自社に合ったMA選び、必要な3つのポイントとは
マーケティングオートメーション(以下、MA)の重要さが語られる中、自社はどのようなMAを導入するべきかと迷う担当者は多いだろう。
「Marketing Forward 2017 Autumn」の中でMAの選定ポイントについて語るのは、チーターデジタルの文字山武人氏だ。チーターデジタルは、MAプラットフォームであるCCMP(Cross-Channel Marketing Platform)を2014年にリリース。これまでに業界や企業規模を問わず、数多くの企業に導入されている。
営業としてアパレルやコマース、人材系のクライアントを担当する文字山氏は、多くの企業の要望・課題をヒアリングしMAの導入と運用をサポートしている。その経験をもとに、MAを選定するポイントを次のように挙げた。
「まず、データを柔軟に連携・管理できることです。続いて、ワンプラットフォームでユーザーとの様々なコミュニケーションが完結できること。そして限られたリソースの中で、効率的にPDCAを回すことができるかという3つのポイントが重要になります」(文字山氏)
この3つのポイントが、なぜMAの選定に大きく影響するのだろうか。続いて文字山氏は、同社のCCMPを導入した企業の事例を紹介し、選定ポイントについて詳しく説明した。
バラバラだったデータを一元管理し、パーソナライズドメールを配信
ある人材系企業では、求職者や求人企業に関するデータが複数の部署で管理されており、マーケティングに活用できていない課題を抱えていた。そこでデータを一元管理し、求職者ごとに適切なコミュニケーションを行うためにCCMPを導入。具体的には、データを一元管理し、異なるデータテーブル間をCCMP内で連携することにより、成果を上げている。
「CCMPの導入によりメールのパーソナライズ化を実現しました。以前はできていなかった希望する勤務条件や働くエリアなどのセグメントを設定し、各セグメントに合ったメールを配信しました」(文字山氏)
新規でデータを作成したのではなく、元々存在したデータを活用し成果を上げている点にデータの一元管理の重要さが表れている。
メール開封率の低下をパーソナライズドメールで防ぐ
続いては、一斉配信を中心にメールマーケティングに取り組んでいたアパレル企業の事例だ。トップダウンでCRMの強化を進めてきたこの企業は、複数のブランドを展開しECサイトの売り上げの半分がメールマガジン経由という実績がある。にもかかわらず、何が課題だったのだろうか。
「メールの一斉配信にともなう、メール会員の離反が課題でした。メールの配信数に応じて売り上げが上がる一方、会員一人あたりが受信するメールの数が増えたためにメールの開封率が下がり、その結果離反率が高くなっていたのです。離反を防ぐため、パーソナライズドメールでユーザーの興味に合った情報を配信したい、適切な配信頻度の調整を行いたいというニーズからCCMPの導入に至りました」(文字山氏)
細やかなシナリオ設定でECの鉄板・カートシナリオを強化
また、メール以外のチャネルも活用しメッセージのリーチを高めたいというリクエストもあったという。そこでCCMP導入後、3つの施策を行っている。
1つ目の施策は、ランキングメールのパーソナライズ化だ。これまでは、過去1週間にECサイトで購入されたアイテム全体のランキングを送信していた。CCMPの導入後は、過去1ヵ月間を対象にユーザーごとの購入履歴をもとにした関連アイテムのランキングへ変更。配信数の母数を減らしても、売り上げを伸ばすことができた。
2つ目は、細かいシナリオの導入である。具体的には「EC成功の鉄板シナリオ」、カート放棄シナリオの強化だ。これはユーザーがアイテムをカートに入れ、未購入となっている場合に行われるシナリオで、まず未購入状態であることをメールで通知。7日後、購入のないユーザーにのみ再度リマインドを行っている。また、カートに入れたアイテムがセール・値下げの対象となったり、在庫変動が起きたりした場合にもメールは送信されている。
チャネルの多様化と配信頻度の管理も効果あり
そして3つ目は、コミュニケーションチャネルの拡充だ。
「お気に入りアイテムが値下げをした場合はメールでお知らせをしていたのですが、CCMPを導入いただいたことで、さらにLINEも使えるようになりました。メールで反応がなかったユーザーのみ、LINEでメッセージを送るようにしています」(文字山氏)
CCMPはワンプラットフォームで全ての施策を実施できるよう設計されているため、メールもLINEのメッセージも同じ管理画面の中で作成が可能だ。さらにUIのデザインに気が配られていて、チャネルが変わっても作成・運用がしやすいように工夫されている。
また、それぞれの施策の配信データや会員の反応データが全てワンプラットフォームに蓄積・連携されるため、もう1つの課題となっていた配信頻度のコントロールもCCMPでできるようになった。その結果、ユーザーごとにメールの送信数を管理でき、メール会員の離反率は改善している。
文字山氏はCCMPの特徴について「一斉配信・シナリオ配信と複数の配信手法が存在し、チャネルが横断している場合でも、メッセージの出し分けが可能です。また、配信頻度の調整も行えるため、不必要なコミュニケーションを防ぐことで離反防止につなげます」と語り、施策全体の状況が把握できるワンプラットフォームの利点を強調した。
MA導入でメール配信の作業工数を削減した三陽商会
最後に紹介されたのは、アパレルメーカー・三陽商会の事例だ。
シナリオ配信からパーソナライズドメールと、着実なメールマーケティングを実施している同社。また店舗顧客へのサンクスメールを送信するなど、O2Oの施策も行っていた。
その上で「メールマーケティングの成熟にともなう作業工数の複雑さと負荷が、課題だった」と、文字山氏は話す。
たとえば「カート投入後の未購入商品をリマインドするメール」の工数は次の通りだ。まずデータ作成に複数の担当者が付き、システムベンダーにデータ抽出を依頼。そのデータをもとに手動で配信リストを作成し、配信設定を行う。そして表示崩れなどをチェックして、送信する……。このフローを、配信のたびに行っていたのである。
「CCMP導入後は配信リストの作成までが自動化され、マーケター側で完結できる作業となりました。またテンプレートを作成することで、配信設定も簡単になっています。結果、作業コストが下がり、配信頻度も週1回から自動で毎日送れるようになりました」(文字山氏)
導入目的を明確に設定し、メールマーケティングのレベルを上げる
また三陽商会では、お気に入りブランドを登録したユーザーへの新着メールも一新。一斉配信からブランドごとのセグメントを設定し、よりパーソナライズされたコンテンツを配信メッセージに反映できるようにしている。
さらにMA導入によって、作業時間の短縮以外にも大きなメリットが生まれた。
「データ作成と配信作業が自動化されたことで、時間にゆとりが生まれました。これにより戦略立案や企画に、リソースや時間を割けるようになっています」(文字山氏)
3社の成功事例には、それぞれの企業が「MAを導入し何をしたいか」を明確にしていることがうかがえる。また、三陽商会のように既にメールマーケティングを実践している企業でも、MAを導入することでさらに精度の高いコミュニケーション設計が可能になることも証明された。
「多種多様なデータの柔軟な活用、ワンプラットフォームでの施策実行、効率的なPDCAの実行」というMA選定のポイントと合わせて、自社のMA導入の目的もはっきりとさせることが重要である。
リソース不足に対応するチーターデジタルのサポート体制
セッションの終わりには、チーターデジタルのMA導入・運用のサポート体制が紹介された。
デジタルマーケティングが複雑化する中で、マーケターのリソースが足りないという課題を企業は抱えている。さらにMAの導入には、MAベンダーやコンテンツ制作会社・企画立案を担当する代理店など、プレーヤーが複数に渡るケースがあり、作業が煩雑になりかねない。これらに対し、チーターデジタルは1社でのフルサポートでコミュニケーションコストを削減する。
「CCMPは、マーケターサイドで業務が完結できるように設計され、効率よくマーケティング活動を行うことができます。そしてチーターデジタルは、MA導入後のコミュニケーションの戦略立案・データ分析などのコンサルティングサービスをはじめ、クリエイティブの制作・運用代行までも全て一社で提供可能です。こうした幅広いマーケティングサービスで、マーケターのみなさまの業務を一貫してサポートします」(文字山氏)
MAだけでなく、システムは実用してこそ本来の機能を発揮する。導入後のサポート体制も、MA選定時に検討しておきたい大きなポイントといえそうだ。