創業から数年でユニコーン企業へと成長
――はじめに、Mobvistaの事業について教えてください。
井料:Mobvistaは、中国発のモバイルアドネットワーク企業です。ビジネスの核はアドネットワーク事業で、SSPやDSPなどアドテクノロジー全般のソリューションを総合的に提供しています。
2013年に創業してから、ヘッドクォーターを中国の広州に置き同国内でのビジネスを広げていったのですが、2015年に中国の新興・ベンチャー企業が多く集まるNEEQ(中小企業株式譲渡システム)に上場して以降、グローバル展開を本格的に開始しました。
2016年には、米国のモバイルアドネットワーク企業であるNativeX(ネイティブX)、ヨーロッパで有名なモバイルゲームデータ分析企業のGameAnalytics(ゲームアナリティクス)を買収し、よりその動きを強めています。そうした結果、2016年度の売上は約320億円だったのですが、その売上の構成は60%以上が海外取引で構成されている状況です。
TUNEやAppsFlyerといった海外の広告効果測定ツール提供企業が発表するアドネットワークランキングでは、ランキング上位に表彰されることも増え、急速に成長を遂げているところです。
アジア・日本での立ち上げ経験が豊富な人物が日本のヘッドに
――日本市場への進出状況はいかがでしょうか。
井料:中国をはじめ海外アプリの日本在庫を持っているので、それを日本のアドネットワーク企業や広告代理店、DSPを通じて提供させていただいています。既に一定のビジネス規模へと成長しています。
また、メディアの方々には、我々のメディア向けSDKを導入いただくことで、広告でのマネタイズをお手伝いさせていただいています。
――井料さんは現在、Mobvistaの日本責任者を務めていらっしゃるとのことですが、これまでのプロフィールをお伺いできますか。
井料:私はもともと産経新聞でキャリアをスタートし、その後、2000年に当時サイト開設準備中だったオールアバウトに参画し、営業部のマネージャー、大阪営業所長を務めました。
2009年に楽天に入社し、前半は広告営業のチームを見ていたのですが、後半は、当時、楽天が英語公用語化を決め、海外進出に取り組んでいたので、私は広告ビジネスの国際化と言うミッションを担うためシンガポールに移りました。そこでアジアを中心に、楽天の広告スキームをグローバルに広げる役割をしておりました。
楽天を退職したのち、2014年に台湾のAI企業、Appier(エイピア)に入社をしました。当時のAppierは全社でも社員が20人から30人と小さな会社でした。私は日本法人の設立からその後の日本での事業成長、大阪オフィスの開設に至るまで、3年間指揮してきました。そして、本年9月に、日本の事業責任を担う立場で、Mobvistaに入社を致しました。
ポテンシャルの高い日本のアプリマーケットに注目
――ここからはMobvista が日本市場へ進出に至った背景と、なぜこのタイミングなのかをお聞かせください。
井料:ビジネスの視点でいえば、まず日本のアプリ市場はグローバルで見てもとても大きな市場です。当然Mobvistaにとっても有力な市場になるので、私たちの強みの一つであるアプリインストール広告を通じて、お役に立ちたいと考えています。
また、日本のアプリディベロッパーの海外進出もお手伝いしたかったのも理由の一つです。特に、中国に関しては、本格的にサポートができる会社がほとんどなかったのではないかと思います。その点、Mobvistaは中国の事情をよく知るアドテクノロジー企業の1つですので、様々な形でサポートできるかなと。また、中国にとどまらず、様々な国へグローバル展開したい企業に対するフォローもできます。
日本市場の参入にあたっては、これまで私たちが日本で持っている在庫、つまり、主に中国系アプリの日本在庫を指しますが、こちらを日本のパートナー企業を通じて供給をすることから始めてきました。その結果、私たちの在庫のパフォーマンスの高さも確認できたため、本格的に日本進出を決定し、今年9月に日本法人を設立しました。
――チームの内訳はどうなっているのでしょうか。
井料:日本担当としては、営業や運用オペレーション、メディアまわりの営業と運用がいます。その他、専任ではないのですがマーケティング、エンジニア、SDKを実装する時の技術サポートなど十数人のメンバーが北京と東京にいます。
世界最大級のアドネットワークと「技術力」が強みに
――次に、御社のサービスやアドネットワークについての特徴を教えていただけますか。
井料:特徴は大きく分けて、「量」と「技術力」の2つです。1つ目の量というのはアドネットワークの在庫数になるのですが、グローバルでは3億DAU(Mobvistaの SDKの入っているアプリを起動しているユーザー)、1日あたり100億imp、リーチ数は20億人にのぼります。アドネットワークとしては、世界最大級となります。日本に関しては、3,000万DAUのSDKが稼働をしています。
技術力に関しては、Mobvistaは実は社員の40%がエンジニアというテクノロジー企業です。中国には、バイドゥ、アリババ、テンセントなど世界的にも有名なデジタル企業があるわけですが、Mobvistaにもこうした会社からやってきた有力なエンジニアたちがいますので、技術の底上げに貢献しています。
また、自社SDK在庫を多く保有していますので、在庫そのものの理解が深く、効果改善、アドフラウド対策にも素早く対応をとることができます。
――どのようにして在庫を理解しているのでしょうか。
井料:3億DAUという膨大な自社SDK在庫、つまり、膨大なビッグデータをもともと持っているわけですが、昨年、GameAnalyticsというヨーロッパのユーザー分析を得意とする企業を買収しまして、データをより深く学習できるようになりました。
具体的には、ユーザーがどこで離脱しているのか、最も課金が多いのはどこかといった情報を理解しています。推定の男女比率や収入レベルなどでユーザーのカテゴリーを分けることができ、ターゲットに対して最適な広告が出せる仕組みになっています。
中国進出に悩む企業を包括的にサポート
――現段階で日本企業に導入している、もしくは中国から日本のユーザー向けに広告を配信しているような事例はありますか。
井料:ありがたいことに、日本法人を開設しまして多くの広告主様、広告代理店様からのお問い合わせを頂き、ゲーム、EC、マンガ、ポータルなど、とても順調なペースで出稿が増えています。従来、欧米系やイスラエル系の在庫は日本でも多く利用されていましたが、中国系アプリの在庫は新たなリーチを増やせるとして好評です。
また、中国企業から日本への広告配信のニーズが非常に高いので、マネタイズを狙うアプリディベロッパーにも評価いただけるプラットフォームだと思います。当社では、中国から日本向けの広告配信を100キャンペーンほどは常時行っています。最近は、中国アプリの日本での広告展開もゲーム系を中心に賑わっています。
とはいえ、まだ世の中的には10本程度のキャンペーン数だと思いますので、当社のメディアSDKを導入いただくことで、新たに収益性の高い広告がメディア側に提供可能であるとともに、マネタイズの面でも貢献できます。
――日本から中国に広告配信をしたいという広告主のニーズにも、御社のサービスが合致しますか。
井料:そうですね。特に中国の場合、アプリ市場が複雑な生態系になっているので市場への理解が欠かせないと思うので、Mobvistaがサポートできる部分も多いと思います。
例えば、日本の場合アプリをダウンロードする場合Androidでは「Google Play」、iOSは「App Store」とわかりやすいですが、中国では「Google Play」はサービスを提供していなくて、ローカルのアプリストアがいくつも存在しています。そうした状況に、「何をすれば良いのかわからない」と感じる企業の方も多いと思うので、そんな時はご相談いただければコンサルティングに近いような形で一緒に取り組めます。中国はもちろん、我々は200以上の国をカバーしています。そのため、真の意味でお客様のグローバルパートナーになれるのではないかと思います。
また、中国や東南アジアといった地域はインフラが整っておらず、ネットワークが安定していないことが多々あります。さらに、動画広告など通信量が多いものを配信するには、スペックが足らなくなるケースも発生するのですが、その点も当社の技術力でカバーが可能です。
セルフサーブでのサービス利用を可能に
――最後に、会社としての今後の展望をお聞かせください。
井料:Mobvistaは歴史は浅いながらも急成長を遂げてきた会社です。その成長の要因は、アドネットワークとして広告主、メディアの双方をマッチングし、また自社SDKに基づく豊富なビッグデータを高いマシンラーニングの技術を生かして、効果改善につなげてきた点にあります。そして中国という厳しい市場を勝ち抜き、そのサービスをグローバルへと広げてきました。
私たちは技術、広告在庫、データのすべてにおいて、日本の皆さまのお役に立てると自負しています。そしてMobvista Japanとしては、世界第2位の広告市場である中国と、世界第3位の広告市場である日本をさらに密接にする架け橋の役割を果たしていきたいです。
今後のプロジェクトとしては、お客様がMobvistaの広告配信を直接扱えるセルフサーブ型のプラットフォームの提供を早ければ年内にも予定しています。担当者様自ら入稿管理から出稿状況、メディア別の効果までご覧いただけるようになるので、より幅広いニーズに対応できるようになると考えています。