大分県の田舎から始まった事業、だからこその展開?
松澤:初めにcotta(コッタ)の事業概要を教えてください。
佐藤氏:2006年に始まったcottaは、親会社のタイセイが始めたお菓子のラッピング資材を個人向けに販売するECサイトです。タイセイは大分県の会社で、当初は法人向けにも小ロットで製菓材料やラッピング資材を販売していました。
コンシューマー向けへと事業の中枢を転換する際にロゴやサイトを作ったものの、商品をサイトに載せるだけでは、何だか地味で…。今でこそ製菓材料やキッチン道具なども扱っていますが、当初はラッピング資材だけだと味気なかったんです。
ならば、お菓子作りのレシピを掲載するサイトにしてみようということで、サイトの方向性をガラリと変更しました。レシピの提供は、普通に検索して発見したブロガーに依頼しましたね。
松澤:なぜそこで自社でコンテンツを内製せず、ブロガーに依頼を?
佐藤氏:当時のオフィスアがコンビニもないような大分県の田舎にありまして。周りにカメラマンもいないし、社内でお菓子作りに精通する者もいませんでした。そこでお菓子作りのトップブロガーに声をかければ、撮影からテキストの作成、レシピの確保、拡散や発信までが一気にできると考えたのです。
これを始めたのが2009年。検索して出てきた2人のパティシエブロガーに声をかけてスタートしました。そのときは、特にコンテンツマーケとかインフルエンサーマーケをしようとか、そういう考えではなかったですね。
サイトPVが増加しても、最初は売り上げにつながらなかった
松澤:ブロガーのレシピを掲載することで、単なるECサイトから脱却して、ECサイト兼メディアに変化させたんですね。2人のブロガーがサイトに関わることで、彼らのブログの読者やファンを獲得することができます。コミュニティマーケティングの観点からすると、これはコミュニティ作りの初期「獲得」の段階ですね。
佐藤氏:弊社のラッピング資材を使ったレシピを、2人に作成してもらいました。レシピの値段もわからなかったので、今考えると相場の3倍くらいを提示していましたね(笑)
彼らには拡散にも寄与してもらいました。彼らのブログに「cottaで私のレシピ掲載中、詳細はcottaへ」と書いてもらうと、予想以上に流入が増えたんです。ただこの段階では、弊社の商品であるラッピング資材の売上げにはつながりませんでした。でも、まずはこの路線で認知を広めていこうと、考えていましたね。
松澤:なるほど、長期的に考えたんですね!
佐藤氏:ええ。低コストでも認知度の向上が叶うので、ブロガーを起用する施策に味をしめまして。その翌年にはさらに10人に声をかけました。初めの2人は自分のお店をもっているプロのパティシエだったので、レシピの値段が高かったんです。
そこで、次の10人は主婦のお菓子ブロガーに声をかけてみました。これが大当たりで!当時は2010年前後でしたが、まだブロガーが企業と仕事すること自体が珍しかったこともあり、皆さん前向きに仕事を受け、期待以上のことをしてくれるんです。高値で依頼しているわけではなく一般的な適正価格ですが、かなりロイヤリティが良いなと思いました。
松澤:当時は、ブログでお金を稼ぐという考え方があまりなかったですし、彼女たちの認証欲求もうまく掻き立てることができたんでしょうね。この後、誰でもレシピを投稿できるように、またサイトのスタイルが変更されていましたが。これにはどういう意図があったんですか?
佐藤氏:レシピの数を増やしたかったというのが大きいです。あと、インフルエンサーがレシピを自由に投稿できる場所が欲しかったこともあります。ブログから発信しても、そのブログ読者のニーズはブログで完結してしまうので、cottaに流入させるのは難しかったんです。
結果的に、ブロガーさん達がこぞって投稿してレシピの人気を競ってくれるようになりました。運用の手間をかけずに、レシピがどんどん集まるようになったんです。