マスもWebも知り尽くす、小霜氏による1冊
本記事で紹介する書籍は、小霜和也氏による著書『急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。』です。
小霜和也氏は、これまで数々の広告賞を受賞してきた広告クリエイター。コピーライターとしても活躍している同氏は、テレビ広告全盛期の時代から、ネット広告が浸透している現在まで、マスとWebの両方の領域における第一線で活躍しています。
「3B(美人、動物、赤ちゃん)」=最強説が復活?!
デジタル広告周りは、いま、混沌としています。精度の高いターゲットセグメント(絞り込み)技術でマス広告より的確に見込みユーザーにアプローチできる、などといった価値が高まる一方で、いまだに「ネット=無料」的イメージが根強く残り、「数百万円の予算でテレビCM数億円分の効果を出せないかなあ」なんて魔法の杖を夢見る広告主もたくさんいます。そういったカオスを誰かがきちんと整理する必要があると思ったのです。できるだけ急いで!(同書より引用)
上記の引用文の通り、同書では現在デジタル広告において多数存在する問題・課題・疑問を一つひとつ解説し、同氏が考える解決策を提示しています。また同書では、「Web動画」ではなく「WebCM」と呼ぼうと小霜氏は語っています。その意図は、Webの動画もただ見て終わりではなく、見た人に次のアクションを促す「広告」であるべきだという思いから、テレビCMに対してWebのCMという意味で「WebCM」と呼ぶべきだと考えているそうです。
主にクリエイティブの面から、議論が進んでいく同書ですが、中でも特に興味深かったのは、テレビCMとWebCMの関係性について「パブリック」と「プライベート」という区分で考察している点です。
広告が4マス時代の「少品種大量生産」から「多品種少量生産」へと移行した今、テレビCMとWeb広告をどのように使い分けるかについて、両方の特性をどう活用すべきなのかが数字や事例を用いながら、わかりやすく解説されています。マスもWebもデジタルとして地続きで考えようという同氏の考えから、課題解決への糸口を発見できる読者も多いのではないでしょうか?
さらに、アナログ時代のマス広告からWeb広告までを経験している同氏だからこそまとめることができる、業界の動向情報は非常に勉強になりました。デジタルの最前線を追いかけるだけでなく、どういった歴史や経緯があって今の状態になっているのか、どのような課題が残されていて、我々は何に取り組めばよいのかが明確に提示されています。
たとえば、「3B」を活用した広告の手法。3Bとは「Beauty/Beast/Baby(美人/動物/赤ちゃん)のどれかを起用しておけば、広告として観られるという考え方のこと。比較的古い手法なのですが、最近話題になったり拡散されているWeb広告にはこの3Bが絡んでいる傾向があるといいます。ずばり3BがWeb広告において大事な要素なのではないかということです。
マス広告もWeb広告も、同じ目的に向かって共闘することを呼び掛けている同書。マスやWeb、規模の大小に関係なく、広告に少しでも携わる方は必読の“2017年版の教科書”といえる書籍です。