近年のデジタル化の加速と、スマートフォンの普及により、企業は顧客に最適化されたWebサイト制作とカスタマーデータの管理が必要不可欠になった。2016年12月8日に開催された「INNOVATION TOUR TOKYO」では、主催のオープンテキスト社によるカスタマーエクスペリエンスマネジメント、Webコンテンツ管理とカスタマーコミュニケーション管理の最新ソリューションをテーマとしたプレゼンテーションが行われた。
オープンテキスト社は、EIM(エンタープライズ情報管理)分野を中心としたソリューションの提供を行なっているカナダの企業である。当日は、「Webコンテンツ管理最新アップデート」と題し、日本法人カスタマーエクスペリエンス マネジメント プリセールスマネージャの小口貴史氏から、Webコンテンツを管理する最新版のソリューションについて紹介がなされた。
マルチデバイス時代に対応した、サービス提供Webサイトの構築
Webサービスの運用を考えた際、マーケターやコンテンツ管理者、商品管理者など、様々な人が携わる。こうしたWebサービス運用におけるWebサイトの制作から公開までの、すべてのフローをサポートするソリューションが、OpenText デジタル エクスペリエンス マネジメントだ。
まず、コンテンツ制作環境の中心となるのが「OpenText TeamSite(以下、TeamSite)」という、コンテンツ管理の製品。この環境でコンテンツをつくり、公開までのワークフロー、自動配信などを行うことができる製品だ。そして、「OpenText Media Management/MediaBin(以下、Media Management/MediaBin)」という2つの製品が、このコンテンツづくりを行う上で、写真データなどのデジタル資産を管理する。このMedia Management/MediaBinにストックしたデジタルデータをTeamSiteと連携して、コンテンツ制作をスムーズに行うことができる。
コンテンツの公開には、OpenText LiveSite(以下、LiveSite)というモジュールを使って、サイトの訪問者へ最適なコンテンツを提供することができる。最後にあるOpenText Optimostは、A/BテストやMVT、ターゲティングツールとオープンテキストのコンサルタントによるマネージドサービスで、他のモジュールと違い、ソフトウェアではなくSaaSとしての提供となる。
これらを統合し、Webサイト制作におけるコンテンツ管理を統一的に行うことを可能にするのが「OpenText デジタル エクスペリエンス マネジメント」だ。
次世代のアーキテクチャに求められる、4つの要素
小口氏によると、次世代のコンテンツ管理へのニーズに対応するため、このプラットフォームは以下の4つの大きなアーキテクチャを備えている。
1つ目は、コンテンツのサービス化(CaaS:Content as a Service)。
2つ目は、ヘッドレスCMS。共通のAPIを使うことで、コンテンツ部分のみで、マルチデバイスなど様々なディスプレイへコンテンツを提供することができる。こうしたヘッドレスCMSは、すでに海外の企業でも利用されており、入力された製品情報が社内資料や顧客へのオムニチャネルへ、誤った情報が届かないように、一元的に利用されている。
3つ目は、分離アーキテクチャの採用だ。制作環境と公開環境が相互に依存しない分離アーキテクチャの特性により、「TeamSite」および「LiveSite」は安全で高パフォーマンスな環境を提供できる。分離していることで、仮に制作環境のダウンがあっても、公開環境に影響しないメリットがある。
4つ目は、マイクロサービス化。Webサイトのページに複数のサービスを組み合わせた、他システム連動ページの構成により、各サービスは様々なデータ、外部サービスを独立したコンポーネントとして構成管理できる。コンポーネントは様々なページに配置でき、ビジネスユーザーがサービスを自由に組み合わせ可能だ。
たとえば、航空券予約サービスなどで、外部のサービスがもっている予約状況などを取得して公開したり、外部のニュースサイトの連携といったことをコンポーネント化して、再利用していくことで運用できる。
近年では、ある製品の広告をマルチデバイスやデジタルサイネージ、さらにメールなど多岐にわたって配信することが当たり前となっている。そうした中、スピーディにコンテンツ管理ができる体制を整えていく必要があるという。
最新版で明らかに変わった、オープンテキストのUI
現在、大手リテール、ハウジング、製造業、金融系など、トップ企業で導入している同社のプラットフォームだが、最新版では大きくUIが変わった。特にTeamSiteでは、ビジネスサイドのユーザーが使いやすいように、キャラクター(文字情報)ベースのUIから、ビジュアルベースのUIへの大幅な変更がなされている。
仕様変更はビジュアルだけではなく、ドラッグ&ドロップによるアセットのインポートや、画像ファイルのマルチデバイス対応における自動変換、HTMLファイルからテンプレートを自動で生成するといった機能も追加。新規ユーザーが本プラットフォームへ移行する際の壁となる、システムの統合化も非常に用意になった。さらに、サイトのページ制作で利用できるコンポーネントも複数用意。制作したいサイトの目的に合わせて、コンポーネント要素を組み合わせて、簡単にページのレイアウトを作成することができ、ワンソースでマルチチャネルに対応したデザインを作成できる。この際、各デバイスでのプレビューを一括で表示することが可能で、確認作業を大幅に削減できるようになった。
その他、最新アップデートでは、各デバイスでの表示スピードのシミュレーションや、シンプルな操作での公開承認申請、ワークフローモデラーによるユーザーのプロセスの視覚化など、様々な新機能を盛り込んでいる。
これらの変更により、Webサイト構築の専門家でなくても、よりハイエンドなWebサービスの運用が行えるようになった。
Web接客、マーケティング最適化機能を実装したOptimost
公開後のソリューションとしてオープンテキスト社が提供するのが、「OpenText Optimost(以下、Optimost)」だ。「Optimost」は、ECサイトで近年ニーズが高まるWeb接客(ウェブ接客)やマーケティングを最適化する機能も網羅している。
パーソナライゼーション機能。振る舞い、顧客プロファイル、アクセスしてきた場所の地理情報、人口統計をベースに、訪問者に最も関連するコンテンツを提供する。これに連動して、レコメンデーション機能も用意されている。購買するサイトであれば、サイト訪問者を、購買促進コンテンツや他の購入オプションに導き、購買を後押しする。
また、パーソナライゼーションをさらに有効にする、ターゲティングおよびセグメンテーション機能も搭載。地理情報やIPアドレス、リファラー、アクセス元のデバイス・OS・ブラウザ・URLアクセス・クッキーの値を分析する。
このような施策は、テスト機能で検証を行うことができる。確かなデータに基づく意思決定…購買の率が高いものを追求し、コンバージョンをあげるための施策として、A/B/n テスト、多変量テスト(MVT)を実施する。テストで検証を行った際には、分析機能で結果をレポートにし、一覧性のある情報でユーザーのPDCAをサポートしてくれる。
以上が、オープンテキスト社が提供する、マネージドサービスである。ツールの提供だけでなく、コンサルティングまでを一貫して行うことで、包括的なWebサービス運用の支援サービスを提供できる。
トレンドは、オムニチャネルコミュニケーションへ
続いてのセッションでは、「オムニチャネルカスタマーコミュニケーションと最新事例」と題して、CEM/CCM ソリューションコンサルタントの柿本伸明氏が、Webだけに留まらないエクスペリエンスを構成するカスタマーコミュニケーションについて語った。
カスタマーコミュニケーションは、企業から顧客へのアウトバウンドのコミュニケーションであり、カスタマージャーニーのほぼすべての領域で顧客との接点として機能している。保険業を例に説明すれば、設計書や申込書、証券、総合通知、更改の案内など、多様な情報が複数の形式・メディアで提供されている。カスタマーコミュニケーションは、顧客に情報を伝え、注意を喚起し、行動を促すなどの重要な機能を果たしている。
「企業が成長するには、新しいバリューチェーンに沿って顧客へのコミュニケーションを革新する必要があります。しかも顧客が期待するエクスペリエンスのハードルが上がっています。つまり競争に勝つための差別化要因として、サイト構築だけでなくコミュニケーションによるエクスペリエンスも統合・強化する必要があります」(柿本氏)
カスタマーコミュニケーションは、過去は、印刷物だけのシングルチャネルだったが、現在は、マルチチャネルまたはクロスチャネルで提供される状況だ。
その一方で現在は、マルチチャネルとクロスチャネルが併用されている状況だ。
「マルチチャネルは、複数の別々に管理されたチャネルによるコミュニケーションです。印刷に加えてEメールやWebなどの複数チャネルに対応しますが、コンテンツや見た目がそれぞれで異なり、顧客のエクスペリエンスは一貫しません。企業も複数のツールとデザインの負担が大変です。
クロスチャネルは、ワンソースに基づくコミュニケーションを一度に生成し、複数チャネルで提供します。デザインやコンテンツはデバイスやメディアに最適化され統一性があり、顧客は自らが望むチャネルでコミュニケーションを受け取ることができます」
日本は、いまだに印刷だけのシングルチャネルか部分的なマルチチャネルに留まっているレベルだ。「OpenText Exstream(以下、Exstream)」は、これを一気にクロスチャネルに引き上げ、カスタマーエクスペリエンスを変革するカスタマーコミュニケーション管理の製品である。
さらに今後の主流となっていくのが、オムニチャネルである。オムニチャネルリテーリングの成功には、オムニチャネルマーケティングとオムニチャネルコミュニケーションが必要、と柿本氏は主張する。
オムニチャネルでは、あるチャネルで始まったカスタマーとのインタラクションが、別のチャネルで継続できることを意味する。Web、Eメール、モバイル、印刷やリアルな店舗でのコミュニケーションやインタラクションが融合し、常にリアルタイムのコンテキストを反映した一貫したエクスペリエンスが提供される。つまりカスタマージャーニーの最適化に欠かせないのがオムニチャネルコミュニケーションである。
クロスチャネルのエクスペリエンスを拡張する最新機能
柿本氏はエクスペリエンスを拡張する最新3製品を紹介した。まずPDFに加えてEメールやWeb、モバイル向けに最適化されたコミュニケーションを一度に生成するコア製品が「Exstream Design and Production」。 そして「Empower Editor」製品で対話的にパーソナライズすることができる。さらに「Command Center/Delivery Manager」で顧客に配信する他、Eメール送信時のエラーを印刷と郵送でリカバリーすることもできる。
柿本氏によると、以下の新たなマーケティングアーキテクチャーがExstreamで可能になる。
既存のシステムや枠組み、コンテンツをそのまま活用しながら、マーケティングコミュニケーションをレスポンス率が高いトランザクショナルな領域にクロスチャネルで拡張する。
こうした包括的なマーケティングは、既に海外では広く実施されており、最近ではパーソナライズされたビデオにも展開されている。
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