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乗降客数世界一「新宿駅」の歩行者をお客様に デジタルサイネージにGIF動画を使う小田急百貨店の試み

2018/03/13 10:00

マスメディアではリーチしにくいスマホ時代の生活者にもメッセージを届けやすいデジタルサイネージ。小田急百貨店・新宿店では、夏の催事のプロモーションに、デジタルサイネージによるGIF動画を採用した。独自のクリエイティブが可能なGIF動画への期待、新宿という特別な立地におけるデジタルサイネージの可能性について、プロモーションの仕掛人に話をうかがった。

「デジタルサイネージにGIF動画」の狙い

 小田急百貨店・新宿店では、2017年の夏に食料品フロアの催事「てみやげフェア」のプロモーションとして、自社保有するデジタルサイネージでGIF動画を配信した。

 GIF動画とは、複数のGIF画像を連続再生し動画として表現するものだ。その特徴は、1秒から3秒の短尺・クリックレス再生・自動ループにある。ファイル容量が軽く、ブラウザや通信環境によらない再生が可能なため、スマートフォンの普及にともない、手軽で親しみやすい動画として活用が広がっている。

 デジタルサイネージでのGIF動画配信について、株式会社小田急百貨店 新宿店 販売促進部の安田大介氏は「GIF動画ならではの面白さと、プロモーション商材の良さをシンプルに伝えられる表現が魅力的だった」と語る。

 JRだけでも1日平均約77万人の乗客が利用する新宿駅 。その西口に位置する小田急百貨店の新宿店は、店内外で合計16面のデジタルサイネージを管理・運営する。膨大な数の人が接触する掲載面なわけだが、通路を足早に通り過ぎる人の目を引くことは簡単ではない。デジタルサイネージで注目を集めるには、「短尺で・ぱっと見てわかる」表現に特化できるGIF動画が最適と判断したのだ。

株式会社小田急百貨店 販売促進部宣伝担当 統括マネジャー 安田大介氏、同マネジャー 原口進氏
左から、株式会社小田急百貨店 販売促進部宣伝担当 統括マネジャー 安田大介氏、同マネジャー 原口進氏

 さらに同部の原口進氏は、同社のデジタルサイネージの立ち位置を次のように語る。

 「小田急百貨店の販売促進部は、担当店舗のプロモーション全般を行っています。サイトやSNSといったデジタルチャネルから、折り込みチラシ・ダイレクトメール・カタログまでと、幅広いチャネルでお客様との接点を作る。そのうえで、デジタルサイネージには来店へつながるリーセンシー効果を狙っているのです」(原口氏)

せわしない歩行者に購買・来店意向を喚起するために

 JRと複数の私鉄の駅が集まる新宿は、駅構内や電車内などに多数のデジタルサイネージが導入されている。日頃から「デジタルサイネージの良さを最も活用できる方法は何か?」を考えていた原口氏は、シネマグラフ(静止画像の一部が動く、GIFアニメーションのひとつ)に注目。

 日本最大級のGIF動画プラットフォーム「GIFMAGAZINE」を運営し、企業向けのGIF動画キャンペーンを手がける株式会社GIFMAGAZINEに企画・制作を依頼した。

 「小売業のプロモーションは、各テナントで取り扱う商品の良さを正しくお客様へ伝えることが原則です。動画にも様々な表現手法がありますが、デフォルメや過剰な演出は避けなくてはいけません。

 さらにサイネージですので、いそがしい歩行者の目に留まり、おいしそうだな・買ってみようかなという感情を喚起する必要があります。『小田急で手みやげを買おう』という行動までつなげることが、今回のゴールでした」(安田氏)

 そこでGIFMAGAZINEは、GIF動画の手法としてシネマグラフとフォトジェニックなクリエイティブを想定したコマ撮りの2つを提案。そのうち、より面白さ・不思議さを表現できるシネマグラフ手法での制作となった。

ワンメッセージ、シズル感、動きにこだわる

 制作したGIF動画は、合計4種類。とろりとした黒蜜が注がれるくずきり、ぷるぷる揺れるゼリーといった、涼しさ・みずみずしさを表現したクリエイティブだ。商品の特徴を押さえた短尺の動画がループするため、視聴にストレスを感じさせず、商品の魅力がシンプルに伝わるようになっている。

via GIFMAGAZINE

via GIFMAGAZINE

 それでは制作過程を見ていこう。

 GIFMAGAZINEでは、コンテンツ制作の際に「誰に・どんなメッセージを・どの経路で・どの媒体で・どのクリエイティブで伝えるか」という軸を作る。

 まずはキャンペーン目的を「夏の手みやげの購入」・「小田急百貨店への来店意向の向上」という認知・関心の獲得に設定し、ターゲットペルソナを作成した。ペルソナは、夫の実家へ帰省する妻、ホームパーティのホスト、家族サービスをしたい父、上京して初めての帰省を予定している若い男性と、百貨店の幅広い客層を意識している。

 そして安田氏らは「涼しさ・夏らしさ・冷たい」などのキーワードをもとに、制作担当者と一緒に店内を回り、動画で取り上げる商品を探したという。

 「動画では、揺れる動きを演出したかった。そこでキーワードもしっかりと伝えることができる、フルーツゼリーとくずきりを選びました。涼しさや冷たさがうまく表現できるように、ドライアイスの使い方やシズル感にこだわりましたね。

 またサイネージは90インチと大きいものもあり、スマートフォンやPCと見え方が変わります。大きな画面で見たときに、正しくイメージした動きをしているかを何度もチェックしました」(原口氏)

 特徴的なのは、動画の構成である。GIF動画は、ワンメッセージで制作することが基本だ。さらにサイネージの設置ポイントを歩き、何秒の尺で作成することが最適かも調べて制作に入った。サイネージの設置環境に応じた、最適な表現・尺があるということがうかがえる。

GIF動画の視聴で購入意向がアップ

 今回のキャンペーンでは、デジタルサイネージの効果を測るための市場調査を行った。店内外で合計354名に対面アンケートを実施。回答者は店外サイネージを視聴した人、視聴していない人、食料品売り場で購入をしたお客様と3つに分け、GIF動画による購入意向・来店動機の影響を測った。

 「サイネージでGIF動画を見た覚えがあると答えたお客様が、店内では約17%、店外では約25%と高い結果になりました。そのうち、ほとんどの方が“GIF動画を見たことで、夏の手みやげを購入したいと思った”と答えていらっしゃいます。また店外でGIF動画を見られた約75%の方に来店意欲が生まれていますので、影響度の高さがわかりました」(原口氏)

 GIF動画の印象についても調査したところ、店内外問わずサイネージで見たという回答者の約60%が、「おいしそう」「涼しそう」と答えている。

デジタルサイネージ×GIF動画は若い世代にもリーチ

 総じて、小田急百貨店では想定していた以上の効果があったと評価。催事そのものも好評で、売り場からは「新しい取り組みで顧客接点を広げてくれた」とポジティブなフィードバックがあったという。さらに安田氏は、幅広い年代層がGIF動画を見たことにも注目した。店外でサイネージを見たと答えた42%が10代から30代となっている。

 「今は、広告や情報があふれかえる時代。特に若い人ほど、広告を避けてしまうという傾向があるのではないかと思うのです。調査結果から、GIF動画は、広告が届きにくい若年層にサイネージを意識してもらうきっかけになる可能性があると感じます。GIF動画はアイデア勝負。その工夫次第で、大きな効果が得られそうです」(安田氏)

 今回制作したGIF動画は、小田急百貨店のサイトやSNS、GIFMAGAZINEの運営メディアでも展開した。素材として扱いやすいGIF動画の特徴をいかし、媒体を横断したプロモーションにも利用できたと安田氏は振り返った。

新宿駅らしさを追求したデジタルサイネージの活用を考えたい

 デジタルサイネージ×GIF動画に手応えを感じている小田急百貨店。今後の展開について聞くと、「メディアとしてのデジタルサイネージの可能性を見つけていきたい」とし、サイネージで見て検索するというスマホとの親和性にも注目している。

 「新宿店はギネスにも認定されている世界一の乗降客数を持つ新宿駅構内にあります。この立地のアドバンテージをいかし、より多くの歩行者を小田急百貨店のお客様にすることが課題です。デジタルサイネージはそのトリガーとなることがわかりましたので、今後も活用方法を検討していきます」(安田氏)

 また、駅周辺にも設置されているという公共性の高さも挙げ、通勤・通学といったルーティーン活動の中に存在するサイネージのあり方についても意欲的だ。

 「サイネージを毎日決まった時間に見ているという行動が考えられますよね。その中で、この広告はメリットがあるなと思われるために何が必要か。それは、面白さや感動・癒やしなどがキーワードなのかもしれません。一瞬で面白さが伝わるGIF動画で、実現できたらなと思います」(原口氏)

 これまでも小田急百貨店では、企業の動画コンテンツの配信や配給会社と共同して映画のプロモーションを行うなど、常にデジタルサイネージへの注目度を上げる施策を行っている。海外からの旅行者も多い新宿。地域を代表する百貨店として、積極的にデジタルサイネージ×GIF動画の取り組みを進める姿勢だ。

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