告配信ツールは出し先となる広告枠の数がかなり大きく、データ量が数千程度でも使い方によっては十分にマーケティング的な価値を見出すことができます。
例えば、外部データを活用する際はデモグラ情報などの規模の大きなデータであれば厳選した枠で配信をすることもできますし、ID-Posのデータなどボリュームの小さなデータでも純度が高いターゲティング方法であれば、広告枠を限定せずに広く配信を実施することでターゲティング対象に対して広くリーチすることができるようになります。
また、自社データを活用する場合はリターゲティングとしての活用になります。こちらについては小さい単位にデータを分割して細かくターゲティングを行い、広告効果を高めていくなどボリュームの大小に依存せず活用が行われています。
ネットリサーチへの活用
ネットリサーチへは以下のようなデータの活用がオススメです。
- データの要素:Cookie ID、モニターID
- データ種別:外部データ
- データ量:大
ネットリサーチとの連携は対象になるネットリサーチのモニターと、対象となるデータが保有している要素との連携を行えるボリュームに依存して、活用できる可否が決まります。
ネットリサーチのモニター自体は多くても100万程度の数になるため、連携をするデータのボリュームはある程度多くないと成立しないことがあります。そのため、実際にネットリサーチに対してDMPに溜まっているデータを連携する場合は、事前にどれくらいのボリュームがありそうかを検証しつつ活用プランを立てる必要があります。
LPOツールへの活用
LPOツールへは以下のようなデータの活用がオススメです。
- データの要素:Cookie ID
- データ種別:自社データ、外部データ
- データ量:大(外部データ)、小~大(自社データ)
LPOツールはデータの量の大小によって利用方法が異なります。例えば、新規顧客に向けた集客効率を上げるために外部データを活用する際は、活用する外部データとLPO対象になるページにアクセスするユーザーがどの程度重複するかを検証しながら、ターゲットの選定を行う必要があります。
LPOの対象になるターゲットがサイトに来る顧客の数%程度しかいない場合、CVRが2倍になっても全体のCV数に対してはほとんど影響がなくなってしまいます。一方で、ECサイトのように顧客が定期的に訪れるサイトの場合は、少量の自社データを活用したLPOでも売り上げに対して大きな影響を与えることがあります。
このようにサイトの質やデータの種類によってデータのボリュームと活用方法を検討する必要があるのです。
CRMツールへの活用
CRMツールへは以下のようなデータの活用がオススメです。
- データの要素:メールアドレス、電話番号、Cookie ID
- データ種別:自社データ、外部データ(ただし、自社データと連携できたデータや購入したデータ)
- データ量:小~大
CRMツールで活用する場合は自社のデータを活用することが基本になります。例えば、会員データを活用して顧客のランク分けを行い、ランクを分けた顧客に対してメルマガを配信したり、会員登録が完了してから、3日以内の人にチュートリアルメールを出したり。自社のデータを起点にターゲティング対象を決めていくことになります。
また、外部データを活用する場合はまずCRMデータと紐付けを行う必要があります。CRMツールを経由したデータ活用を行う場合は、最終の要素をメールアドレスや電話番号と連携する必要があるため、主となるデータベースがCRMツール側に対して、メールアドレスや電話番号にデータを連携しておく必要があります。
まとめ
ここで紹介させていただいたマーケティングツール以外にも、最近ではPush通知やダイレクトメールやチラシなど、オフラインのマーケティングツールと連携してデータを活用していく事例が増えてきています。
これらの場合でもそれぞれのツールの特徴を理解して最適なデータの要素・種類・量を検討しながら、マーケティングプランを作成することで、手元にあるデータや利用可能なデータの価値を最大化することができるようになるでしょう。
本稿で4回分の連載が終了ですが、データを使ったマーケティングはマーケティングツールの進化や、マーケティングに使うことができるデータの種類の増加で活用事例が増えてきています。
今まで、データを使って効率的にマーケティングを行いたいと思っていたものの、難しくて手が出なかった方も活用へのハードルが徐々に下がってきていると思います。
今回の連載でご紹介した話も参考にしていただきながら、「データを活用したマーケティングをやりたい」と思ってくださる会社が一社でも増え、マーケティング業界全体が活性化してゆくと幸いです。