今後必要なのは指標の統一
CPS化によって、様々なチャンスが広がっているエリアマーケティング。そのためにも、位置情報をパブリックなものとして、各社で定義が入り混じる指標を統一していく必要がある。
「位置情報のパブリック化には、国と産学の連携が重要です。そして、広告主やマーケター・メディア・広告代理店はもちろん、広く生活者に対して位置情報に関するリテラシーを高めるために、信頼のできる基盤が求められます。マーケットを整えるという視点で考えるならば、位置情報ホルダーそれぞれのプロダクトの強みをアピールしていくことと並行して、足並みを揃えて共通の基盤を築いていくことが重要でしょう。
たとえば第三者配信の強みを生かしてシナラシステムズをエリアマーケティングのプラットフォームの中心に位置づけてデータ検証をまとめて行い、指標の統一をリードする。そうしたデータ基盤の上で、健全に競争できる環境を作っていくことなども期待できます」(朱氏)
さらに、この技術が広がっていく上で、個人情報の扱いの問題は避けて通れない。2017年5月に施行された改正個人情報保護法では位置情報ビジネスの活性化も視野に、個人情報利用のグレーゾーンを撤廃し、事業者側にとっては利活用の範囲がわかりやすくなってきている。
しかし、生活者の側ではいまだ位置情報を含むパーソナルデータのビジネス利用については漠然とした不安感もあるだろう。だからこそ、位置情報については信頼性があり安心して利用できるものとして整備し、積極的に情報開示することでリテラシーを高めていく必要がある。
「デジタル広告におけるリターゲティングやインタレストマッチも、黎明期には生活者にとって不透明感のつきまとう機能でした。ランニングアプリやカーナビなど、位置情報が直接的に生活者に恩恵をもたらすサービスはこれからも増え続け、高精度化によってその恩恵も大きくなるでしょう。
CPS時代の最先端のエリアマーケティングを推進して市場を伸ばし、生活者からの信頼を得るためにも、今を過渡期ととらえ、関係各社が協力して技術の透明性を高めることが重要です」(朱氏)
産官学の連携を含め、位置情報に関わるプレーヤーを広げながら新たな市場を形成していく必要があると繰り返した朱氏。具体的に大学への委託研究などもすでに開始しているという。CPS環境の到来によって、これまで見えていなかったデータが可視化され、きめ細やかで有意義なエリアマーケティング施策が可能になることは確かだ。
次回は、位置情報システムを使って実際に行った調査・配信施策について詳しく紹介する。