集客なくしてマーケティングなし
――鈴木さんが担当されるのは「集客プランニング」ということで、「2日で分かるWebマーケティング基礎講座」の1日目に実施されます。他のコマに比べて生々しさを感じるテーマですが、Webマーケティングにおいて集客はどういう位置づけになるのでしょうか。
鈴木:確かに生々しいのは事実です。そう感じるのは、数字を追いかける必要があること、またそれにもかかわらずその数字から目を背けている人が多いからではないかと思います。ですが、集客なくしてマーケティングはありません。Webマーケティングに取り組むなら考え続けなくてはならないテーマですね。
講座では、まずは受講者自身の立ち位置、役割を再認識していただきたいと考えています。よく私が言うのは、プロジェクトのマーケティング全体を俯瞰してみてほしいということです。自分の立ち位置が周囲とどのようにつながっているか、自分のやったことが何にどう影響するのかを考えることによって、自身の役割を再認識することができるでしょう。
マーケティングや集客を任されるということは、自社のことをきちんと把握し理解しておく必要があります。製品やサービスがどういうものなのか、ユーザーにどう受け入れられ、利用されているのかも知らないといけません。一つの施策を行うことだけが集客ではないんです。
プロジェクトの目的に立ち返る俯瞰の視点
――講座はどういう方におすすめですか?
鈴木:いきなりマーケティング担当に任命されてしまった方ですね。あとは、突然売上目標やKGIだけを渡されてしまった方。もちろん、マーケティングを基礎から学びたいと思っている方も大歓迎です。
今まで受講された方も、マーケティング担当になったけれど何をしたらいいのかわからないという方が多かったですね。新卒で学びに来られる方もけっこういます。
――これまでの受講者の満足度はどうですか?
鈴木:全員に100点をもらうのは難しいと思いますが、講座内容の改良は毎回続けています。やはり世の中のニーズは変わっていくので、いつまでも同じことを話しているわけにはいきません。自分自身も講座の集客に貢献しなくてはいけないと、毎回できるだけ多くの方に満足してもらえる内容にしようとしています。
たとえば、以前と比べると「体系的に学ぶことが重要」と前置きをするようになりました。個別の施策がどういうものなのかを解説するのは当然大事なんですが、それぞれがどういうコンテキストに置かれるものなのか、相互に関連性を見出してもらえるようにしているんです。
リマーケティングとリターゲティングの違いは、蔑ろにはできないとはいえ集客プランニングという全体の枠組みの中では本質的な事柄ではありません。そうした個々の用語や施策は調べればわかりますから、やはり重要なのはそれぞれがどうつながっているか、コンテキストを知ってもらうことなんですね。
――講座でも、個別の手法を学ぶというよりは全体を学ぶ内容になっているということですね。
鈴木:サイトリニューアルすれば集客できると考えている人もいまだにいらっしゃいます。しかし、サイトは一体何にどうつながっているのか。こういうところにつながっているからサイトリニューアルが必要、コンテンツが必要、といった話ができるようになるといいですね。そもそもサイトリニューアルをしても、集客しないと人は来ません。
講座で持って帰っていただきたいことは、プロジェクト全体を見失わないようにする視点です。仕事に取り組んでいるうちに、担当者の視野はなぜかどんどん狭くなっていくことが多いんです。俯瞰ができなくなり、個別の手法やその結果にこだわりすぎてしまうわけです。
たとえば、集客するうえでリスティング広告が必要になったとしましょう。結果をよくするために改善するのは大事なことですが、CPAを0.1%だけよくすることに本質的な価値はありません。1円安い野菜を買うために、わざわざ3キロメートル先のスーパーマーケットには行きませんよね。
必要なときに個別の施策に注目し、ほどよくプロジェクトの目的に立ち返る、コンテキストを見つめ直す。これが自在にできるようになると、しっかりした集客プランナーになれるのではと思います。
目的に対してどの手法がいいのかを考えられるようになるために
――講座の流れを簡単に教えていただけますか?
【講座内容】
・インターネット広告の種類と特徴
・ウェブサイトを越えた集客の全体像
・プランニングの例
・集客評価のフレームワーク
鈴木:まず、Webマーケティングを行ううえで必要な用語や手法、ソリューションの体系的なつながりについて学んでいただきます。インターネットはどうグロースしてきたのか、インターネット広告は広告の中でどういう位置づけなのか、それにはどんな種類があるのか。また、広告それぞれは個別の施策でしかないので、プロジェクトの中でどう位置づけられるのかを考えます。
それを前提に集客プランニングをしてみて、実際にどう評価するのかを掴んでいきます。最初の10分ほどは皆さんも知っているであろう話をしますが、普段それらがどのようにつながっているかはあまり意識していないかもしれません。
リスティング広告を知っているだけでは意味がないんですよ。どういう効果があるのか、どんな人に効果があるのかだけでも足りません。どういう場面・時期に使って、どんなKPIを設定したときに役に立つのか。ここまで考えないといけません。
講座の目標は、集客を成功させるための考え方を習得することです。ですが、目的達成のための手法を知っていないと、考えたことを実行するためのアウトプットができません。なので、最初に手法についてきちんと解説するんです。そのあと、全体を俯瞰して戦略や戦術を考え、目的に対してどの手法がいいのかとマッチングさせるわけですね。これは常にプロジェクト全体が見えていないと、なかなかできないことなんです。
フルスクラッチで知識を身につける
――では、鈴木さんが普段の仕事で、そして講座を行うときに大事にしていることを教えてください。
鈴木:私は、昔は自分が正しいと思うことをクライアントに納得してもらうように仕事をしてきました。外から見て青ければ、クライアントがいかに赤だと信じ込んでいても「青です」と言いきっていたんです。
しかし、最近はクライアント満足度を意識するようになりました。講座にはCMOの立場にある方はいらっしゃらないんですが、受講者の上にはほとんど必ずそういった決済者がいるでしょう。その人の満足度を意識しないでゴリ押ししても、事業部としての目標達成ができないことがわかってきたんですよ。「青です、でも赤の部分も少しありますね」といった感じです。
要するに、プランナーやマーケターなど実務者と決済者の間のバランスを取るということです。それは受講者の皆さんにしても同じではないでしょうか。どうして上司は理解してくれないんだと憤ることもあると思います。しかし、たいていは理由があるはずです。その理由を見定めたうえで、事実に基づいて取り組むことが大事です。
数字は最も重要な事実の一つです。誰が見ても2は2なんです。けれど、それが持つ意味は人によって異なります。ですから、その数字、事実にどう向き合うかをきちんと説明できるように、フルスクラッチで知識を身につける必要があります。それが仕事の醍醐味であり、私が大切にしていることです。