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第106号(2024年10月号)
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転換期におけるデジタルマーケティング(AD)

オーディエンス軸で分析可能な新サービスが始動 ロックオンが掲げるプラットフォーム構想とは

 東証マザーズへの上場、「マーケティングプラットフォーム」へのブランド刷新と、近年ますます勢いを増している株式会社ロックオン。同社は2月29日、新サービス「オーディエンスエビス」を発表した。これまで提供してきた、マーケティングファネルの各段階での効果測定サービスを一気通貫させる形で、オーディエンス軸での施策評価を可能にするという。サードパーティーとの連携を含めて「プラットフォームとしての確立を目指す」と話す岩田進社長に、今後の戦略の詳細を聞いた。

「オーディエンスエビス」でカスタマージャーニーを可視化

MarkeZine編集部(以下、MZ):先日発表された「オーディエンスエビス」について、オーディエンス軸でカスタマージャーニーを明らかにした上で施策を評価する、というコンセプトはとても斬新だと感じました。

岩田:ありがとうございます。後ほど改めてアナウンスしますが、今まさにカスタマージャーニー機能については、モニター企業様を募集中なので、これからどんどん事例をつくっていくつもりです。

株式会社ロックオン 代表取締役社長 岩田 進氏
株式会社ロックオン 代表取締役社長 岩田 進氏

MZ:まずは、今回のサービスローンチの背景として、現在のデジタル広告市場をどうご覧になっているか、教えていただけますか?

岩田:昨年登壇させてもらった「MarkeZine Day」でもお話させていただきましたが、今、デジタル領域には3つの大きな地殻変動が起きています。

 ひとつ目は、デバイスの変化。今、生活者の主要なデバイスは、PCからスマートフォンへと明らかに移っています。2つ目は、メディアの変化。ペイドメディアの時代から、ソーシャルメディアとオウンドメディアが発達して、トリプルメディアの時代になっています。

 この2つの変化が掛け合わさったことで、ユーザー行動の起点が“PCでポータルサイト”から“スマホでソーシャル”になった。これが、企業のマーケティングに影響を及ぼしているんです。

 そして3つ目は、SEMの飽和です。ネット広告は1兆円市場といわれますが、基本的に大きく牽引してきたのはSEMです。しかし、もはや検索ユーザーも増えず、入札の競争も激化している今、SEMだけでは差別化できなくなっています。

アドエビスも一気通貫の概念へと進化すべき

岩田:ユーザー行動が変わり、顕在層を獲得するという既存のやり方だけでは勝てなくなった。そこで近年注目を集めているのが、コンテンツマーケティングやネイティブアドです。

MZ:顕在層ではなく潜在層を取り込もう、と。

岩田:ええ。ただ、この段階でターゲットにしている人たちは、なにせ潜在層ですから、ちょっと背中を押すだけでは買ってくれません。ですので、顧客を育成するというリードナーチャリングの発想が必要になります。それで、DMPやマーケティングオートメーションなどが発展してきた……というのが現状です。

「顕在層向けマーケティング」から「潜在層向けマーケティング」そして「育成型マーケティング」へと大きく変化
「顕在層向けマーケティング」から「潜在層向けマーケティング」
そして「育成型マーケティング」へと大きく変化

MZ:では、直近の企業の課題は何でしょうか?

岩田:ここで新たに生まれた課題が、2つあります。ひとつは、SEMにDSP、ネイティブアドなどの施策が増えることで、管理画面の数が膨大になってしまっていること。もうひとつは、個々のユーザーの状況を細かく把握する必要があることです。

 これらに対して、当社も国産ツールメーカーとして解決を提示すべく、アドエビスでの一括管理を実現し、また「コンテンツエビス」など新しい効果測定ソリューションを提供し、幅広いマーケティング課題を解決しています。

幅広いマーケティング課題を解決

 しかし、これまでのソリューション群は、あくまでマーケティングファネルを横に切った施策ごとの測定に留まっていました。それでは根本的な解決にならないという危機感から考案したのが、今回発表した「オーディエンスエビス」です。

アドエビス オーディエンスエビスの機能
アドエビス オーディエンスエビスの機能

カスタマージャーニーを可視化して“育成”を評価する

MZ:今おっしゃった危機感は、いつごろから感じられていたのですか?

岩田:1年ほど前からですね。マーケターがオーディエンス単位の評価と育成を考え始めて、カスタマージャーニーの概念が重視されつつあるのに、そこでアドエビスが“ファネル輪切り”のような測定ツールを提供しているままではいけないと。

 私たちはこれまで10年以上かけて、ユーザーとのコンタクトポイントのすべてを計測してきました。企業のニーズに応じて、それを部分最適化した形で提供していたので、結果的にソリューションが分断した状態でした。そこで、今までのツールを一気通貫し、カスタマージャーニーを可視化して「育成をフローで評価する」というコンセプトを立てたんです。

過去の施策評価:SEMを中心とした刈り取り型マーケティングが主流。指標はCPA評価で、ラストクリックのみ評価
過去の施策評価:SEMを中心とした刈り取り型マーケティングが主流。
指標はCPA評価で、ラストクリックのみ評価
これからのフロー評価:潜在顧客層向け施策も実施されアシスト広告の評価も行われるが、指標は刈り取り型と同様のCPA評価
これからのフロー評価:潜在顧客層向け施策も実施されアシスト広告の評価も行われるが、
指標は刈り取り型と同様のCPA評価

MZ:具体的に、どのように「育成を評価する」のでしょうか?

岩田:これまでは、コンテンツマーケティングなどを行っても、最後に接触した施策がコンバージョンしたかどうかのCPAでのみ評価していました。オーディエンスが潜在層から顕在層へと移行するフロー全体で、どの施策がどう効いていたのかは、捉えられていなかったのです。

 そこで、オーディエンスエビスでは、カスタマージャーニー分析の機能を確立しました。ほかのすべての施策が同じで、あるコンテンツだけ接触/非接触の違いがあるオーディエンスを比較すれば、そのコンテンツの効果が分かります。これによって、潜在層向けのマーケティングをフローで捉え、全体のROIを最適化できるのです。

楽天およびGMOと連携した「アドエビスリサーチ」

MZ:一気通貫のソリューションが必要だという危機感を持たれたことと、昨年春に「マーケティングプラットフォーム構想」を打ち出されたのとは、時期が重なりますね。プラットフォームという概念に込めたお考えをうかがえますか?

岩田:「オーディエンスエビス」を提供するだけなら、これまで通り当社は自社開発ツールのメーカーに留まります。でも、このソリューションの可能性を最大限に引き出すなら、それぞれ強みを持つサードパーティーベンダーと組むべきだと考えたのです。

MZ:たしかに、御社が各種の効果測定ツール提供を通して蓄積されているデータは、相当な量ですね。これを活用して、各ベンダーと組んでまた新たなサービスを展開していくということでしょうか?

岩田:ええ。コンタクトポイントの把握と計測は、アドエビスですべて行えますが、施策の実行や可視化の仕方に対する企業のニーズはさまざまなので、それらに応えるソリューションを我々だけで網羅的に提供するのは難しいです。

 先行して、今「アドエビスリサーチ」では楽天リサーチおよびGMOリサーチと連携したサービスを展開しています。アドエビスで取得した行動ログデータと、2社が有する調査対象者データを紐づけることで、たとえば離脱したユーザーに「なぜ離脱したのか?」というヒアリングをすることができます。

各ベンダーとの協業でプラットフォームの確立目指す

MZ:それは興味深いです。コンバージョンしたユーザーへの調査なら、これまでも可能だったかと思いますが、離脱したユーザーにアプローチできるんですね。

岩田:我々は、デモグラフィック情報を保有していませんが、精緻な定量評価を実現しています。一方で、楽天とGMOにはデモグラフィック情報があります。これらを補い合って、コンバージョンしなかった人を含めた分析が可能になるんです。

 さらに、Webでは買わなかったが店舗で買った、といったリアルな行動まで把握することもできるでしょう。すると広告の費用対効果の考えも変わってきます。

MZ:なるほど。こうした形で外部ベンダーとつなぎ込んで、プラットフォームとしてオーディエンス軸での分析や効果の向上を図るのですね。

岩田:ええ。効果測定ツールもさまざまな種類がありますが、コンバージョンのデータを蓄積するだけならデータ量もそれほどにはならず、投資も少なくてすむと思います。ですが当社では、コンバージョンだけに限らずWebのトラッキングデータをすべて蓄積しているので、カスタマージャーニーの把握ができ、他社ツールとの親和性も非常に高いのです。

 「アドエビスリサーチ」以外にも、すでに複数社との連携の話が進んでいます。実は、テレビのデータを扱うベンダーとの連携も、そのひとつなんです。

オンライン、オフラインをつないだデータ基盤構築を視野に

MZ:テレビですか? それはどういった構図なのでしょうか?

岩田:冒頭で、SEMやDSPなどの顕在層向けマーケティングから、コンテンツマーケティングなど潜在層向けのマーケティングへシフトしているという話をしました。ここで、いちばん潜在層に近い施策に位置づけられるのが、オールターゲットのテレビCMなんです。まず振り向いてもらう段階ですね。デジタルを活用することで、ここを起点にカスタマージャーニーを描くことも可能になっています。

2015年度決算説明資料より抜粋して掲載
2015年度決算説明資料より抜粋して掲載

MZ:プラットフォームという言葉にかなう、大きな可能性が広がっていますね。昨年11月の決算発表では、将来像として「マーケティングロボットカンパニー」を目指すという構想が印象的でした。

岩田:企業と顧客とのコミュニケーションを円滑化することが、当社が目指す世界観です。オンラインから始まった当社ですが、今後IoTやAIへ投資し、また各社との協業を進めることで、さらに巨大なオフライン領域もつないでデータ基盤を構築することを視野に入れています。なかなか端的に表すのが難しいですが、これを「マーケティングロボット事業」と位置づけて、中長期的に力を入れていきます。

2015年度決算説明資料より抜粋して掲載
2015年度決算説明資料より抜粋して掲載

MZ:今後の発展に、私たちも期待しています。最後に、この記事を読まれた方への特典として、「オーディエンスエビス」のモニター参加について教えていただけますか?

岩田:「オーディエンスエビス」における、オーディエンス1件1件を見られる顧客プロファイル機能は、アドエビスの活用企業には付帯機能として活用いただけるようにします。もうひとつの機能、先ほどお話ししたカスタマージャーニー分析は、モニター企業とともに事例をつくりたいと思っています。ぜひ、ご応募ください。

「カスタマージャーニー分析機能」の詳細・先行モニターのお申込み・お問い合わせはこちら

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/01/22 12:42 https://markezine.jp/article/detail/23914