消費行動の変化で、UGCの広告活用が注目され始めた
UGCを活用したSNS広告の効果が高い理由をまとめると、①「生活者目線のリアリティー」があり、②SNSのフィードにも違和感なく馴染みユーザーに受け入れられやすく、③ポジティブな反応を呼びやすいことで高い広告効率が期待でき、④コストを抑えてスピーディーな効果検証ができるというわけです。
このようなマーケティング手法に注目が集まっている背景の一つに、生活者の意思決定のプロセスにおいて、クチコミを始めとするUGCの価値が以前にも増して高まっていることが挙げられます。SNSやレビューサイトが今ほど普及していなかった時代は、マス広告などを活用してブランドイメージを浸透させ小売店の棚を確保することで、生活者の購買の意思決定をコントロールすることができました。なぜならば生活者は、頭の中の記憶や小売店の棚といった限られた情報に基づいて購入の意思決定を行うしかなかったためです。
しかし現在は、商品を買う前にインターネットでクチコミを探したり、価格を他店と比較したりすることが当たり前になり、商品の情報を多角的に収集した上で価値を判断できるようになりました。クチコミを検索するためのプラットフォームとして、検索エンジンに加えてInstagramなどのSNSも台頭していることは前回説明した通りですが、いずれにせよ、生活者が購入の意思決定を行う際は、ユーザーのリアルな体験やクチコミなどを参考にする傾向がますます強まっています。

広告が嫌われる時代だからこそ、UGCが求められている
UGCが生活者の意思決定に強い影響を及ぼし始めていることは、すでに多くのマーケターや研究者も指摘しています。たとえば、スタンフォード大学でマーケティングを研究しているイタマール・サイモンソン教授らは、著書『ウソはバレる「定説」が通用しない時代の新しいマーケティング』の中で次のように指摘しています。
かつての生活者は、商品に対する世間のイメージや、たまたま目の前にある情報といった相対的な情報に基づいて買い物をしていたが、現在は商品の最安値や利用者のクチコミなど、その商品に関する『絶対価値』を知った上で、購買の意思決定を行っている。
イタマール・サイモンソン、エマニュエル・ローゼン(千葉 敏生)『ウソはバレる「定説」が通用しない時代の新しいマーケティング』(ダイヤモンド、2016年)
このように、クチコミが生活者に強い影響を与えるようになるなかで、企業が自分たちの主張を押し付けるような広告に対して多くの人がネガティブな感情を持っている現状も、様々な調査によって示されています。特に、FacebookやInstagramなどのSNS広告では、いかにも広告だとわかるクリエイティブが嫌われる傾向にあります。こうした事情も、フィードになじみやすいUGCを広告に活用するトレンドを後押ししていると言えるでしょう。
