メールのCVRはあえて見ないことを選択
前段までで説明したビジョンのもと、安藤氏はメールマーケティングの目的を「ハウスカード会員様との長期的な関係構築のためのコミュニケーション」と説明し、メールはCRMの中のコミュニケーションツールの一つだと言う。
「お客様との関係構築のために、お客様の購買価値を最大限大きくしたいと考えています。商品の価値だけでなく、それ以上の付加価値を提供していきたい。その付加価値はコミュニケーションにおいて生まれるものと捉えています。
当社では、店舗でのコミュニケーションを最もリッチなコミュニケーションと位置付けていて、店舗で商品の価値をお伝えしたり、アフターケア方法をご紹介したりしています。その補完手段の一つとなるのがメール。お買い物の前後で情報提供することで、お買い物の価値を向上させお客様との良好な関係構築ができると考えています」(安藤氏)。
CRMにおけるメールについては、CVRなど短期的な指標はあえて見ず、開封・クリック率を見ることで、「どれぐらい読まれているか」を測っているという。安藤氏はその理由を「CVRばかりを追いかけてしまうと、顧客志向ではなく販売思考のコミュニケーションになってしまうから」だと説明する。
目的に合わせてメッセージ・プラットフォームは使い分ける
では、具体的にどのようなメール配信をしているのか。同社では、どういうコミュニケーションを取りたいのか、目的に沿って「誰に」「何を」を送るのかを整理、最適なセグメント・メッセージ・プラットフォームを選択し、以下のような分類で配信を行っている。
ハウスカード会員向け全配信メール
ストアブランド横断メール。普段利用していないストアブランドも知ってもらう目的で、年数回テーマを決めてそれに即したストアブランドのコンテンツを紹介。
ストアブランド全体配信メール
該当ストアブランドのメール受信希望会員に対し、ストアブランド担当者がブランドやアイテムへの想いを語り、ファン化を図るメール。
ストアブランドセグメントメール
普段の活用用途に応じて最適なコンテンツや商品を紹介する。購買履歴から需要をわけて配信など、個人の利用に即してパーソナライズする。
MAシナリオベースメール
お客様のアクションのタイミングに合わせてメールを配信。
ストアブランドのメール配信は各ストアブランドが担当しており、担当者がメールを作成したら、CRMシステムで企画を立て、デジタルコミュニケーションチームが承認する体制となっている。メールは、内容分析のためテキストだけのメールも極力HTML化している。
「最初はHTMLメールの制作を外注していましたが、コストがかさむ上にディレクションに労力を割くという課題がありました。そのため社内での内製化に取り組み、現在では、HTMLなどの専門知識がなくても簡単にHTMLメールが制作できるHTMLメール専用制作ツール『Lynx』を活用し、すべてHTML化して配信しています」(安藤氏)。
メール配信後は、デジタルコミュニケーションチームが各ストアブランドへ、数値・クリエイティブ両面から結果のフィードバックを行っている。
「このフィードバックがすごく大切です。時間はかかりますが、チームメンバーはあえて手作りでレポートを作成しています。そうすることで、配信結果をしっかり読み込み知見を深めています。ただ、今は試験的に『MailPublisher』のマーケティングレポートも使っていて、どのリンクのクリックが多かったかがヒートマップで見られるクリック分析レポートや、開封率、クリック率などをグラフ化するメール傾向分析レポートを作成して効果検証を行っています」(安藤氏)。
MarkeZineとチーターデジタルが考えるメールマーケティング最前線
広告、LINE、アプリ、SNSなどデジタルチャネルは大体出そろった今こそメールについて考えよう