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成果の頭打ちを打破する「大きなPDCA」とは ビービットが提案する、ゴール設定とユーザー理解の深め方

 本記事では、2016年10月12日にビービットで開催されたセミナー「成果の頭打ちを打開する! ウェブ集客を位置づけから抜本的に見直す手法と成功事例」の模様をお届けする。登壇者は、同社 ソフトウェア事業部のコンサルタント生田啓氏。さらに、セミナーの内容の中で特に注目すべきポイントを、同社のソフトウェア事業部にて責任者を務める三宅史生氏が補足解説した。

新規刈り取りで行き詰まった企業が陥る、3つの迷走パターン

 2016年10月12日、600社以上の導入実績を持つ広告効果測定ツール「ウェブアンテナ」の提供し、コンサルティング事業も展開するビービットは、「成果の頭打ちを打開する! ウェブ集客を位置づけから抜本的に見直す手法と成功事例」と題したセミナーを同社オフィスにて開催した。

 今回のセミナーでは、現在Web広告運用を行う企業の陥りやすい課題である「新規顧客の刈り取り最適化の限界」に対する解決策が、同社クライアントの事例とともに解説された。セミナーに登壇した生田氏は、同社でコンサルタントを務めており、現在ウェブアンテナの事業運営にも携わっている。

生田様画像
株式会社ビービット ソフトウェア事業部 コンサルタント 生田啓氏

 生田氏はまず、企業が「新規顧客の刈り取り最適化の限界」に陥りやすい背景を示した。ここ2年ほどの間にデジタル上での競争は激化し、SEMを中心にCPAが高騰。どれだけA/Bテストなどを繰り返しても、ある時点から運用型広告の効果を向上できないというケースが増えている。その結果、多くの企業が新規顧客の刈り取りに限界を感じてしまうという。

 この課題に対して通常、企業は以下3パターンのいずれかで対応することが多い。

1.潜在層向けや、LTV向上のためのCRM施策など、刈り取り以外の施策を行う

2.アトリビューション分析やカスタマージャーニー分析など、新しいデータ分析方法を採用する

3.DMPやマーケティングオートメーション(以下、MA)など、新しいテクノロジーを導入する

 しかし生田氏によれば、上記は全て難易度が高く、ほとんどの企業が上手くいっていないという。

 「1つ目の刈り取り以外の施策を行う場合、長期的に取り組む必要があり、成果がすぐ出にくい。さらにCPAなどわかりやすい指標では目的に沿った評価ができないというデメリットもあります。2つ目の新たなデータ分析手法のほとんどは、取り扱うデータが膨大で難易度が高い。3つ目のDMPはサードパーティーデータを使って劇的に成功した例は少なく、MAもセグメント設定やシナリオ作成が難しいのでメール配信機能の活用のみになっていることがほとんどです。つまり、どれも大きな成果を挙げるブレイクスルーには至っていないことがわかります」(生田氏)

効果の最大化に必要な大きなPDCAサイクルとは

 ビービットでは、この手詰まり感を打破するために、成功している企業の共通点を分析。そこで見えてきたのが、生田氏が「大きなPDCA」と呼ぶサイクルを回せている企業が成功しているということだ。

 ほとんどのマーケターは、広告枠の選択やクリエイティブなどのプランニングをもとに施策を実行し、効果検証した後に次のプランニングを行うというPDCAサイクルを回している。生田氏はこのプロセスを小さなPDCAとし、「このプロセスはもちろん重要ですが、それだけでは現状を打破できません」と述べた。

 では、大きなPDCAではどのようにサイクルを回すのだろうか。その答えは、広告施策のプランニングの前に「そもそもウェブ施策のゴールは何か」とビジネスゴールから逆算して改めて考え直し、さらにユーザー理解を深めるステップを加えるというものだ。

 「広告枠やクリエイティブを最適化するだけでなく、抜本的に立ち戻ってゴールを見直すこと、ユーザーを深く理解することが重要なのです。本日はその具体的な方法を、弊社のクライアント事例をもとに紹介します」(生田氏)

3つの事例からゴールの見直し方を解説

 生田氏はゴールを見直すことについて、「定石を疑い、既存のゴールにこだわらず、ゴールの有効性を検証し柔軟に見直す。この3つが重要」だと述べた。セミナー内ではこれらの項目を体現している3つの事例を紹介した。

定石を疑ったサプリメントEC企業

 基本的に同業界のビジネスゴールは、商品の定期購入をしてもらうことだ。そしてほとんどの企業が、ユーザーに単品購入やサンプル購入から商品理解を促し、その後メルマガなどで定期購入を訴求するという手法が定石となっている。

 しかしこの会社は、オフライン施策や動画広告も行っており、ユーザーに一定の商品理解があることもわかっていた。そのため、オフライン施策や動画広告などに接触したユーザーに対しては、いきなり定期購入を訴求する施策を実施してみたという。

 これまでの業界の常識を覆す施策だったが、結果としては飛躍的に成果が上がった。「このように今までの定石を疑い、ビジネスゴールから考えることが重要です」と生田氏は語った。

ビジネスに紐付いたゴールを設けた大手教育会社

 この企業では、無料体験レッスンのキャンペーンを定期的に行っていたが、キャンペーンが未実施の時期にWebサイトへアクセスしてきたユーザーへのゴールをどうするかが課題となっていた。これまでは見学予約というゴールを設定していたが、体験レッスンほどの魅力を伝えられないからか、あまり成果が出ていなかった。

 そこで、“無料体験レッスンキャンペーン開始に関するお知らせメールの登録”にゴールを切り替えたところ、入会数が爆発的に伸びたという。生田氏は、「無料体験レッスンがビジネスゴールなのであれば、そこにシンプルに紐づけてみるのも手。既存のゴールにこだわらず、成果までの道筋を設計することが大切です」とした。

仮説を見直したクラウドソフトウェア企業

 BtoBのビジネスを展開するこの企業では、リードの数を増やすために製品資料ではなく、ソフトウェアを利用した業務に関連したホワイトペーパーを作成。そのダウンロードをきっかけに得られたリードに対し、営業が訪問するスタイルに変更した。

 結果、以前の資料請求に比べてダウンロード数は爆発的に伸び、一見成功に見えたが、最終的なソフトウェアの導入はそれほど伸びなかった。原因は、営業が少なく増えたリードをフォローできなかった点、知見資料目的のユーザーだったため必ずしも導入を検討してもらえるとは限らなかった点にある。そこで、現在はゴールを資料請求に戻しているという。

 「ゴールはあくまで仮説。有効性を見極めて、柔軟に見直すことがポイントです」(生田氏)

ファクトから顧客を理解したコーチ・ユナイテッド

 次にユーザーを深く理解するためのコツを、生田氏は事例をもとに示した。

 事例企業として挙げられたのは、習い事のプラットフォーム「サイタ」を運営しているコーチ・ユナイテッド。同社では、ビービットのウェブアンテナを活用し、同社が運営する「サイタカメラ教室」において、無料体験レッスンの申込数を導入前に比べ7倍に増加、CPAも30%減少させることに成功している。

 同社が行ったユーザー理解に関する取り組みは主に2つ。それは「ユーザー行動を見て広告配信の調整に活かす」「LTVでキーワードごとの獲得ユーザーとサービスの相性を分析する」の2つだ。

 前者に関しては、ユーザー行動を分析した結果、Facebook経由で来たユーザーは土日のレッスンを受けるケースが多く、検索経由だと平日昼間を選ぶ人が多いことがわかった。そこで、土日のレッスンが空いていればFacebook広告を強化し、平日が空いていればリスティングを強化することで、配信の最適化を行った。

 後者では、CVに至った検索ワードを比較し「カメラ教室」と入力しているユーザーはLTVや継続率が高く、「写真教室」で検索してきたユーザーはそれらの数値が低いことを発見。そのデータをもとに、「カメラ」というワードの方が、同社のターゲットに合うと判断し、サービスの打ち出し方を変更することができた。

 生田氏は、以上の事例を「聞くと当たり前に見えるが、実際に0から行うのは難しい」と語った。さらに、ユーザーの生の姿を実際に見ることもユーザーを深く理解する上では有効だとした。

 「お客様を店舗内で観察してみたり、コールセンターで電話対応をしてみたりするだけで多くのインプットが得られるはずです」(生田氏)

素早く施策のPDCAを回すことも重要

 ゴール設定とユーザー理解のプロセスを経たことで、プランニングも変化する。コーチ・ユナイテッドでは、Facebook広告などを経由してきた気軽に受講したいユーザー向けに、通常よりも簡単な申し込みフォームを用意した結果、CVRが2.5倍に上昇した。この施策は、Facebook経由のユーザーが申込時に先生を選べないというファクトをもとに実装した。

 また、見直したゴールとユーザー理解が定まった後は、小さなPDCAを素早く回し続けることが重要だ。生田氏は、ユーザーの理解やゴールの見直しは月次や四半期に1回行うのに対して、それ以降のプロセスはできるだけ早く回すべきだとした。

 ビービットのクライアントであるサントリー酒類では、施策会議を必ず週1回行い、全員が先週に行った施策と結果、そして次週にどう改善するか発表することを厳格に義務づけているという。ただし、失敗をしても一切責められることはない。毎週徹底して決めたPDCAを回すことを重視しているのだ。

 最後に生田氏は、「ゴールとユーザーを見直すことが重要、その上で高速でPDCAを回し、継続的に成果を向上していただきたい」と語り、講演を締めくくった。

仮説は実行に対して立てるものではない

 公演後、同社 ソフトウェア事業部の責任者を務める三宅氏が大きなPDCAを回す上で、ゴール設定とユーザー理解の重要性を重ねて解説した。

株式会社ビービット ソフトウェア事業部 責任者 三宅史生氏

 デジタルマーケティングを始めたばかりの企業なら、通常のPDCAサイクルを回すだけで一定の成果を出すことができる。しかしある程度実績を積んで、伸び悩んできた企業は「ゴールの見直しとユーザー理解が必要」だと三宅氏は断言する。

 「伸び悩んでいる企業の大半は、『施策をどのように打てば効果が上がるのか』という実行に対する仮説を立ててしまう。そうではなく、もっと根源の『自社の正しいビジネスゴールは何か、自社サービスに適したユーザーは誰か』といった仮説を立て、それをブラッシュアップすることが必要です」(三宅氏)

 特にゴールから見直そうとする企業は少ないという。そのため、大手教育会社の事例のように「無料体験レッスンをしていない時期には、見学をさせる」という当たり前のゴールを覆したケースは、とても画期的だったといえる。

ユーザー理解は、生の声を聞くことが効率的

 大きなPDCAを回す上で必要なもう一つのポイントである、ユーザー理解については流行のテクノロジーに惑わされて難しい分析をするよりも、ユーザーの生の声を聞く方が簡単で速いとした。

 「ユーザーに聞けば一瞬でわかることを、いろんな軸で分析して苦労してアウトプットしているケースを多々見かけます。そういった分析の苦しみを味わうより、まずお客様の生の声を聞くことから始めてみてはいかがでしょうか」(三宅氏)

 三宅氏によれば、簡素なウェブアンケートツールで「自社サイトに何をしに来たのか」「何が知りたかったのか」など簡単な質問を投げかけるだけでも、山のようにインプットが得られるという。

 「アンケートは結果が偏る、統計的に優位な数ではないと思われがちです。けれども、例えば200人にアンケートを取ったときに、全員が偏った意見を持っていることはまずないと思います」(三宅氏)

 また、店舗に立ってみる、コールセンターの応対を体験するだけでも得られることは多い。「まずはできる範囲でユーザーと接触してみるということが大切だと思います」と最後に三宅氏は語った。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター
出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/11/14 12:00 https://markezine.jp/article/detail/25507