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モバゲーを運営するDeNAの時価総額は1500億円毀損、携帯フィルタリング導入政策の大きすぎる波紋

 総務省が2007年11月20日に発表した、「有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の普及促進に関する携帯電話事業者等への要請」が、キャリア、コンテンツ事業者から、未成年者、保護者、学校を含めて、大きな波紋を呼んでいる。携帯の出会い系サイトなどを通じて起きる犯罪などから、未成年者を守ることを目的としたフィルタリングサービスの導入だが、あまりにも唐突かつ影響が大きいとして、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構 デジタル知財プロジェクト コンテンツ政策フォーラムは1月21日、「インターネット上の安全・安心に関する緊急フォーラム」を開催。業界関係者が登場して議論が行われた。

 パネリストとして参加したのは、南場智子氏(ディー・エヌ・エー代表取締役社長)、岸原孝昌氏(モバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)事務局長)、岡村信悟氏(総務省総合通信基盤局消費者行政課課長補佐)、道具登志夫氏(デジタルアーツ代表取締役社長)、菊池尚人氏(慶應義塾大学DMC機構准教授)、石戸奈々子氏(NPO法人CANVAS副理事長)。また、中村伊知哉氏(慶應義塾大学DMC機構教授)がモデレーターとして参加。会場は250名もの人が詰めかけ満席となった。

モデレーターの中村伊知哉氏(左)と総務省の岡村信悟氏。

知らないうちにあのサイトが見られなくなってる?

 総務省のコンテンツフィルタリング政策の背景には、未成年者がインターネット上の有害な情報にアクセスして事件に巻き込まれるケースが多発している現状がある。保護者の目が届きにくい携帯電話のコンテンツを未成年者に有害かどうかの視点から切り分けて、有害なものはフィルタリングしてアクセスできないようにするため、総務省は携帯電話事業者3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル)および社団法人電気通信事業者協会に対し、自主的取組を強化するよう2007年12月10日に以下のような要請を行った。

新規契約者に対する取り組み:
・フィルタリングの利用を原則とした形での未成年者の親権者の意思確認の実施。
既存契約者に対する取り組み:
・すべての青少年(18歳未満)の既存契約者に関し、フィルタリングの利用を原則とした形で意思確認を実施。
・青少年(18歳未満)の使用者に関し、親権者である既存契約者に対して、フィルタリング利用の意思確認を実施
取り組みの評価:
・利用者数について、業界として定期的に公表

 この要請を受けてキャリア各社が発表したフィルタリングサービス導入の内容は、利用者および親権者がフィルタリングサービスを利用するかどうかの意思を確認し、意思表明がない場合はフィルタリングが自動的に設定されるというものだった。意思確認の対象となるのは、20才未満の新規契約者と18才未満の既存契約者で、20才以上の成人名義でも利用者が18才未満の契約者に対して同様に意思確認が必要となる。新規契約者の場合は契約時に確認作業が行われるが、既存の未成年ユーザーの場合、フィルタリングを利用したくない人はキャリアに対して解約手続きをしなければならない。

 キャリア各社はすでに、1月あるいは2月から新規契約者に対してこのサービスの提供を開始し、2月以降から既存契約者に対する案内を開始、そして6月から8月にかけてサービスの移行を順次行うとしている。しかし、このフィルタリング導入促進策は、学識経験者、利用者団体、主要な電気通信事業者(団体)などから構成された「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」でいまだ検討中の段階。2008年3月末をめどに中間とりまとめが行われ、2008年11月に最終取りまとめが行われる予定となっている。各キャリアのフィルタリングサービス導入の動きは、大臣要請を受けてこれらの政策決定の前に前倒しで行われているものなのである。

 しかし、利用者とその親権者のすべてが本当に意思表明を行うのだろうか? 案内が送られても気づかない利用者は、知らないうちに自動的にフィルタリングが設定され、気づいたらあのサイトが見られない!このサイトもアクセスできない! といった事態に発展するかもしれないのである。

モバゲーが排除されるフィルタリング導入政策

 では、このフィルタリングによってどんなサイトが見られなくなるのかといえば、中高生に大人気の携帯向けゲーム&SNSサービス「モバゲータウン」もフィルタリングの対象となってしまう。なぜなら、基本的に掲示板機能のあるサイトやSNSなどのコミュニティ機能のあるサイトは、出会い系サイトなどとしても機能するとして、すべて排除されることになるからだ。

 もし、モバゲータウンは有害サイトではないと考えるユーザーが、フィルタリング対象からはずしてほしいと思っても、現状ではそれは不可能といわれている。キャリアは独自の基準を満たした公式サイト(一部を除く)のみをアクセス可能にする「ホワイトリスト方式」、出会い系サイトやギャンブルサイトなど、キャリアが独自に判断した特定のカテゴリに属する一般サイトを有害かどうかに関わらず一律制限する「ブラックリスト方式」、深夜から早朝にかけてのアクセスを制限する「時間制限方式」のいずれかの方法でアクセス制限を行う。利用者はフィルタリングサービスを利用するかどうかについての意思確認を受けるが、ブラックリストは規制カテゴリの指定でしかないため、実際に個々のどのサイトが見られなくなるかは、現状のキャリアのフィルタリングサービスでは知ることができないのである。

 パネリストとして登場したDeNAの南場智子代表取締役は、2007年12月に総務省が中心となって開催した検討会の第2回に参加し、これから議論をしていこうと思った矢先に総務大臣の要請によってキャリアが動いたことに驚きを隠せなかったと当時の心境を語った。この政策発表の1週間のうちに、同社の株主価値、いわゆる時価総額は1500億円毀損し、同社の30%を占める海外の株主から「日本の携帯コンテンツ市場の将来性に自信を持って投資していたのに、日本は一体どうなっているのだ」という問い合わせを受け、その多くが逃げて行ったと南場氏は淡々と語った。

「対策を行っている「モバゲータウン」が、アダルトサイトや自殺サイトと同様の扱いを受ける
のは屈辱的」と語るDeNAの南場智子代表取締役(右)。左はMCF事務局長の岸原孝昌氏。

どうする? 日本の携帯ビジネス

 この動きに歯止めをかけるために、MCFの岸原孝昌事務局長は、民間の第三者機関を設立し、キャリア側の規制対象カテゴリにあるサイトであっても、良質なサイトや自主的にパトロールを行うなどの対策を行っているサイトについては、コンテンツレイヤーでの選別を行うことでアクセス可能とする構想について説明。この第三者機関を今年3月に設立する予定だという。

 今回のフォーラムでは、パソコンのように利用者ごとに柔軟にフィルタリング設定できるソフトを携帯にも導入するべきではという声も出たが、その運用コストは誰が支払うのか、またどのコンテンツが有害かを決めるのは、国でもキャリアでもなく、各利用者自身ではないのかといった意見も上がった。すでに走り出した総務省とキャリアの動きを、多くの人が納得する方向へ向かわせるには残されている時間は少ない。携帯の契約数が1億台を突破した日本の携帯サービスの将来が、今まさに問われている。

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【お詫びと訂正】
総務省から携帯事業者等に対する要請内容が、2006年11月のものであったため、2007年12月の要請内容に差し替えました。ここに訂正してお詫びいたします。

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2008/01/23 16:18 https://markezine.jp/article/detail/2517

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