世界有数の企業・VCが投資する「WRAP」の可能性とは
あらゆるWebサービスで「モバイルファースト」は当然のものとなった。しかしモバイルユーザーの一回当たりの平均モバイル利用時間は十数秒というデータも示す通り、モバイルユーザーは“忙しい“。その中で十分な情報を伝達し、消費者とのエンゲージメントを深めることは至難の業だ。
そこで注目されているのが、あらゆるモバイルコミュニケーションに最適なUI実装を可能にする「WRAP」だ。開発元のWrap Media, LLCは世界有数の企業・VCなどからこれまで$27.7millionの資金調達に成功しており、満を持して日本でも展開を開始した。
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その戦略的パートナーとして、スタートアップ投資も行う日系戦略コンサルティングファームであるドリームインキュベータが参画し、$4millionの追加投資を行っている。今回、その背景と日本市場における期待について、Wrapのエージェンシーとしての参画を決定している電通ダイレクトフォースの小川貴史氏が、ドリームインキュベータ マネジャーの中澤剛太氏、同社ビジネスプロデューサーの中野裕士氏に尋ねた。
競合はApple、目指すはモバイルUIのスタンダード
小川:ドリームインキュベータがWrap Media, LLCへの追加投資および戦略的パートナーシップの締結を行ったというニュースは国内外でも注目を集めました。様々なスタートアップに投資している御社が期待を寄せるのは、どのような理由からなのでしょうか。
中澤:ドリームインキュベータは、将来の人々の生活を大きく変える業界や事業に対して投資を行い社会の変革・進化を促進することを役割と認識しています。そんな我々にとって「モバイルコミュニケーション」は大いに期待すべき領域です。あらゆるコミュニケーションがモバイルにシフトしつつある中で、その難易度の高さに多くのプレイヤーが苦しんでいる。そこをブレイクスルーするところに大きな価値が生まれると考えています。
ブレイクスルーの1つ目のカギとなるのが「パーソナライゼーション」です。モバイルユーザーには、ユーザーの特性や場所、時間などに応じて、「自分事」を届ける必要がある。「非自分事」だとユーザーは瞬間的にコンテンツを離れる。5年後、ほぼすべてのコミュニケーションがパーソナライズ化されるでしょう。その潮流の一つがカンバセ―ショナルコマース等のチャットコミュニケーションであり、世界中の投資資金がチャットボットに流れているのもそれ故です。
そしてもう1つは「ユーザーインタフェイス(UI)」です。PCでは数分の「余裕」を見せるユーザーが、モバイルになると数十秒しかくれない。「見やすく、わかりやすいこと」がより重要になったことは自明です。個人的には可能性は低いと思いますが、仮にスマートウォッチがモバイルに変わる時代が来たとしたら、消費者がくれる猶予は数秒程度になるでしょう。
Wrapはモバイル最適なUIを簡単に実装できるCMSであるとともに、WRAP APIを提供することで、大量生成されるパーソナライズ化されたコンテンツに、最適なUIを自動的に提供する。パーソナライゼーションとUIの両方を満たすものとしてWRAPにブレイクスルーの可能性を見ているのです。
小川:実際に多くの企業様とコミュニケーションしているエージェンシーの立場としても、その2つの課題については実感があります。しかし、実装するとなれば複雑なシステムが必要になり、コストや管理負荷を鑑みると気軽に手が出せるものではありませんでした。
中野:最適なUIを「誰もが簡単に使える」という点がWRAPの強みです。WRAPのAPIを利用すれば、CRM等と連携してパーソナライズ化されたコンテンツを、最高のUIで自動的にユーザーに送ることができます。小川さんが指摘する通り、最適なUIの構築、パーソナライズ化への対応は、大きなコストや技術的難しさを伴います。現状、そこに注力できているのは、多くの資金的余裕と技術者を持つ一握りの大企業に限られます。それを、APIを通じて皆が実装できるようにするものがWRAPなのです。
通常、モバイル対応のサイトでは縦スクロールが基本です。しかし、WRAPであればスクロール、スワイプなどが可能で、コンテンツをアプリ感覚で閲覧できるというわけです。当然、1つ作成すればデバイスやブラウザ対応も自動的に行われます。これらをコーディング不要で容易に制作できるのがWRAPですが、UIだけではありません。決裁システムやチャット機能、動画・音楽、スケジュール同期等の様々な機能がドラッグ&ドロップだけで実装可能になります。コンテンツ製作コストや期間は従来から大幅に削減され、アプリ制作と比較しても数分の一以下となると思います。
WRAP自体はHTMLでできたウェブページなので、広告プラットフォームでの配信や、アプリ内コンテンツとしても利用可能です。ボットの情報提供UIとしても面白い使い方ができるでしょう。
小川:ユニークな使い方が想像できて、ワクワクしますね。そもそもWrap Media, LLCというのはどのような会社なのでしょうか。
中澤:Wrap Media, LLC は2013年にサンフランシスコで設立された会社です。数学者や天文学者、中にはNASAから転職してきたエンジニアなど、いわゆる“異能集団”。それら「異能」を、シリアルアントレプレナー(過去に1000億円規模の企業を2度IPOした経験を持つ起業家)であるCEOが牽引する稀有なスタートアップです。それら世界の頭脳が集まって、モバイルに特化した最適なUIを2年以上追求し続け、多数の特許で技術を固め、ようやくサービス化したものが「WRAP」なのです。
実はCEOのエリック・グリンバーグ氏に会った時に「競合は誰だ」と聞いたところ、Appleだというんですね。現在モバイルのインタフェイスの主流となるアプリを押さえているのはAppleです。しかし今は、皆がAppleのルールに縛られた、ある種「非民主的」世界です。彼は「プラットフォーマーに縛られた世界ではなく、オープンなWebの世界にイノベーションを起こすことで、モバイル世界を『民主化』したい」と語ってくれたんです。
そのビジョンとテクノロジー、そしてCEOの人間性に共鳴し、投資および戦略的パートナーシップ締結へと至ったわけです。
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リリース3か月で「BMW」「Yahoo!」「Nasdaq」等が導入
小川:ネット関連では米国のトレンドが日本に数年遅れでやってくるのが定説になっています。その意味で、先行事例は大変興味深いです。いくつかご紹介いただけないでしょうか。
中野:WRAP自体が2015年秋のリリースなので、まだ多くはないのですが、それでもリリースから3か月後には導入企業が2桁に上り、それも「BMW」や「Yahoo!」、「Nasdaq」といった、名だたる企業が活用を開始しています。
それらの企業はもともとモバイルコミュニケーションに意欲的で、それゆえ課題を感じていたところばかりです。だからこそ、WRAPのUIにすぐに価値を認めて導入決定につながったと聞いています。
たとえば、BMWはいち早く「BMW i3 試乗キャンペーン」に活用し、クリック率も平均滞在時間も従来のモバイルウェブと比べて飛躍的に向上しました。ただのキャンペーンコンテンツですが、平均して1分半以上も滞在しています。私自身も閲覧したのですが、小さなモバイル画面ながら迫力ある動画が印象的で、まるでアプリのような快適さで大変興味をひかれました。
小川:BMWのようなプロモーション事例は華やかで目立ちますね。そして効果もすぐに把握しやすい。他にはどのような事例があるのでしょうか?
中澤:モバイル時代にもう一つ重要なものが「シェア」です。SNSを通じた拡散は当然ながら無視できない威力を持つようになりました。しかしながら、プロモーションコンテンツの多くは全くシェアされない。米国では、カード形式で表示するWRAPの特性を利用して、「シェアされるキャンペーンコンテンツ」がいくつも作られています。ヴィクトリアシークレットも、あたかも写真集のようなコンテンツで多くのシェアを獲得しています。当然売上げにも直結するでしょう。
プロモーションにとどまらないWRAPの活用
中澤:WRAPの真価はプロモーションだけではありません。申し上げた通り、WRAPはAPIの提供を通じてあらゆるモバイルコミュニケーションを最適化します。その余地は思っている以上に大きい。例えば、米国の大手通信会社はカスタマーサポートセンターにWRAPを活用しています。
それまで電話で顧客の要望を聞き、その後書面送付といったいわゆる従来型のカスタマーサポートを行っていましたが、CRMと連携する形でのWRAP活用を開始しました。顧客情報や問い合わせ内容をオペレーターが入力すると同時に、各顧客の関心に沿ったWRAPコンテンツを自動的にSMSで送信できるようにしたのです。つまり、ユーザーは電話で問い合わせた内容を即座にWRAPで確認し、その先の登録などをスムーズに行えるわけです。その結果、2桁パーセント以上の売上向上につながりました。今では、その大手通信会社は、どんどんWRAP活用の範囲を広げ、一番の大顧客となっています。
また、WRAPでECの電子レシートを配布するサービスを開始した企業もあります。それまでは購入した商品情報を購入者にメールで通知するだけで、誰も読んでくれなかった。それをWRAP化することでUIを最適化しつつ、ギフトカードや関連商品のコンテンツ提供、さらにはカスタマーサポートチャットなどをまとめて(=Wrapして)消費者に届けることで、アップセルやクロスセルにつなげています。
さらに現在IoTへの取り組みの中でWRAP活用を検討している企業もいます。センサーで察知した機械の故障等に応じて、ユーザーにWRAPで通知、対処法を提供するという形です。これなら分厚い取扱説明書も不要ですし、サポートセンターのコストも削減することができるでしょう。IoTは、「モノ」と結ばれるというよりも、「モノを使う消費者」と結ばれているということ、そして、その傍らには常にモバイルがある。IoTを通じた適切な消費者コミュニケーションにWRAPは非常に相性がいいのです。
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対象者:事業会社(広告主)の経営者及びマーケティング、デジタルマーケティング責任者やご担当者
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日本でもNTTドコモが活用を開始
小川:私は時系列データ解析によるマーケティングミックスモデリングを行ってきましたが、主にリードジェネレーション、パーチャスファネルの入り口付近で効果のあるTVCMやソーシャルメディアや動画広告などの予算最適化による効果アップは10~20%程度になるケースが多いです。
対して、WRAPは個別のカスタマージャーニーを踏まえてクリエイティブを用意して、MAツール等も活用してPDCAすることで、リードジェネレーションの最適化を行い、パーチャスファネルの中盤から出口付近での効果を上げることで、売上などを20~30%程度は積み上げられるのではないかと考えています。そして、そのノウハウをエージェンシーとしていち早くサポートしていきたいです。
中野:「積み上げ」は、とても重要なポイントだと思います。たとえば、コストと時間をかけてアプリを作成し、広告費をかけてブーストさせても、その後継続して使ってもらえる確率は本当にわずかです。
しかし、あるフィットネスアプリが、WRAPを活用して丁寧に使い方や効能を紹介したプロモーションを行ったところ、WRAPを経由しないユーザーに比べ、アプリの継続率が2倍に向上したそうです。まさにユーザーに理解を促し、エンゲージメントを高めれば、ロイヤルティが上がるということを象徴している事例といえるでしょう。
小川:ブランディングもマーケティングも基本は信頼関係の積み上げで、そこを丁寧に行っていくことは日本企業の得意とする部分だと思います。その点で、日本企業が活用することで今以上にビジネスをジャンプアップさせられそうな気がします。ちなみにまだ日本では展開されて間もないところですが、事例はあるのでしょうか。
中野:まさに日本でもスタートしたばかりなのですが、さっそくドコモさんに利用いただいております。今後どんどんWRAPによるコンテンツが出てくると思いますが、その最初の一つとして、ドコモの「ギフトコ」というサービスでWRAPが利用されています。メッセージ付きのギフトをSNSやメールなどで送れるサービスです。仕組みはもちろんですが、UIが美しく快適なのでぜひ体験していただきたいですね。
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中澤:ドコモさんは多くの消費者と直結しているだけに、モバイルユーザーとのコミュニケーションの難しさをよく実感されている。だからこそすぐにWRAPの価値に気づいて、一番のユースケースとなられたのだと思います。
実際、欧米やアジアを見ても、通信キャリアにWRAPのヘビーユーザーが多いんですよ。個人とのつながりを深めればビジネスが拡大する。一方でつながりが深い故に、その難しさも知っている。だからこそWRAPを使うというわけです。
コミュニケーションの重要さ、難しさを熟知されてWRAPの導入に至ったのは、マーケティングオートメーション(以下、MA)の日本市場シェア1位のシャノンも同様です。MAによって消費者に合ったタイミング・提供すべき情報を把握して、コンテンツを提供しても、消費者に十分読んでいただけないケースが少なくありません。そこで、シャノンさんはモバイル時代に更に大きな価値を提供できるMAプラットフォームに進化するべく、自社のMAプラットフォーム(SHANON MARKETING PLATFORM)にWRAPを組み込む検討を進められております。
他にも、例えばJTBさんなど、各業界のリーディングプレイヤーがWRAPを利用した取り組みを進めているところです。
WRAPを通して日本のビジネス活性化に寄与したい
小川:おそらくWRAP活用については、各企業がそれぞれ契約・利用を進めるか、又は当社のようなエージェンシーがその販売・利用を広げていくことになると思います。一方、御社はWRAPを通じてどのような価値を業界や企業に対して提供されようとお考えなのでしょうか。
中澤:当社は「ビジネスプロデューシングカンパニー」を標榜しており、多くの大企業様に戦略コンサルティングサービスを提供しておりますが、中でも次世代の事業の柱を作る新事業創造を強みとしています。
実際に事業をつくるとなると、当然マーケティングは不可欠であり、戦略を考え、事業を立ち上げ、それを発信する必要があります。当然、そこにモバイル戦略も含まれますから、WRAPはキーテクノロジーとして活用されることになるでしょう。
今回、Wrap Media, LLCへの投資、パートナーシップ締結はそこを期待してのことと認識しています。しかし、それだけではありません。
現代のビジネスは、ある種『陣取り合戦』的な色合いが強くなってきている。プラットフォーマー戦略もまさにその一つです。自社のエコシステムの中に、より多くの企業・個人を組み込んでいく。そこには、マーケティング「的」要素の重要度が強く存在します。
また、これまでマーケティング要素が弱かったR&Dの分野でも同じことが起こっています。例えばオープンイノベーション。自社の技術シーズを世にオープンにし、世界中の開発者の力を借りて進化を促す。自社技術の強みを十分に伝え、理解してもらう必要がある。そこにもマーケティング的要素が色濃くある。ビジネス戦略の中で、マーケティングの要素がより重要になっていっていることを強く感じています。
それらのソリューションとして、WRAPを使うかはさて置き、デジタルマーケティングの知見を深め、武器を持つことが、我々のような業種にも必要になってきているのです。WRAPとの戦略的パートナーシップも、デザイン会社であるライトパブリシティさんとの戦略的業務提携も、全てはその文脈です。世界最先端のテクノロジー、最高級のパートナーと共に、引き続き日本企業の事業創造をサポートし、日本経済活性化に寄与していきたいと考えております。
小川:ビジネスの中で、コミュニケーションが大きな役割を担うようになったからこそ、プラットフォーム、エージェント、クリエイティブの連携は強力に作用しますね。私たちもエージェンシーとしてお手伝いさせていただければと思います。本日はありがとうございました。
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日時:2016年10月6日(木)15:00~17:30(開場14:30)
場所:東京都品川区西五反田2-21-1 STANDARD会議室五反田ソニー通り店 4階
対象者:事業会社(広告主)の経営者及びマーケティング、デジタルマーケティング責任者やご担当者
※広告会社等、事業会社以外の企業の方のお申込みは原則抽選
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