精確性を高めマーケティングに貢献する
先に紹介したワインの数式のように、線で表すことができるのが統計モデルだ。統計学の入門知識として知られる回帰分析などが当てはまり、符号など計算式で表されるので、すぐに意味が理解できる。つまり、分かりやすいというメリットがある。しかし、精確さに欠ける場合があり、超精確なモデルを作ることは難しい。
それに対し、機械学習は統計モデルに精確さで勝るため、マーケティングの実業務での活用に向いているという。そして、その中で重要になるのは「データを集めて、問いかけること」だと津田氏は語る。
「先述のワインの例でいえば『ワインの価格を予測したい』という問いを立て、関連データを集めてAIや機械学習で解かせるという作業が必要なのです。問いという言葉を聞くと難しく感じるかもしれませんが、ビジネス上の問いを立てているのと変わらないため、そこまで難しくありません。実際の式を組み立てるのは機械が自動で行ってくれるからです」(津田氏)
機械と人の役割をはっきりさせる「ディシジョン・ツリー」
次に、津田氏はマーケティング分野における機械学習の3つの主な活用法を紹介した。それは、「レコメンド」「テキスト解析」「画像解析」だ。
まず「レコメンド」だが、ここでは、SASの機械学習エンジンでも使われるディシジョン・ツリーと呼ばれる手法を例に紹介する。
「誰がどんな時に買ってくれるのか?」という問いを立て、年齢・性別・職業、購買実績や過去のマーケティング反応などのデータを掛け合わせると、機械が自動的に解析をして、“どんな条件が揃うと買ってくれるのか”、“何をすれば買ってくれやすくなるのか”といった結果を導き出してくれる。
「ディシジョン・ツリーは、人間と機械がそれぞれ何をすべき役割か明確にするために行っています。人間はデータを準備して問いを立てることが役割であり、機械は顧客が買ってくれる条件やある個人が将来買ってくれる確率、買ってもらうために効率の良い施策を示す役割を担っています。つまりデータの分析から施策の提案までは機械が行ってくれるため、人間はデータを用意した上で問いを明確にし、機械が導き出した分析結果に基づいて最適な意思決定をすることに注力すれば良いのです」(津田氏)