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イベントレポート

なぜアプリ?成果は出る?どう説得する? “アプリ活用の疑問”にパルコ・東急ハンズ・良品計画が答えた

ネットとリアルをごちゃ混ぜにする「東急ハンズアプリ」

 「良品計画と方向性は似ている」と語るのは東急ハンズの緒方氏だ。同氏は新規デジタル施策開発をはじめ、オムニチャネルの推進には不可分ともいえる、ネットストア・データ・物流の領域を担当。ネットストアの運営や、会員組織の運営のデータ周りを統括。兼務でソーシャル周りの施策を行っている。

株式会社東急ハンズ オムニチャネル推進部 オムニチャネルコマース課 緒方恵氏※緒方氏はインフルエンザのためWEBでの参加でした。
株式会社東急ハンズ オムニチャネル推進部 オムニチャネルコマース課 緒方恵氏
※緒方氏はインフルエンザのためWEBでの参加でした。

 東急ハンズの特長は商品群の広さと、スタッフの深く豊富な知識に基づくコンサルティングセールス。適切なヒアリングでユーザーが本当に必要なものを提供することを目指している。そのため、実店舗を主とした事業展開がとられている。

 そんな同社がオンラインからオフラインへの誘客を意識したのは2009年のTwitterアカウント開設がきっかけだという。Twitter商品を紹介したところ、CVや来店率の向上がみられた。さらに、Twitter上で実店舗の在庫が確認できるツール「コレカモnet」を提供したところ、多くの反響を得ることができた。

 「オンラインでの情報開示は利便性が向上するため、実店舗への来店頻度が高まる。そんな兆しを早期に感知できました。当時はSNSも比較的新しいものだったので、社内では新しい波が来たのではという温度感でした」(緒方氏)

 さらに、ネットショップに店舗の在庫確認機能をつけて、横のつながりを形成した。これによって、例えばTwitterで商品紹介をしつつネットストアのリンクをつけると、サイト内で購入する以外に、近くの店舗に足を運ぶ動線を徐々に形成することができた。

 だが、ここまでは、オンラインからオフラインへの片道の動線だ。オフラインに誘客後、オンラインに戻す循環サイクルではなかった。そこで2014年11月に登場したのが「東急ハンズアプリ」だ。

 「リアル店舗でアプリを使ってもらい、その後、ネットストアかソーシャルに戻ってきてもらう。アプリによって、オンとオフの循環の仕組みが完成しました。これからは攻めのフェーズです」(緒方氏)

 スマホアプリの目的は「ネットとリアルのごちゃ混ぜ化」と緒方氏。店舗での買い物をより便利で楽しくする、店舗でとにかく使ってもらうアプリを目指したという。

 アプリが持っている機能は、会員カードのデジタル化とチェックイン、商品スキャンだ。プラスチックのカードをデジタル化することで、カード忘れが減少するとともにポイント付与率も向上し、一回当たりの購買金額が上昇したという。

 アプリの柱となる機能は商品スキャン。これは、店舗で商品のJANコードをスキャンすると欲しい物リストとしてメモにストックできるというもの。店舗で買わなくても、後からアプリ経由でワンタップで商品を購入できる。

 「ネットストアでは、お気に入りからの購買の確率が非常に高いです。便利ですから。しかし、実店舗での買い物ではお気に入りができません。そこで、この機能を付け足した。オフラインからオンラインに戻すという意味でも重要な機能」(緒方氏)

 今後は一人一人に合わせたクーポン提供や、アプリ内での領収書や保証書の発行など、利便性が向上する機能を追加していきたい、と意欲を見せる。また、より顧客との繋がりを強く持ち、愛される企業になるためのひとつのアプローチとして、コミュニティもキーワードとして考えていると緒方氏。リアルの企画とWEBの企画、双方を活かしてコミュニティを刷新したいという。

アプリの活用、すべてが思い通りとはいかない

 アプリを使った施策を考えたときに突破する必要があるのは「何故アプリか、効果はあるのか?」という疑問を抱く経営層の説得だろう。3社はアプリに何が期待できると考えたのだろうか。

 売上アップとコスト削減を説得のポイントにしたと緒方氏。コストカットの面ではチラシ・DM・カードのコスト削減を、売上では、ポイント付与率の向上や、アプリプッシュのリーチ率から狙える売上の予測を立てたという。

 「今までよりこれだけの人に届く、これだけ読まれる、これだけの人が来客する、これだけの売上があがる、というような図式を作りました」(緒方氏)

 林氏も同様だという。アプリに登録したクレジットカードを実店舗で使ってもらう際、1人当たりの単価が向上する点をアピールした。また、良品計画では送客数を材料にしたという。

 だが、稟議が下りて施策を始めたとしても期待を裏切られることもある。良品計画の場合、“客数は増えたものの……”という事態も経験した。

 例えば先ほど触れた初期のアプリDL施策。500ポイントを約40万人に配布し、約18万人が利用したという。一見、店舗への送客が成功したようだが、結果として客単価は下がってしまった。実は店舗でほぼポイントだけで商品を購入するユーザーが増えたのだ。

 また、分かりやすいところではDL数の未達もあげられる。「POCKET PARCO」も「東急ハンズアプリ」も目標には達成しなかったという。主に見ている数値はMAUではあるものの、未達は課題だと緒方氏。

 DLがされない理由として、ユーザーへのフォーカスがぼけていたことが考えられると緒方氏は分析する。「店舗で使える便利なアプリを考えましたが、お客様にとってアプリが便利であることと買い物は直結しません。だからといって、購買意欲の後押しとしてはもちろん意義高いものなのですが、アプリを入れたら10%オフ、といった単純なインセンティブの提供だけに終始するというのも全然違うと思います。ごちゃ混ぜ化というキーワードを考え直すと、アプリもまた売り場であり、店舗での商品陳列・接客と同様に最適な提案(情報提供)をすることでアプリをより店舗に近しい物にする必要は感じています。他にも、アプリを利用し始めるまでの登録のハードルを下げるなど、色々ありますが、そのあたりのフォーカスを見直しつつアピール・販促をしていきたい」(緒方氏)

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社内の向かい風にはいかに立ち向かう?

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伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/10 10:00 https://markezine.jp/article/detail/24003

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