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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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「デジタル行動観察」で実現するUX改善(AD)

ツールのROI目標は利益ベース500%!数字にシビアなIDOM流グロースハックは「定性分析」で爆速に

 A/Bテストでサイト改善を進めてきたが成長が鈍化してきている、というマーケターは少なくない。そこで編集部は、グロースハックの行き詰まりを突破するコツを、中古車買取・販売の「ガリバー」を運営するIDOMでデジタルマーケティングを担当する保坂一慶氏に取材した。保坂氏は「定量データだけでの改善には限界がある。ユーザー単位で行動を観察してユーザーインサイトを深め『いい仮説を立てる』ことが成長のカギ」と語る。

「そのWeb施策は利益にどれだけ貢献したか」を突き詰める

――今日は中古車販売・買取の「ガリバー」を運営しているIDOMでデジタルマーケティングに取り組まれている保坂一慶さんに、「ガリバー」におけるサイト改善によるグロースハック施策についてうかがっていきます。まず、保坂さんの担当業務を教えていただけますか?

保坂:デジタルマーケティングチームで、オウンドメディアのコンバージョン(以下、CV)最適化をミッションとしています。ここでオウンドメディアと呼んでいるのは、ガリバーの中古車買取・販売サイトのことです。

株式会社IDOM マーケティングチーム デジタルマーケティング 保坂一慶氏
株式会社IDOM マーケティングチーム デジタルマーケティング 保坂一慶氏

 中古車買取・販売の事業はオンラインだけでは完結せず、リアル店舗において売上が立つので、Webでの「買取査定の申し込み」や「店舗への問い合わせ」といったCV数はもちろん、Webからリアル店舗に送客して、成約(中古車の売買)につながりどれだけの利益が生まれたかという数字まで、一気通貫でみています。

 あらゆる顧客接点を把握し分析して、最終的な利益が最大になるように、施策に落とし込んで実行しています。

――ガリバーさんほどの大規模サイトとなると、店舗送客につながるCVの種類も回している施策数も相当に多くなりますよね。個々の施策に対する評価は、どのように行っているのでしょうか?

保坂:その点において当社はシンプルで、利益ベースで各CVポイントの成約への貢献度を定点観測しながら、施策の評価をしています。たとえば、各検索ワードからの流入ごとのCVR(問い合わせへの転換率)、成約率やひもづく利益を可視化し、どのLPに着地するとそれら指標がどう変わるのかまで捕捉しています。

 ただ、1~2年の間、ツールを用いたA/Bテストなどによって、定量的なデータに基づいた各CVポイントでのCV最大化に取り組んでいたところ、ほとんどの検索ワード群でCVが上昇したものの、手づまり感が出てきていたんです。

A/Bテストでの改善を突き詰め、ユーザー単位の観察がカギと悟った

――具体的に、どういった部分で行き詰まりを感じ始めたのでしょうか?

保坂:検索ワードのほかにLPやフォームなどを調整しても、効果が思うように上がらなくなっていたのです。

 そこで、個々のページだけではなくてユーザーの行動を考えることにしました。車の売買は通常、何度かサイトを訪れて調査を重ねてからアクションに進むことが多いので、セッションではなくユーザー単位で行動の流れをみてはどうかと思いつきました。一度はログデータを全部出して、ユーザー単位でみてみたりもしたんです。これはおもしろいなという手応えはあったのですが、当然ログをみるのはとても大変で、途中で挫折しました……。

――Google Analyticsのローデータを使って、いちユーザーの行動を見続けるのは厳しいですよね。

保坂:CVする人の特徴を捉えようと、「効いているコンテンツはこれだ」という仮説を立てて定量で調べてもみたのですが、当たり前の結論しか出せませんでした。この先どうやって施策を精緻化していけばいいかわからなかったところに、「デジタル行動観察」ができるユーザグラムのリリースを見て、ピンときました。

 Google Analyticsにも「デジタル行動観察」に似た機能の「ユーザー エクスプローラ」がありますが、ユーザグラムはユーザーの閲覧したページ名をクリックせずに確認できたり、ページごとの滞在時間が秒数レベルでわかったりと、より詳細な情報が得られます。

 見やすくて理解しやすいからスピーディに判断して行動に移せるので、サイト改善もひとりで担当していて時間が足りない私にはありがたいんです。

セッション単位の計測では限界がある

――実際に、ユーザグラムを導入して実施した施策についてうかがえますか?

保坂:中古車を買いたい人向けと売りたい人向けのそれぞれで、シナリオグロースハックに取り組みました。前提として、これまでの経験から、単にサイト遷移の動線を整備するだけでなく、誘導のタイミングも重要だと思っていました。

 たとえば、問い合わせのポップアップも、サイト内で希望の車種を検索して在庫が少なかったときにすぐ出すほうがいいのか、少しスクロールしてもらって5秒後に出すほうがいいのか。ユーザーの視点に立つと、いつ何をどう出すかが重要で、そのタイミングを逃すともう興味がそれてしまうのではないかと。

「プロに無料でクルマを探してもらう」のポップアップ
「プロに無料でクルマを探してもらう」のポップアップ

 ですが、これはセッション単位ではなくユーザー単位でみないとわからないので、これまでやってこなかったことなんです。そこでユーザー単位の行動シナリオをユーザグラムで明らかにして、そのシナリオを最適化していくグロースハックに取り組みました。

ユーザー行動観察で顧客行動をセグメントして最適化

――なるほど。では、中古車を買いたい人向けの施策から教えてください。

保坂:どの会社もそうだと思いますが、「ガリバー」など指名ワードで検索する人はブランドエンゲージメントができており、問い合わせ率や成約率が高いので、その人たちに対するインサイトを深めることで効率的にCVを引き上げられると考えました。

 当社では単にサイト内で検索条件を設定して車を探すだけでなく、買いたい車が明確でない方に向けて営業スタッフが条件に合った車を提案する「相談フォーム」への誘導に注力しています。この相談フォームを利用する人の行動をユーザグラムで複数調べてタイプ分けしました。

 すると、(1)販売のトップページから直接相談フォームに流入する人、(2)ボディタイプのページから流入する人、(3)車種一覧の(ある程度車種が決まっている人向け)ページから流入する人、の3タイプがあるとわかりました。しかも、(2)と(3)の人は相談フォームと直前のページを行き来していました。

3つのパターン
相談フォームに至るまでの3つの流入パターン「トップバナー」「車種で探す」「ボディタイプで探す」

――まず、「ガリバー」で検索して訪問するユーザーの現状を把握したわけですね。

保坂:はい。(1)の販売トップページから流入してフォームでCVする人はよいとして、(2)のボディタイプページから流入する人と、(3)の車種ページから流入する人は、流入元のページとフォームを行き来していた。

 (1)販売のトップページから直接相談フォームに流入する人、(2)のボディタイプページから流入する人と、(3)の車種ページから流入する人は、サイト内行動からみて、それぞれ違ったタイプの人だとわかりました。この人たちを、同じ訴求クリエイティブでフォームに誘導するのは無理があります。(2)と(3)についてはクリエイティブを改善する余地がある、と思い至りました。

 (2)のボディタイプページから流入してフォームと行ったり来たりしているタイプについては、初心者向けコンテンツも閲覧していて特定の車種ページの閲覧は少ない傾向があることから「選び方がわからない」と推測できました。

 そこで、「従来からあるバナーや遷移先フォームのクリエイティブでは、ボディタイプから流入する、希望条件が言語化できていないユーザーには敷居が高く感じられている。それで、フォームに遷移しにくく、フォームに遷移しても入力しにくいのではないか」と仮説を立てました。

 (3)の車種ページから流入してフォームと行き来しているタイプに関しては、表示される在庫数が多い、少ない条件を試してから、フォームを見て、ためらっているようでした。

 これは、すでに希望条件を入力して探しているのに車が見つからない人に対して、「あなたの希望条件で探せる提案サービス」と訴求しているために、自分で検索条件を設定する場合と、ガリバーにおまかせして車を提案してもらう場合の違いがわからないから離脱してしまうのではないか、という仮説に至りました。

 これら仮説をもとにバナー、遷移先フォームでの訴求クリエイティブを新たに作り、まずA/Bテストで定量の結果を得て、次にユーザグラムでフォーム改善がユーザー体験の改善に本当に影響したのかをみていきました。おおむね仮説が正しいという手応えがあったので、定量分析と定性分析を繰り返して、改善の精度を上げているところです。

ユーザー一人ひとりの行動を捉える!デジタル行動観察ツール「ユーザグラム」はこちら

ウェブサイトに訪れる一人ひとりのユーザー行動を追うことで、ユーザーが離脱していたり、つまづいているポイントを把握できるので、成果が上がるUX改善の施策につながります。

成長速度は「いい仮説を立てられるか」にかかっている

――定量分析と定性分析を繰り返す、ということがポイントですね。では、中古車を売りたい人向けの施策をうかがえますか?

保坂:売りたい人は、買いたい人よりもさらに目的意識が明確なので成約率が高い傾向です。売りたい車がある訪問者に対しては100%CVにつなげたいという姿勢で臨んでいます。こちらもトップ、メーカー、車種の3ページでそれぞれ問い合わせフォームへ誘導していますが、CVRを高めるために、「どこのページの」「どのタイミングで」問い合わせへの誘導をかけるべきかが課題でした。

 いったん、ポップアップを含めた誘導のタイミングや訴求の場所などを変えたところ該当ページのCVRは向上したものの、ユーザグラムで確認したら、仮説を裏切るまったく違う解釈が生まれたことも少なくありません。

 たとえば、申し込みフォームを強調したほうがCVは伸びると考えて、人気がある「中古車売却についてのお役立ち情報」のトップで申し込みフォームをまず見せていたところ、ユーザーがフォームに遷移してから迷った末に離脱しているのが行動観察からわかったんです。

 たしかに、申し込みフォームを強調することでCVは増えていたものの、他のページから迷い込んできた人がフォームを見つけてCVしていたに過ぎず、もともとお役立ち情報のページを見たくて来訪した人のCVに貢献したとはいえない実態が明らかになり、申し込みフォームの過剰な露出は総合的にマイナスだと判断しました。このことには定量だけで見ていたら気づけなかったですね。

 ユーザグラムを使う中で、意識するようになったのは、「相関か因果かを見極める」ことなんです。

 仮にA案のデザインで相談CVが伸びても、そこにいたるまでの回遊をみてユーザーインサイトを得ないと、本当にA案のデザインによってCVが増えているのか、それとも見かけ上相関関係があるだけなのか、実態がわからない。

 特に当社は多くのCVポイントがあるので、量的に「相関がある」と思って改善したら、部分最適に陥ってしまい全体としては逆効果ということも起こりえます。

――なるほど。ポイントを定量的に見て改善した結果、顧客体験を損なってしまう懸念があるのですね。

保坂:そうです。なので、当社が目指すCV最大化には、定量分析だけではなく、デジタル行動分析による定性分析を組み合わせてチューニングしていく必要があるのだと改めて思いました。やはりサイト改善は、定量データと定性データを両方見ることで最大限発揮できると感じています。

 ユーザグラムを使って得た仮説が、定量的にも裏付けられたとしても、それは暫定的な正解でしかない。定量分析と定性分析で検証した仮説を実行して、さらなる高みに向かうべきです。ただし、はじめにいい仮説を立てられるとスタートラインから有利になるのは間違いない。仮説の打率を上げるためには、デジタル行動観察で定性的にユーザーを理解することが不可欠だと実感しています。

ベンチマークの「ROI 500%」は余裕だった

――御社は利益最大化という目標が明確だというお話がありましたが、その点でユーザグラム導入に対する社内の評価はいかがですか。

保坂:導入して約半年、3カ月ほどはテストをしていたので実質3カ月ほどですが、現状でユーザグラム導入によって1,500万円程度の利益が上がっています。当社ではツール導入時にそれぞれ目標ROIがあり、私が所属するオウンドメディアのチームでは「ROI 500%」がひとつの目安なのですが、これは十分超えられました。ユーザーの理解を深めたことで、これだけCV向上の余地があったのだと、驚いています。

――ご自身や、社内で起こった変化があれば教えてください。

保坂:私自身、まだまだ問い合わせや成約を増やせるのではと意識が変わりました。また、これまで当社はCVの「量」を追ってきましたが、結果を社内に共有することで、もっと「質」にも注目すべきだという意識が生まれています。

 問い合わせの質によって、それ以降のKPIも変わるので、サイト外のコンタクトセンターや店舗につなげたら終わりではなく、もっとWebの時点で質を高めようと考え始めています。

――最後に、ユーザグラムをさらにどう活用していきたいか、展望などをお聞かせください。

保坂:先ほどお話しした“定量分析と定性分析の繰り返し”を、現在はマイナスを回復する守りの部分と、「今週はこのCVRを上げてみよう」という攻めの部分の両方で走らせています。

 今後の展望としては、ユーザー行動を踏まえたコンテンツ改善をさらに進めるとともに、デジタル行動観察のリマーケティングへの応用を考えています。また、サイト外のコンタクトセンターや店舗などにサイト内のユーザー行動を共有することで、商談や成約を高められるかも探ってみたいですね。

ユーザー一人ひとりの行動を捉える!デジタル行動観察ツール「ユーザグラム」はこちら

ウェブサイトに訪れる一人ひとりのユーザー行動を追うことで、ユーザーが離脱していたり、つまづいているポイントを把握できるので、成果が上がるUX改善の施策につながります。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/07/04 13:00 https://markezine.jp/article/detail/27440