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入社後のミスマッチを減らしCV数も向上!職場を下見できるリクルート『フロム・エー ナビ』の雰囲気動画

 職場のリアルな雰囲気を応募前に確認できる、アルバイト・パート求人情報サイト『フロム・エー ナビ』の「雰囲気動画」に注目が集まっている。サイトのメインユーザーであり、動画ネイティブといわれる若年層向けに仕組みを構築し、求人サイトが長く抱えてきた「求職者にとって、職場が本当に自分に合うかどうかわからない」といった問題も解決に導いている。その実態をリクルートジョブズ プロダクトプロデュース室 メディア戦略部 メディア戦略グループ マネージャーの染谷崇裕氏、プロダクト開発室 カスタマウェブ開発部 カスタマウェブ開発2グループ マネージャーの鹿島拓也氏に取材した。

若年層向けWeb求人メディアへとシフトした『フロム・エー ナビ』

 『フロム・エー ナビ』は、主にアルバイトやパートの求職者に対して情報提供しているWebサイトだ。もともとは『フロム・エー』という紙メディアとして、コンビニ等で販売されていたが、2009年3月に休刊。『フロム・エー ナビ』は2002年にリリース後、紙メディアからのシフトを進め、現在ではWebサイトとスマートフォンアプリで展開している。ユーザー層は10代から20代の学生やフリーターがメインだ。上記のユーザー層をターゲットとしていることもあり、PCよりもスマートフォンからの閲覧が高い割合を占めている。

アルバイト・パート求人情報サイト『フロム・エー ナビ』

 提供元であるリクルートジョブズの鹿島氏は、『フロム・エー ナビ』のWebサイトおよびアプリの開発グループを統括。染谷氏は、『フロム・エー ナビ』を含めた各メディアの戦略構築を担当するグループを統括している。

 まず、『フロム・エー ナビ』のデジタルマーケティング戦略について尋ねた。すると、最新のテクノロジーを導入するだけではなく、オンライン・オフライン問わず過去に成果が出た施策とテクノロジーを掛け合わせて、よりよい成果につなげることを重視しているという。そして、今まで提供できていなかった情報を提供することをゴールとしている。

旧来の手法で伝わらない「雰囲気」、課題解決策は動画にあり

リクルートジョブズ プロダクトプロデュース室 メディア戦略部 メディア戦略グループ マネージャー 染谷崇裕氏
プロダクト開発室 カスタマウェブ開発部 カスタマウェブ開発2グループ マネージャー 鹿島拓也氏

 今回紹介する「雰囲気動画」の雰囲気とは、実際に働くバイト先の職場の雰囲気のこと。求職者がバイトを選ぶ際に重視するポイントだが、情報量が多く、テキストや画像で構成された求人原稿のみではユーザーに伝えにくい情報だった。しかし、動画という情報伝達手段を使えば、雰囲気も伝えられるのではないかと考えたのが発端だという。

 「テクノロジーはただの手段でしかありません。動画が新しいからやってみようと始めたわけではなく、求職者の方と求人企業を精度高くマッチングするには動画がベストな手法だと考えました」(染谷氏)

 また、サービス構築の背景には、「従来の求人原稿では、職場の本当の雰囲気がわからないという、求職者から寄せられる声がありました」と染谷氏は語る。

 「ユーザーに、求人原稿に関する調査を行ったところ、本当に自分に合うかどうかわからないという声を多くいただきました。これは、最近の傾向というのではなく、私たちが学生時代にアルバイトをしていた頃から多く挙がっており、解決が必要だった課題だと思うのです。

 応募前に正確なイメージを抱けない結果、面接に行ったり、実際に働いたりした際に、イメージとのギャップが発生してしまう。そのまま退職に繋がるケースもあります。それを避けるために、アルバイト先にわざわざ下見に行く場合もあるようです」(染谷氏)

 そこで課題解決のためにリクルートジョブズが導入したのが動画だ。動画はYouTubeやソーシャルメディアの浸透をきっかけに、若年層に受け入れられていると考え、同社はテストマーケティングを始めた。

重要なのは要件定義と高品質

 サービスを作るにあたり、同社では3つ意識した点があるという。1つ目は「雰囲気とは何か」という点。しかし、雰囲気というものがあまりに漠然としているため、同社ではユーザーに調査した上、以下の3点が必要だと定義した。

  1. 店舗の内観……席の配置や席数が把握できれば、自分が働く動線や忙しさの度合いをイメージしやすくなるため。
  2. 一緒に働くスタッフ……働く上では、やはり人間関係も気になるため。
  3. 営業風景……若年層のユーザーは就労経験が浅いことから、仕事のイメージがわきにくい。働いている姿を見れば“これならできそう”や“楽しそう”などと想像しやすくなるため。

 上記の定義のもと、2つ目に意識したことは「高品質を保つ制作組織の編成」だという。

 「動画を制作する施策を当社のようなメディアで行う場合、動画再生のプラットフォームのみを提供し、動画制作はお客様や営業担当者にお任せする方法もあります。しかし、この方法ではお客様に負担もかかりますし、クオリティの高い動画を制作することも難しいという課題がありました。

 そこで当社では、撮影チームを派遣し、編集は別でチームを編成して行うサービス設計にしました。そうすることで、制作後のクオリティチェック、改善を行えるようにしています」(染谷氏)

 そして3つ目に関して、鹿島氏は「フォーマットを用意し、制約を設けることを意識した」と語る。

 「30秒の短時間で字幕付きというフォーマットに統一しています。この尺は学生が通学途中にアルバイトを探すシーンを想定して、電車の一駅間でも動画を見ることができる長さを意識しました。

 またコンテンツの内容に関しても、動画を見て利用者が比較検討しやすいように、訴求内容別に4種類のフォーマットを用意しました。その中から、出稿するお客様に選んでもらっています。制作するコンテンツも、作り込みすぎると、求職者の方は職場のリアルな雰囲気を感じられないため、多少雑音を残しておくなど、自然な形に仕上げています」(鹿島氏)

クラウドソーシングの活用により、制作体制を確保

 ここまでで、雰囲気動画におけるサービス設計については理解できた。しかし、動画制作・編集チームを編成するのは容易なことではないはず。両氏に尋ねたところ、クラウドソーシングの活用がそれを可能にしているという。

 「クラウドワークス様と提携して、スタッフをアサインしています。クラウドワーカーのクオリティ担保のために、事前の撮影指示書を常に用意し、あらかじめ勉強会を行うなどしています。また、撮影現場に私たちは同席しないこともあり、求人企業や求職者の方が気にされるポイントをご理解いただけるような支援を心がけています」(染谷氏)

 ちなみに、撮影と編集を経て質の高い動画が完成しても、ユーザーに視聴を促すサイトやアプリの設計、またその機能に関するプロモーションが必要になる。それに対して、鹿島氏はこう語る。

 「まず、動画の認知を広めることを目的に、動画が載っている求人ページをピックアップした特集を行う、一般的な一覧でも動画情報はわかりやすく表示するなど、動画で求人に関する情報が得られるという訴求を行いました。

 ここでポイントになるのは、あくまでユーザーが見たいと思うタイミングで提供することです。具体的には、従来の求人情報を見た後に動画を見るという、ユーザーの自然な行動を考えて配置しました」(鹿島氏)

応募数アップだけでなく、入社後のミスマッチ解消へも貢献

 では、サービスをスタートしてからこれまで、どういった成果が出ているのだろうか。

 「雰囲気が伝わったかどうかのデータを取るのは大変難しいですが、応募自体には明らかな変化がありました。例えば、これまで、採用に苦戦していたアパレルブランドの店舗にて、雰囲気動画を導入した結果、応募が今までの数倍になりました。さらに、採用にもつながるなど、実績が出たのは大きな進歩ですね」(染谷氏)

 アパレル業界は、ブランドイメージや店舗の雰囲気などによって、求職者のイメージに合う・合わないがはっきりと分かれる業界のひとつ。そのため、事前にそれらを確認できる動画施策との相性はとても良いのだという。

 「視聴状況に関しては、動画のある求人原稿に来たユーザーのうちの一定数は見ている状況です。ただ、この数字はこれからも伸ばしていけるはずです。また、動画を見た人の応募率はそうでない人に比べ、倍以上も高くなっています。これらの結果からも、動画が応募の意思決定にかなり役立っていることがわかります」(鹿島氏)

 こういった結果から、今の若年層が非言語的なビジュアルコミュニケーションを重視していることもわかる。

 「私どもも、この動画を提供するにあたり、百人以上の学生に会ってヒアリングを行ってきました。そしてYouTubeやインスタグラムなど、テキストよりも動画や写真から情報を受け取ることが当たり前になっていることがわかりました。動画は一つの手段でしかありませんが、今後も注力するメリットは大いにあると思います」(染谷氏)

改善の先にあるのは、ミスマッチの起きない求人メディア

 今後、『フロム・エー ナビ』をどう発展させていきたいか、両者に展望を伺った。

 「究極的には、ユーザーが“職場の雰囲気”を体感できるくらいのメディアを目指したいです。そのための第一歩がこの雰囲気動画の取り組みだと思っています。その結果として、求職者と求人企業のミスマッチが起きない様なメディアに近づけていきたいと考えています。」(染谷氏)

 「ユーザーが動画に違和感のない若年層であるため、開発側としては動画の自動再生も視野に入れたいと思っています。また、動画が増えていくとそれは資産と捉えることもできます。例えば、ページの訪問者に動画を見ていただくだけではなく、プッシュ通知やメールなどで届けていく努力も行いたいと考えています。動画掲載ページの認知度が広がることで、雰囲気がわかるメディアということをユーザーにより訴求できるので。そして、動画含め応募者が増えるトリガーを増やしていけるよう、日々開発、サービス改善に取り組んでいきたいと思っています」(鹿島氏)

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/03/31 12:00 https://markezine.jp/article/detail/24080