インハウスでマーケティングチームを持つNetflix
Netflixは、アメリカ・カリフォルニア州に本社を置く、いわずと知れた映像コンテンツのストリーミング配信事業会社だ。同社の広告全般におけるミッションは、「オリジナルコンテンツを普及させながら、会員を獲得すること」だという。
一方で、Teadsは、メディアの記事コンテンツ内で、ユーザーが視聴するかどうかを選択できるアウトストリーム型の動画広告フォーマットを提供する会社だ。特にインリード広告に定評があり、プレミアムサイトで提供されているのが特徴だ。国内ではたとえば、朝日新聞デジタル、東洋経済オンライン、産経デジタル、ロイター、Fashion snap、Fashion pressなど男女や在庫数を問わずUU数の大きい活字媒体をネットワーク化している。
両社の接点は、Teadsのインリード広告をNetflixが利用している点にある。広告主とフォーマット提供元という点では立場を異にするが、インリード広告という、(本格的な普及を前にするという意味で)先進的なアプローチに強く関心を寄せる2社ともいえる。
Netflixはインハウスで専門的なマーケティングチームを抱える。第三者に頼らず、社内でデジタルマーケティングチームを置く英断ができる土壌が、インリード広告でもたらされる“価値の高いインプレッション(動画広告の表示回数)”や“ビューアビリティー(動画広告の完全視聴率や、きちんと広告が見られる場所・状況への露出)”に関する指標の使いこなしにつながっていそうだ。
「Netflixでは、“5年先、10年先で優位なポジションを確保できる組織づくり”を志向しています。我々は5年、10年先を見据えた、デジタルマーケティングのプロフェッショナル組織を目指しているわけです。社風からして、インハウスでプログラマティック広告に力を入れるのも自然な流れで、常に先を見越すために、エージェンシーなどにまかせず自社でナレッジを貯めています」(鴨下氏)
時代を見越したTeadsの動画広告フォーマット
Teadsがユニークな点は、目の付け所にある。デジタルでのマネタイズに苦戦していた活字媒体パブリッシャーを在庫し、フォーマットに大きな付加価値をもたらしたのだ。
また、フォーマット開発は、まさに欧米での課題から作成した。つまり、ユーザーに対してストレスを与えないフォーマットという点を追求した。
「ユーザーに不快感を与える広告フォーマットは、ユーザー自身の目を背けさせ認知にも繋がらないばかりか、アドブロッカーをユーザーが適用することによって表示されてないのに広告のimpカウントにされ、広告主は非表示の広告へも費用を投下する、という悪循環に陥ってしまいます。
Teadsのインリードフォーマットが、その本質を「ユーザーへのストレスを排除」することにより視認性が高め、関心を持って動画を閲覧しやすいサステイナブルな生態系をつくることに成功しています。それがTeadsは視聴完了課金ですが、Viewで見た時でも、広告主に対して価値の高いViewを提供しているのだと思います。
その証拠として、ブランディングだけでなく、獲得効率を指標にする広告主の効果となって表れている実績を導き出せているのだと思います。そして、まだそれを評価する指標が日本では定まっていないため、「本質的なマーケティング貢献度を全うに評価する指標」が必要だと考えます」(横山氏)
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新市場を開拓したいなら、従来型の手法でいいわけがない
NetflixとTeadsが共通して持つ問題意識とは、動画広告の効果を最適に評価(解釈)できるかどうか、といえる。Netflixの場合、オリジナル(=既存にはない)コンテンツを訴求すること、つまり新市場を開拓することが広告の使命であり、従来の獲得型マーケティングの解釈では限界があると鴨下氏は語る。
「Netflixのマーケティングチーム最大のミッションは、オリジナルコンテンツの素晴らしさを多くのみなさんに伝えること。そして会員になっていただくことです。手段を動画広告に限定していませんが、現在だと動画商材には動画を用いたアプローチが最適なので、動画広告を扱う機会が相対的に多いのは確かです」(鴨下氏)
そこに基づきながら、Netflixが大切にするのは、未来を見越したスタンスだ。
「今だけを捉えるならテレビCMは優位ですが、その優位な手段に頼ってばかりでは、時代の変化に対応できません。特に我々はデジタルマーケティングのプロフェッショナルを標榜し、実践しているチームです。本当にデジタルマーケティングをやり抜いたのか? という自問自答を常に繰り返しています」(鴨下氏)
ターゲット訴求せず高パフォーマンスを発揮
その中で行き着いた一つに、Teadsのインリード広告があるといっていいだろう。2015年10月から始めたというNetflixのオリジナルコンテンツ訴求と、ブランド毀損の心配が小さいインリード広告との相性はいいはずだ。実際、鴨下氏から聞かれた、Teadsに感じる優位性については、Teadsならではのユニークネスを感じ取れるものだ。
「我々が行う広告はターゲティングなどをプログラマティックに行うものと、そうでないものがあります。Teadsのインリード広告は後者ですね。緻密にターゲティングしている運用型と特にターゲティングしていないTeadsを比較すると、結果は両者がまったくひけを取らないパフォーマンスとなるケースも珍しくありません」(鴨下氏)
Teadsのフォーマットの特徴として、単なるアウトストリーム型ではなく、あらかじめTeadsが広告主に最適な出稿先を用意できることがあげられるが、まさしくその確度の高さを証明したコメントだ。
このようにインプレッションの価値を追求し、インハウスで効果測定を行っているNetflixへ聞きたいことがある。それは、出稿した広告のインプレッションを改善していくにはどうしたらいいか、だ。
「なるべく汎用的に、様々な地域やシチュエーションでも通用する知見を貯めるようにしています。それが改善軸につながるからです。たとえば、30秒の動画広告を考えると、1つのタイトルだけで構成するのか。それとも、10秒ずつ3つに分割して3つのタイトルで構成したほうがいいのか。両者の仮説検証を行って、どちらの結果が優位になるかを見るようにしています。重視していることは、汎用性が高くかつ、ビジネスに大きなインパクトを与え得る仮説に絞り、統計的に意味のある検証を続けること。これにより、効率的にナレッジを蓄積できるのです」(鴨下氏)
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クリック前のインプレッションのあり方を重視する
さらに具体的に、Netflixではどのような効果検証を行っているのか。
「従来の獲得型マーケティングだと、コンバージョンのためのラストクリックをベースに考えがちです。各媒体の評価もクリック直後のCVRやCPAといった目先の数字にとらわれがち。それでは新しいオリジナルコンテンツの需要創出にはつながりません。たとえば、第三者配信によるビュースルーのインプレッションを通じて、複数のコンバージョンがあったとします。その際、クリック前に遡り、過去のビュースルーについて検証していきます。我々の場合はラストクリックから●日までと共通の期間を定めて、インプレッションについて重みづけせず評価するようにしています」(鴨下氏)
こうしたメジャーメントを行うNetflixのような企業が増えていくことが、さらにビューアビリティーについての理解(=本質的な価値)を深めることになると、横山氏は期待を寄せる。
「Teadsフォーマットはユーザーへ最初からスキップの自由を与えることと、IAB規定のビューアビリティ規定に100%則った形式を提供しています。Netflixのような本質的な効果を最先端の技術を用いて計測する企業に実証頂くことで、インリードという新しいフォーマットへの関心が高まっていくことを期待します」(横山氏)
ビューアビリティーへの問題意識が、人材への投資を喚起
国内のビューアビリティーを巡る状況について、何か打開策はないのか? 最後に現場で奮闘する二人に、それぞれの見解を聞いた。
「人材への投資です。広告主が最大限、広告を活用したいならば、人材を割き、費用を充てることは大事です。これはデジタルマーケティング全体に言えることですが、現状のKPIでは本当の効果が見えてこないなど問題が生じています。KPIへの問題意識を持ち、何をすべきかを考えられる人材にこそ投資する必要があると考えています」(鴨下氏)
フォーマットを提供する横山氏からは、鴨下氏がいう人材の投資を促がす役割を、Teadsが担いたいのだと話す。
「人材に投資できる空気を醸成するには問題意識の輪を広げる必要があります。現状、日本国内では、ブランディングの広告主はターゲットリーチ単価の安さのみ、獲得系広告主だとラストクリックからのCPAという指標のみを追っているかと思いますが、ビューアビリティや滞在時間などの、ユーザーの広告接触態度の差を見るべきだと考えます。Teadsでは“価値のあるインプレッション”を数値化するためにVCPM,VCPCV(Viewable Cost Per Completed View)の指標化、Viewabilityのへの意識を高める動きを広告主と進めております」(横山氏)
2社から感じる期待からは、価値のあるインプレッションやVCPCVが普遍的となり、先進的と評された取り組みが、多くの企業にとって標準化する時代がそう遠くない未来に待っていると思わせる。
その時、Netflixがどのような先進的なアプローチを行っているか。Teadsがさらに進化を遂げたアウトストリームの動画広告フォーマットを開発しているか。2社の前途に注視したい。
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