UGCを使ったバナー広告はクリック率が1.7倍に
前回は、マーケティングにおけるUGC(User Generated Contents)の重要性が高まっている背景と、UGCをSNS広告のクリエイティブに活用する新たなトレンドが生まれていることを解説しました。この動きは国内でも広がり始めており、高い広告効果を上げた事例も生まれつつあります。
化粧品等の開発・販売を行うレノア・ジャパン株式会社は、商品のファンユーザーによってInstagramに投稿された商品写真の中から、リアルな使用感が伝わるUGCを選び出しFacebookやInstagramの広告バナーとして活用したところ、オフィシャルな商品写真を利用した従来の広告バナーと比較してクリック率が1.7倍に上昇、クリック単価が48.5%減少し、広告効果の大幅な改善を実現しました。
UGCがSNS広告に効果的な4つの理由
UGCを活用したバナー広告の効果が従来のバナーよりも高くなる理由は、主に以下の4つが挙げられると考えています。
- 生活者目線のリアルな写真が多い
- 写真がSNSのフィード(タイムライン)に馴染みやすい
- 「いいね!」やシェア数が多いUGC=広告効果が高いという仮説が成り立つ
- コストを抑えながら効果検証が行える
生活者目線のリアルな写真が多い
SNSに投稿される商品写真の中には、企業のマーケティング担当者やプロのカメラマンが思いつかない、リアルな「生活者目線」で撮影されたものが多く存在します。たとえば、商品の一部分しか写っていなかったり、ロゴ部分が陰になっていて見えづらかったり、競合商品と一緒に撮っていたり……と、広告写真としては一見「NG」と思える写真も少なくありません。
しかしここには、企業がまだ気付いていなかった商品の「見せ方」や「訴求ポイント」が表現されています。これらの斬新な表現こそが、商品の新たな魅力を浮き上がらせ、SNS上で大きな広告効果を生み出していると考えられます。
写真がSNSのフィード(タイムライン)に馴染みやすい
SNS広告はユーザー同士のコミュニケーションの合間に表示されるため、広告バナーのテイストによってはフィード上で「浮いて」しまう場合も少なくありません。一方、Instagramに代表される“ビジュアル主体のSNS”のユーザーは、自分の友人やフォロワーの好みを的確に捉えた写真を撮影するスキルに長けています。なぜなら、この「フォロワーに写真を見てもらいたい」というモチベーションこそが、SNSを構成する最大の要素でもあるからです。このことから、UGCの活用によって、自然とフィードに馴染みやすくユーザーに受け入れられやすい広告バナーの作成が可能となります。
「いいね!」やシェア数が多いUGC=広告効果が高いという仮説が成り立つ
Facebookには、広告に対するオーディエンスとの関連性を評価する「関連度スコア」というシステムがあります。広告に対するポジティブな反応とネガティブな反応を組み合わせて10段階で評価され、スコアが高ければ高いほど広告の配信価格が抑えられます。
このことから、「いいね!」がたくさん付いていたり、数多くシェアされたりしているUGCを広告バナーに活用することで、ユーザーのポジティブな反応が期待できる=関連度スコアが高くなる=広告効率が向上する、という仮説が成り立ちます。
もちろん、友人に向けた投稿と広告バナーとではユーザーの反応も異なるため一概にはいえませんが、少なくとも「いいね!」やシェア数を参考にすることで広告効率の良いUGCを推測しやすくなるのは間違いありません。
コストを抑えながら効果検証が行える
広告クリエイティブの陳腐化が速いSNS広告では、多数の広告バナーを効率的に制作し、A/Bテストを行いながらスピーディーに刷新していく必要があります。UGCの広告活用には投稿者の許可を得るためのフローが必要ですが、クオリティの高い商品写真を作り出している人ほど商品への愛着度は高く、企業がきちんとお願いすれば、商品のオフィシャルなプロモーションに活用されることを好意的に受け止める傾向にあります。つまり、コストを抑えながら短期間にクオリティの高い商品画像を多数収集できるUGCは、効果的な広告運用において大きなメリットがあるといえるでしょう。
UGCの活用には投稿者の許可が必要
UGCをSNS広告に活用するためには、必ず投稿者から事前に許諾を得る必要があります。許諾を得るには、たとえば以下のような方法が考えられます。
①Instagramのメッセージ機能やコメント欄で投稿者に直接コンタクトを取って許可を得る
②キャンペーン等の企画を通して投稿を促し、その参加過程で許可を得る
特に①は一見ハードルが高く感じますが、前述したように、商品にこだわりや愛着を持って質の高い画像・動画を投稿しているユーザーは企業からの真摯なコミュニケーションを好意的に捉えてくれる場合が多く、良質な関係の構築に繋がります。
なお、今回の記事内で紹介しているレノア・ジャパン社の事例は②に当たります。他にも大手メーカーが①の方法を採用した際には、実に6割以上のユーザーが企業側のコメントを好意的に受け止め、広告利用を許可した、という例もあります。