日本でもデジタルの広告費がテレビCMに“並ぶ日”が来る
ここ数年、デジタル広告はマス広告を上回る勢いで伸びています。電通が算出している「2016年 日本の広告費」では、テレビメディア広告費は1兆9,657億円(前年比101.7%)。対して、デジタル広告費は1兆3,100億円(前年比113.0%)となっています。
さらに今後、デジタル広告費は著しく増加し、世界で見ると今年2018年には、国内においても2020年までにはテレビメディア広告費を上回ると予想されています。そうした動きに連動して、広告主やマーケター、広告代理店を取り巻く状況も変化してきています。
特に、TVCMなどの“枠”という考え方はデジタル広告では希薄になってきており、FacebookやLINEなどのSNSを含めたデジタル広告の多くは広告主自身での出稿や運用が可能なため、メディアバイイング機能としての広告代理店の役割の変化は最も顕著だといえるでしょう。
果たして広告・マーケティング業界は、どのように変化し、今後はどうなっていくのでしょうか。
今回は、これまでの連載の総括として、当社Supershipの動きも含めた今後のデジタルを中心とした広告業界全体の変化と展望についてお話ししたいと思います。
デジタル広告におけるデータ活用はいよいよ本流に
2017年10月、LINEが提供する「LINE Ads Platform」(以下LAP)におけるパートナー認定制度「Marketing Partner Program」のなかで、Supershipがデータパートナーとしての認定「Data Provider Partner」を受けたことを発表させていただきました。これにより、LAPでSupershipが保有するDMPを活用した広告配信が可能になりました。
これまでDMPというキーワードは注目されてはいたものの、プライベートDMPの構築には「時間と予算が非常にかかる」「実際導入しても活用の幅が限定的になりがち」などの課題があり、パブリックDMPの場合には「データの精度が十分でない」「スマホアプリの利用時間が増えているにも関わらず、cookieを中心としたデータで構成されており活用範囲がWebに限定される」など、マーケティング活用の中心として広く浸透していくには様々なハードルがありました。
しかし、直近では巨大なデータホルダーが自社データのビジネス活用を積極的に推進しています。我々もデータホルダーの1社として、今回ご紹介したようなLINEという膨大な広告配信面を持つメディアと連携を開始しました。このような、データを活用した広告配信や分析・効果検証を推進する動きの活発化が、いよいよ本格的に進むのでは、と感じています。
CPAの呪縛からの解放、必要なのはプラットフォーマーとの共創
アドテクノロジー、データテクノロジーの進化に伴って、それを活用するマーケター側も意識の変革に迫られてきています。
現状では、デジタル広告配信において、マーケターは主にCPAと向き合っているケースが多いと思います。もちろん、CPAを見ること自体は間違ってはいません。しかし、CPAを追い求め過度なリターゲティングを繰り返すと、AppleのSafari 11.0以降で標準装備されたITP(Intelligent Tracking Prevention)のように、プラットフォーマー側のトラッキングを防止する機能に阻まれる可能性は高くなるでしょう。
デジタル広告がTVCMに迫る規模になってくるにつれて、必然的に、デジタル広告が世の中に与える影響は大きくなっていきます。その中で必要なのは、「健全で正しいデジタル広告の在り方とはなにか」を業界全体の課題として考え、このタイミングでプラットフォーマーと良い関係を築いていくことなのです。
例えば、リターゲティングはユーザーの刈り取りを行うには最適な手法です。しかし、中長期的にユーザーとのエンゲージメントを高めるのが目的ならば、ユーザーにとって親和性が高く心地良い広告配信が必要となります。
そのためには、年齢や性別や購買情報のみならず、時間や位置情報など、あらゆるデータを活用してユーザーと向き合うことが必須ですし、そのためにはプラットフォーマーとの共創関係は欠かせないでしょう。