見えてきた課題、ポイントはさり気なさのバランス
道上:位置情報活用に取り組まれている中で、課題は何か出てきていますか?
松岡:課題は、位置情報データを捉え広告に利用するということに対する人々の嫌悪感をどう取り除いていくかだと思っています。今はアドブロックに関するアプリの普及が進みつつありますが、それと同様にGPSで日常を追尾されていると感じれば気持ち悪いと思われ、Beaconの検知で送るプッシュ通知もコンテンツやタイミングが悪ければ、嫌悪感を抱かれてしまいます。

ともすれば、不快にさせる位置情報マーケティングが成立しかねませんし、どうすれば適切なタイミングで心地良いコミュニケーションができるのかが考えどころだと思います。
舟久保:私もその点は極めて重要だと考えています。企業側として言いたいメッセージを、受け手のことも考えながら、さり気なく訴求するバランスを取っていかなくてはなりません。
また、データが蓄積されていったとして、そこから顕在化することって誰でも想像できるようなことが多いので、活用する側は、得られたデータから新たなアイデアを発想する必要があります。
松岡:位置情報という事実を利用することで、ユーザーの動きやストーリーがより具体的に見えてくると思います。その見えてきた動きやストーリーに対して、どういったコンテンツをOne to Oneで提供していくのか、そこが考えられるようになるとより活用が進歩すると思います。
BeaconやGPSから得られるデータの精度も上がってきて、コストも取り組みやすくなりつつあるので、今が導入のタイミングともいえます。ただ、位置情報データをサービスとして扱っている会社さんに言いたいのですが、サービスの紹介だけでは心は動きません。私たちであれば、飲料メーカーにとっての位置情報の可能性であったり、設計のアイデアであったりを一緒に考えさせていただきたいと思いますね。
2社が考える位置情報のこれから
道上:最後に両社の今後の展望を教えてください。
舟久保:重要なのは広告施策だけではなく、来てもらったお客様に対してどういうサービスを提供するかだと思っています。来店までは、位置情報などを活用しモチベーションを上げますが、来店後どのようにして旅行に行くと決断いただくかが今後必要になります。
その中で私は、アドテクノロジーも活用しながら、店舗スタッフのおもてなしを受けて満足してもらえるコミュニケーションというのを総合的に考えたいです。

松岡:まだトライアルの段階ではありますが、データとしての位置情報は今後も活用が進むと思うので、有効な活用方法を模索したいと思います。
キリンの中にあるオンライン以外のオウンドメディア、たとえば自動販売機や工場、デジタルサイネージなども絡めてデータドリブンな施策を展開したいです。将来的には、各商品のファンからキリンというブランドのファンになっていただけるような位置情報の活用を目指したいと考えています。
