前回のおさらい
前回の記事(詳細はこちら)では、アトリビューション分析の意義や日本における状況、普及に向けた課題などについてお話ししました。今回は米国での計測・最適化ツールの動向を紹介し、すでに挙げたアトリビューション分析の実施・普及に向けた課題が、どの程度まで解決可能かについて、お伝えできればと思います。
メディア・デバイスの多様化により、複雑化する広告計測
本題に入る前に、消費者の環境の変化により、広告計測がより複雑となっている現況を確認します。一つは、メディアの多様化。「テレビを見て電話で申し込む」、そんな単純な時代から状況は大きく変わり、オフライン・オンラインを含め多くのメディアと接触する時代となりました。もう一つは、デバイスの増加。PC一台の時代から、一人がスマホ・タブレット・PCと複数のデバイスを利用する状況となっています。
このように、メディア・デバイスの多様化により、各メディアの広告効果の可視化や分析はますます複雑化しています。このことからも、アトリビューション分析などマーケティング最適化に向けた施策が特に必要になっている状況であることがわかります。
このような状況の中、米国では多くのツールが開発・提供されています。これ以降は、日本のアトリビューション分析の実施・普及に向けた課題が、米国ツールではどの程度解決可能かについて見ていきたいと思います。
動向1:「ユーザー単位」の「オフラインを含めた」計測
前回、「計測環境の構築」をアトリビューション分析の実施・普及に向けた課題の一つとして記載しました。オンラインのみの計測でさえ、複数のメディアを統合的に計測するには、ツールを導入するひと手間がかかりますが、ここではさらに、「マルチデバイスへの対応」と「オフライン計測」について触れたいと思います。
マルチデバイスへの対応(デバイス単位→ユーザー(人)単位へ)
すでに述べた通り、昨今のデバイスの多様化・複数化により、人単位の広告の効果計測が難しくなっています。図1のように、ユーザーAが3つのデバイスを使用し、それぞれ広告に接触した後に最終的にPCでCVした場合、本当であれば広告A,広告BについてもCVへの貢献は認められるべきですが、デバイス単位の計測環境では広告Cの貢献のみの計測となってしまいます。
そこで、モバイル、タブレット、PCそれぞれに関して、全てAさんが使用していると紐付けるデータをインプットすることにより、図2のようにユーザー単位の広告接触を可視化する必要があります。
このように、クロスデバイスの情報をもとに、いかにデバイス単位から、人単位のカスタマージャーニーを描けるかが計測環境構築の課題の一つといえます。
クロスデバイスをマッチングするためのデータを集める方法としては大きく2つあります。
1.広告主が所有するデータを利用する(ログインが必要なWebサービス事業者など)
2.ツールベンダーが所有・用意する、または、その両方
AOL Convertroの例では、Verizonの所有するキャリアデータの他に、下図のようにツール利用者が所有するクロスデバイスマッチングデータを共有し利用する仕組みも提供されています。
また、今年に入ってAdobeが発表したクロスデバイスの消費者認識ネットワーク(Co-op)も、こうしたデバイス単位から人単位へのマーケティングを目的としたものといえます。
これらクロスデバイスデータを集め、いかに広告計測の精度を上げていくかが一つのテーマになっているかと思います。
オフラインの計測
計測環境構築の課題のもう一つの課題はオフラインの計測です。オンラインと異なり、オフラインの広告接触、CV情報をユーザー単位で計測・可視化することはハードルが高い。しかしながら、分析ツールの中にはベンダーとのパートナーシップにより、図4のように、オフラインもオンライン同様に、ユーザー単位での広告接触からCVまでのカスタマージャーニーを可視化できるものが出てきています。
例えば、CVが店舗での購入である場合、店舗の購買データをオンラインのユーザーデータとマッチングさせることにより、オフラインCVにおけるオンライン広告の効果を見ることが可能となります。
このように、チャネルをオンライン・オフラインに複数持つ事業者においても、統合的に広告分析を行える環境が整いつつあります。