経験とデータの両輪が必要
QlikTech社は、セルフサービス型のデータ・ビジュアライゼーションや、アナリティックスなどのソリューションを提供している。世界100ヶ国でビジネスを展開し、日本でもアウトドア・スポーツウェアメーカーのColumbiaやクレディセゾンなどが同社製品によるデータ活用を進めている。今回、APACエリアで小売と製造業部門の市場開発を担当するジェレミー・シン氏に、日本におけるデータ活用の現状を聞いた。
――世界的に見たとき日本のデータ活用はどのようなステージにあるでしょうか?
シン氏:日本はデータ活用のニーズが高く成熟もしています。データを根気よく分析しようと考えているユーザーも多く、また、膨大なデータを処理するインフラがすでに整備されているからです。様々な組織がデータディスカバリー、つまり、業務担当者が自身でデータを分析して課題発見等を行う可能性が広がっています。
一方で、他国と比べた場合に制約があると感じます。日本の組織は2つの問題を抱えているのです。1つはセキュリティに関する関心が高くデータ活用に対しても保守的であること、次に、現場のユーザー自らがデータ分析を迅速に行えないという過去の苦い経験から、データ分析についても保守的なアプローチが多く見受けられることです。
保守的とは「データよりも自身の経験値に頼ることが多い」という意味です。データと経験はビジネスの両輪です。データディスカバリーをより良くするために経験を活かすという考え方を持つべきでしょう。
――その保守的な日本に対して、御社はどのような解決の提案が可能ですか?
シン氏:様々なパターンがありますが、小売業界に絞って話をすると、データに眠るストーリー全体をあぶり出せることをお伝えしています。IT部門に頼ったデータ分析では複数のレポートを見比べたり、レポート自体が手元に届くまでに時間がかかったりします。
担当者がデータを分析することで、自身が経験に基づいて立てた仮説に合致する事実を確認できるかもしれない。もしくは、新たな挑戦の機会を見つけられるかもしれません。日本のあるクライアントで当社のソリューション「QlikView」を使用している企業の例を挙げてみましょう。
彼らは会議の場でデータを見ているそうです。例えば、RFM分析で割り出した「来店頻度は高くても購入額が少ない」層について購入額を軸に深掘りして、購入金額のキャズムを見出し、1500円程度の購入額の層には「1700円の商品を購入すれば5%オフ」、1700円程度の購入額層には「2000円の商品を購入すれば10%オフ」といったように、その場でキャンペーンの詳細な設定を決めています。誰を対象とするのか、いくらの割引をかけるのかといった議論は、経験に基づいて決めがちです。そこを、会議の場で、瞬時に明細データまでドリルダウンしたりして、データからの確証を得た上で決めることができるのです。
このような意思決定ができるか否かは、ビジネスの結果に大きな差をもたらすでしょう。そして、もう一点。企業がソリューションを使いたがらない理由は、結局のところ、ツール自体が使いにくい、もしくは分析をするまでが複雑すぎるからです。「クリックすれば、知りたい情報をすぐ得られる」ツールに出会えているか、考えて頂くようにしています。
――セキュリティ面に関しては、いかがですか?
シン氏:社員全員がデータ分析を行うとなると、セキュリティ問題がIT部門の頭を悩ませます。データの信頼性は保てるのか、社員が予想外のことをしないか、不安の種は尽きないでしょう。一方で、ビジネス部門の社員は使い勝手の良さと柔軟性を求めます。
このバランスをとるためには、どこから、どのようなデバイスでアクセスされても常に監視下に置ける、集中管理のシステムが必要です。モバイルでデータを見たい社員も多いでしょう。彼らのニーズに対応することが必要なのです。
また、同じ組織でも誰がどのデータを閲覧できるのかの権限設定もIT部門や各部門の管理者にとっては重要な課題です。当社の場合は、属性ベースのルールエンジンによって、その管理をしています。あらゆるリソースについて、誰にどのような権限を付与するのかを設定できます。セキュリティールールの一元管理による、環境づくりを実現しています。