SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Autumn

業界キーパーソンと探る 注目キーワード大研究

信頼による差別化が求められる時代へ──レイ・イナモト氏が語る、ブランド構築のために必要な4つのシフト

 ブランドが語る「意味」や「ストーリー」が溢れかえり、多額の広告費を投じても生活者に響きにくくなった現代。そんな状況下で、ブランドはどうすれば人々に選ばれ、成長できるのでしょうか。本記事では、グローバル・イノベーション・ファームI&COが開催したイベント「I&CO Foresight '25」をレポート。I&COの創業パートナーであり、クリエイティブ・ディレクターのレイ・イナモト氏は、「意味を買う時代」から「信頼を買う時代」へ移行しており、ブランド成長の鍵は「信頼による差別化」にあると提言。そのために必要な4つの思考と行動の転換を示しました。

エレベーターが教える「信頼構築」の難しさ

「ChatGPTが1億人のユーザーを獲得するのに要した時間は、たった5日間でした」

 レイ・イナモト氏は、スクリーンに映し出したグラフを指しながら語った。Netflixが約10年、TwitterやFacebookが約5年、Instagramでさえ約3年を要したのに対し、ChatGPTの普及スピードは文字通り「直線的」だった。

レイ・イナモト氏
レイ・イナモト氏
Creativity誌の「世界で最も影響力のある50人」やForbes誌の「世界の広告業界で最もクリエイティブな25人」に選出され、ニューヨークを拠点に世界で活躍しているクリエイティブ・ディレクター。2016年にビジネスの新開発やブランディングまでを手掛けるグローバル・イノベーション・ファームとして「I&CO(アイ・アンド・コー)」を設立。同社は、ユニクロやアシックスなどのブランドを支援してきた実績を持つ

 次に、イナモト氏は聴衆に問いかけた。

「エレベーターは高層階へ私たちを運んでくれる、魔法のような技術です。しかし、この素晴らしい技術が一般に受け入れられるまでには、どれくらいの時間がかかったでしょうか」(イナモト氏)

 せっかくなので、クイズ形式で考えてみてほしい。

エレベーターが一般的に受け入れられるまでの期間は?

  1. 5ヵ月以内
  2. 25年以内
  3. 50年以上

 この答えは「50年以上」だ。なぜ、これほどまでの年数を要したのか。それは、技術的な完成度と社会的な信頼獲得はまったく別の課題だからだ。

“魔法”のような技術に求められた「安心の可視化」

 エレベーターは、1853年に安全装置が発明された。1854年のニューヨークでは、発明家のエリシャ・オーティスが、エレベーターに乗った状態でロープを切断しても落下しないことを証明するデモンストレーションを行い、安全性を示していた。それから30年経った1880年代に、人間が操作するエレベーターが広まり始めた。

「やはり、人間が操作しない無人のエレベーターは信頼できない。技術的には安全であったものの、この信頼性の問題から利用されなかったのです」(イナモト氏)

 そういった背景から、1900年までに完全無人のエレベーターは利用可能になっていたが普及しなかったと、イナモト氏は説明を続ける。

 転機が訪れたのは、1940年代に起きたエレベーター操作員たちのストライキだった。人々は、エレベーターがないと不便だと実感したのだ。それに加えて、信頼を象徴する『緊急ボタン』と『緊急電話』の機能が追加された。つまり、「外と会話ができる」「安全を確保できる」といった安心感が可視化されたことでようやく信頼が得られ、エレベーターが世の中に普及したのだ。

 このことから、エレベーターのような明確な価値があっても、信頼を得るのはいかに難しいかがうかがえる。また、安全性を開示するストーリーをわかりやすく伝えたとしても、ブランドの価値につながる信頼は得られなかったのだ。

次のページ
アップデートすべき2つの常識

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
業界キーパーソンと探る 注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

竹上 久恵(編集部)(タケガミ ヒサエ)

早稲田大学文化構想学部を卒業後、シニア女性向けに出版・通信販売を行う事業会社に入社。雑誌とWebコンテンツの企画と編集を経験。2024年翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/08/26 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49549

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング