月間1億4,000万PVを誇る女性向け情報サイト『モデルプレス』
MarkeZine編集部(以下、MZ):新興メディアながらトップレベルの人気を誇る『モデルプレス』では、膨大な記事コンテンツを活かして構築したDMPで、新しい広告商品をリリースされるそうですね。まずは、モデルプレスの運営社であるネットネイティブの松下さんにサイトの概要を伺いたいと思います。
松下:女性向けのライフスタイル&エンタメ情報サイト『モデルプレス』は、現在6年目のメディアです。当時、ニュースサイトは男性向けがほとんどだったので、感度の高い女性向けに、一次取材にこだわる報道機関としてメディア業界に新規参入しました。
はじめこそ、記者会見に入れてもらえなかったりもしましたが、ニュース以外にもインフルエンサーやファッションアイコンのライフスタイルを取り上げたり、テレビ局との協力関係を築いたりしながら、今では月間で1億4,000万PV、4,900万UBに成長しました。1日に約100本のオリジナル記事をアップしているので、それも拡大に寄与していると思います。
MZ: それは相当な規模ですね。モデルプレスから発信された記事は、SNSを中心に各所で目にします。たとえば2015年12月31日付けでアップされた「2016年ヒット予測」の記事も、かなり拡散していました(参考情報)。
松下:ええ、こちらはすぐに複数のテレビ局から問い合わせがあり、番組での紹介につながりました。実は、この記事は編集部員の目利きをベースにしながら、データアーティストさんの協力でデータ解析も大幅に取り入れているんです。
ハイスペックな基盤で高速分析を実現
MZ:そうなんですね。今回、データ分析にはデータアーティストさん、データ基盤にはIDCフロンティアさんという布陣でDMP構築を進められていますが、その経緯をうかがえますか?
松下:ヒット予測の記事もそうですが、データアーティストの山本さんとは以前から、我々の持つ膨大なデータを活用した新商品やサービスの開発を相談していました。DMPを通して精緻にユーザーの興味関心を分析し、次に読みたいだろう記事をプッシュして回遊を促すのと同様に、広告商品としても効果の高いデータ連携ができるだろうと考えていたんです。
山本:今回、私たちの役割はデータ分析ですが、先ほど松下さんが紹介されたように、モデルプレスのトラフィックはとにかく膨大で、とても自前で扱えるデータ量ではなかったんです。そこで、以前から付き合いのあるIDCフロンティアさんの非常にハイスペックな基盤を導入しました。これがあって、初めて現実的な時間で分析することが可能になりました。1週間かかるところが数時間、だいたい100分の1くらいです。
MZ:データ基盤を提供されたIDCフロンティアさんは、Yahoo! JAPANグループのITインフラプロバイダーとして事業を展開されていますね。
赤星:はい。複数のサービスがありますが、今回使っているのはYahoo! ビッグデータインサイトというデータウェアハウスサービスです。当社の基盤は、その上にどんなデータやアプリケーションが乗っても、利用企業がスピーディかつ自由に使える高いスペックが強みです。今回は、その点をよく活かしていただいていると思いますね。
DMPを“DIY”するイメージで簡易構築を可能に
MZ:DMPの構築にはそれなりの時間が必要だと思いますが、どのくらいかかりましたか?
赤星:案件のお話を聞いたのが昨年11月ごろ、具体的に着手したのは12月ですね。それで、現段階(※2月中旬時点)ですでに十分稼動している状況です。
山本:ゼロからの構築は、もっとかかると思います。今回は、当社で元々運用していたさまざまな分析アプリケーションや、外部データとの連携システムをどんどん組み込んでいったので、非常に早くできました。これだけスピーディーに導入が進んだのは、簡易構築が可能なYahoo! ビッグデータインサイトを選択したからだと感じます。近々予定しているメディア企業向けのDMPも、DMPを“DIY”するくらいのイメージで簡単に構築して、速やかにマネタイズできるようにするつもりです。
純広告とアドネットワークの間の商材となりうる
MZ:なるほど。先ほど、精緻な分析でユーザーが次に読みたい記事をプッシュする、というお話がありました。具体的な例を教えていただけますか?
松下:たとえば、昨年夏に放送されたテレビ番組とコンテンツ提携し、モデルプレスで随時さまざまな情報をアップしました。ユーザーデータや閲覧データを分析しながら、テレビ放送と連動して継続的に記事アップし、SNS上での話題の拡散を最大化して視聴率向上につなげました。
山本:補足すると、たとえば「ダイエット」を検索して流入したユーザーも、深掘りするとその背景は結婚が近いからだったりします。すると、別途「結婚式場」などを検索し始めるとそちらに関心が移ってしまって、もうダイエット文脈には戻ってきません。
モデルプレスのコンテンツ量があれば、そのときにどんどんダイエット文脈の記事をプッシュして、その関心の芽を逃さずに育てていくことができます。
MZ:それが、メディアにおけるユーザーナーチャリングだということですね。
松下:そうですね。広告主が活用する場合は、広告主のデータも連携してDSPでダイエット系の広告を入れていけば、高い効果を見込めます。それが、広告主に新しい広告商品として提供する「modelpress DMP」なんです。ターゲティングとしても価格の面でも、純広告とアドネットワークのちょうど間くらいの商品展開ですね。
MZ:今のお話だと、ユーザー分析と求める情報とのマッチングを、かなり深い精度で行うことができるんですね。だからコンテンツの回遊も、広告効果も見込める。
山本:はい。元々相当のコンテンツ量がないと、ユーザーの関心に合わせて細かく記事を突き合わせられないので、これはモデルプレスのボリュームありきで構築しつつあるロジックです。女性向けの消費材やサービスを、ユーザーに深く刺さるレベルで無駄なく訴求できます。ここで確立したロジックは、メディア企業向けにリリースするDMPにも活かしていきます。
重要なのは“1PV”の質、消費意欲の高いユーザーを集める
MZ:先ほど外部データとの連携の話が挙がりましたが、広告主はモデルプレス内での広告配信以外に、今回のDMPを用いて外部へのアドネットワーク配信もできるのでしょうか?
山本:できます。我々の方でID連携している顧客データサービスや、元々強みとするテレビ番組データの影響の分析などを通して、人が何らかの関心を持つところから購買などのコンバージョンまでを、データ連携で効果的にフォローすることが可能です。モデルプレスはニュース性の高いメディアなので、テレビとの親和性が非常に高いです
モデルプレスの有するデータは、ボリュームだけでなくユーザーの質の高さも非常に特徴的です。情報感度が高い人が集結しているので、単にクリックを稼ぐに留まらず、行動を促しやすいですね。
MZ:なるほど。いくらデータ量があっても、成果が出るには1ユーザー、1PVの質がとても大事ですね。
松下:その点には、最もこだわっています。いってみれば、どんな記事でも1PVは取れます。でも、閲覧したユーザーがどのくらい質が高いかが、そのままデータの質につながります。情報感度が高く、消費に意欲的なユーザーを獲得するために、かなり作りこんだ記事の制作も行っています。
最新事例に学ぶDMP活用事例セミナーも近日開催!
MZ:今後リリース予定のメディア企業向けのDMPも、モデルプレス並のデータ量があるメディア向けなのでしょうか?
山本:もちろん、ある程度のトラフィックは必要ですが、「modelpress DMP」を確立する中で得られる多くの知見を盛り込んで、なるべく多くのメディア企業に活かしていただけるようにします。そのためにも、まずは「modelpress DMP」でさまざまな実証実験を重ねて、最高レベルまで性能を高めていきたいですね。試行錯誤の結果得られた知見は、4月21日のセミナーでたっぷりお話しする予定です!
MZ:赤星さんと松下さんからも、今後の展望をうかがえますか?
赤星:アドテクは変化のスピードが速いですし、メディア側もやりたいことがどんどん変わってきていると思います。当社は裏側を支えるインフラ提供社として、利用企業のニーズをしっかり反映できる基盤を今後も提供していきたいですね。データアーティストさんとは、基盤上のアプリケーション間の横連携を広げるような取り組みができればと思います。
松下:広告主の多様な課題を解決するために、今は純広告からアドネットワークまで試してノウハウを貯めているところです。今回のDMPも企業からの期待が高いので、しっかり成果をお返ししたいです。
昨年、ひかりTV(NTTぷらら)にて「モデルプレス TV by ひかりTV4K」という365日24時間の専門チャンネルを開局しました。デジタルサイネージなどでの動画コンテンツ配信も強化しています。こうした多面展開をしつつ、メディアとしてさらにデータの質と量を成長させていきます。
MZ:今後の展開が楽しみです。広告主側の視点のみならず、規模は違えど同じメディア運営側としても大変興味深いお話でした。今回の「DMPの最新活用」について伺えるセミナーが開催されるんですよね。松下さんと山本さんの対談やDMPの最新情報が語られる内容とのこと。非常に楽しみです。読者のみなさんも、この機会にぜひご参加してみてはいかがでしょうか。