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生態系を作ることが重要、AbemaTVが語るサービス成長とTwitter徹底活用

 2016年4月の開局から、今年で2周年を迎えるAbemaTV。アプリのインストール数も順調に伸びており、『72時間ホンネテレビ』や若い世代に人気の恋愛リアリティショーをオリジナルコンテンツとして手がけるなど、話題に事欠かない。オンデマンド配信ではなくリニア放送のAbemaTVが重視しているのは、視聴者のリアルタイムな反応。ゆえにTwitterとの親和性が高く、TwitterはAbemaTVの盛り上がりに重要な存在だ。サイバーエージェントとTwitter Japanの担当者4名が、AbemaTVのTwitter活用術を振り返る。

AbemaTVのTwitter活用方針と事例

方針

Twitterの中で「AbemaTVの情報を知り、その情報を流通させ視聴につなげる」というサイクルを生み出す。

取り組み
  • 番組の認知から視聴、視聴者が番組に関するコメントやツイートをするまでの全体のコミュニケーションを設計。
  • Twitter内での番組への反応や会話を細かくチェック。空気感や熱気に合わせたコンテンツ作り。
  • Twitter利用者の空気感を反映したハッシュタグクリエイティブを開発し、リアルタイムに発信。
  • Twitterを使った緊急対応でメディアの質とサービスへの期待値を生む

     AbemaTVのTwitter活用を語る時、ある2つの大きな出来事が挙げられる。ひとつは、開局直後に起きた熊本地震(2016年4月)における臨時編成。そして今後もインターネットテレビの成功事例として語られていくであろう『72時間ホンネテレビ』(2017年11月)である。

     熊本地震が発生した4月14日、AbemaTVはTwitterのプロモトレンドに当日配信していたバラエティ番組に関するハッシュタグを掲載していた。しかし地震が起きるやいなや、それを「熊本県の地震情報を配信しています」という内容のハッシュタグへ切り替える。情報が錯綜する中、テレビを見られない環境にいる利用者へニュース(Abema News)を届けたのだ。

     さらに該当のハッシュタグを使ったツイートは番組へ届けられ、Twitterからの声という形で番組作りに生かされた。Twitterを用いて、番組と視聴者・Twitter利用者のインタラクティブな環境を即座に作りあげたわけだ。

     AbemaTVのマーケティングを統括するサイバーエージェントの宣伝本部長・野村智寿氏は「メディアとしてあるべきスタンスを取ったにすぎない」と語るが、これらの対応はAbemaTVがこだわるメディアの質やインターネットテレビの柔軟性が伝わる出来事となった。

    写真右:株式会社サイバーエージェント 宣伝本部 宣伝部 長野村智寿氏、写真左:Twitter Japan株式会社 クライアントパートナー斎藤有人氏
    写真右:株式会社サイバーエージェント 宣伝本部 宣伝部長 野村智寿氏
    写真左:Twitter Japan株式会社 クライアントパートナー 斎藤有人氏

     Twitter Japanの斎藤有人氏も「開局時にAbemaTVへ向けられていた、どのようなサービスなのだろうかという視線やネットサービスが持つ先入観を一気に払拭し、期待と認知につながった対応だった」と振り返る。

    使ったハッシュタグは3日間で70個以上。『72時間ホンネテレビ』

     新たなスタートをきった香取慎吾、草彅剛、稲垣吾郎の3人が、72時間の生配信に挑み、Twitterでトレンドの世界一の獲得を目指した『72時間ホンネテレビ』。その情報解禁は、まずTwitterで行われた。

     AbemaTVの新規視聴獲得をメインとしたマーケティングを担当するサイバーエージェント宣伝本部の古田新氏は、情報解禁直後の盛り上がりを見て「今までにないバズが起きるのではないかとワクワクしました」と話す。古田氏は配信当日、Twitter対応にあたった。

    写真右:株式会社サイバーエージェント 宣伝本部 メディア戦略室 古田新氏、写真左:Twitter Japan株式会社 クライアントアカウントマネージャー 髙井陽介氏
    写真右:株式会社サイバーエージェント 宣伝本部 メディア戦略室 古田新氏
    写真左:Twitter Japan株式会社 クライアントアカウントマネージャー 髙井陽介氏

     AbemaTVは、1日の編成が決められているリニア放送型のメディアだ。3日間にわたって生中継を届けた『72時間ホンネテレビ』は、Twitter上でライブ配信「Twitterライブ」や「Periscope(ペリスコープ)」を活用し、サイマル放送(同時並行放送)を実施。Twitter上で動画が見られる環境を整え、リアルタイムにタイムラインを沸かした。

     さらに「柔軟なTwitter運用の体制が素晴らしかった」と語るのは、斎藤氏と同じくサイバーエージェントを担当するTwitter Japanの高井陽介氏。

     「たとえば、公式のハッシュタグを『 #72時間ホンネテレビ 』と設定していたのですが、利用者は『 #ホンネテレビ 』を使いはじめました。そのことに気づくと、AbemaTV側はすぐにツイート内のハッシュタグを #ホンネテレビ へ変更したのです。このようにトレンドや利用者の会話の変容をチェックしながら、3日間で合計70個のハッシュタグを使い分けましたね」(高井氏)

     

     下が利用者のハッシュタグ動向をチェックした後のツイート。 #ホンネテレビ が追加されている。

     生中継中、Twitterの国内トレンドにはホンネテレビの関連キーワードが107個挙がり、AbemaTVが目標としていた世界トレンドの第1位も獲得。また #ホンネテレビ が、2017年テレビカテゴリーで最も使われたハッシュタグランキング1位となった(Twitter発表)。

    情報流通を設計し、Twitterに生態系を作る

     以上の出来事から、AbemaTV成長の背景にTwitterが大きく影響していることは明白だろう。しかしマーケティングの目的は「AbemaTVの事業を伸ばし、良さを伝え、届けたいタイミングで届けたい人へ適切なコミュニケーションを取ること」であり、Twitterだけでなくオウンドメディアや各種SNS、テレビCMなどのチャネルも活用して「情報流通のグランドデザインを設計している」と野村氏は話す。

     その上でTwitterが持つ情報流通の速度・コミュニティ要素・利用者属性と、リニア放送というリアルタイム性があるAbemaTVは親和性が高い。プロダクト設計もTwitterの導線を意識し、動画の一部分を含めたツイートができる機能を開発・実装している。

    ※格闘チャンネルより

     「Twitterは利用者の会話から空気や温度が生まれ、それが感じられるプラットフォーム。AbemaTVを見ている人の熱量も可視化することができるんです。そのようなところが、両サービスの相性の良さだなと思います」(野村氏)

     Twitterを起点に番組を認知した人々が興味を持ち、AbemaTVを視聴する。視聴者のツイートが増えれば関連ワードはトレンドの上位にあがり、他の利用者も反応し新たな視聴が発生する。この「初めてコンテンツのことを知り、視聴し、面白いからシェアをする、ツイートする」というサイクルの設計を、野村氏は「Twitterに生態系を作る」と表現する。

    Twitterのあらゆるところに、AbemaTVの接点を作る

     Twitterに生態系を作るためには、利用者のインサイトや空気感を把握し、自然とその流れに乗るツイートや発信が求められる。その大きな起点のひとつが、AbemaTVの公式アカウントだ。

     公式アカウントはフォロワー数100万人を超えるメインアカウント(@AbemaTV)のほか、人気ジャンルのアニメ・麻雀・将棋それぞれのアカウントと合計4つ。さらにTwitterの自動返信機能を用いて番組情報のリマインドを行う@AbemaTV_plusも運用する。

     目指すものは、人々にとってフォローする価値があるアカウントであること。

     「いかに起爆剤となる拡散性の高いツイートができるか? を念頭に、言葉選びや画像クリエイティブなど丁寧に考えています。特にハッシュタグを何にするか? ということに、一番時間をかけていますね。

     たとえば将棋コンテンツに関するツイートに #藤井五段 というハッシュタグを使いましたが、 #藤井5段 を使う人のほうが多かったんです(運用当時)。仮説と違った場合は、すぐさま切り替えます。難しいのは、“今このタイミングだから面白い言い回し”があること。少しでもタイミングが遅かったら、反応が薄くなるということもありますから」(古田氏)

     前述した『72時間ホンネテレビ』では「 #フィナーレは72曲ライブ 」「 #森くんと再会 」など、番組配信中に70個以上のハッシュタグを発信している。番組終了後に使った「 #みんなありがとう 」というハッシュタグは、3日間の中継を受けて感動や感謝というムーブメントが起きている時だからこそ、利用者にハマったハッシュタグだった。

     その瞬間を見逃さず、適切な発信を行うポイントはどこにあるのだろうか。

     「普段からAbemaTVをエゴサーチし、Twitter上で利用者がどのような反応をしているかを宣伝部だけでなく番組制作サイドも把握しています。Twitterは自分で見て使い、感じないと、その空気感が分からないプラットフォーム。それを理解していくと、イメージする情報流通のグランドデザインに合わせたTwitterのアイデアが生まれやすくなります」(野村氏)

     野村氏が語る「情報流通のグランドデザイン」には、Twitter内だけでも様々な起点がある。

     番組情報がオンラインメディアなどでニュースとなり、Twitterで話題となるサイクルもそのひとつ。ゆえにPR・広報から発信されるコンテンツ情報や伝えるタイミング、伝え方も重視する。さらに番組の出演者がツイートしやすい環境を整え、TwitterのあらゆるところからAbemaTVに接することができるという状況を作り出している。すると広告は、生み出された情報流通の動きをブーストする燃料のような役割を持つようになる。

     コンテンツやサービスが面白いものであるということ、公式アカウントの運用・会話が生まれやすいベース作り、そして広告とすべてが組み合わさることでAbemaTVが理想とするTwitterの生態系は作られているのだ。

    認知から定着化・コンテンツ回遊率の向上へシフト

     リアルタイムでめまぐるしく反応が変わるTwitterでのプロモーション。その成果基準はどのように見ているのだろうか。

     「番組、ジャンルごとに視聴数などの目標値があります。それをもとにTwitterで到達したいリーチ目標数値を決め、エンゲージ、視聴転換率、新規獲得数などの目標をモニタリングしています。狙い通りの流れを作れたか、細かく振り返りも行っています」(古田氏)

     Twitterは新規利用者の獲得、認知、既存利用者のリテンションを向上させるなど、様々な目的の使い方ができる。AbemaTVも開局からの2年間、サービスの認知とアプリのインストール促進から、コンテンツを軸としたプロモーションへと変化をしてきた。そして現在は、利用者をいかに定着させていくかのフェーズに入っているという。

     利用者ごとのコンテンツ回遊度を上げ、1人あたりの新規セッションの割合を増やし、継続的にAbemaTVのブランド・面白さを伝えていくことを目的としたTwitterの運用も考えられている。

    TwitterをAbemaTVの番組表にしたい

     公式アカウントからのツイートやハッシュタグのみならず、関連するトレンドの動きも細かく把握し、Twitterを使い尽くしているAbemaTV。今後のTwitter活用の目標として、野村氏は情報流通の規模を挙げた。

     「一般的に情報流通において、拡散や会話が生まれるまでにリードタイムがあります。この時間を短縮し、Twitterのアクティブユーザーが一斉に情報へ触れられるようなインパクトのあるコミュニケーション開発や手法を考え、実現していきたいですね」(野村氏)

     このリクエストに対し斎藤氏らは、「Twitterのリアルタイム性を生かし多くの利用者から関心を集められるPeriscopeや、スポーツ・エンターテイメント・ニュースなど利用者が興味のあるコンテンツにブランドを関連付けてアピールすることのできるインストリーム動画広告など、Twitterにはまだまだ多くのソリューションがある。これからも様々な提案を通じて、AbemaTVの取り組みをサポートしていきたい」と話した。公式アカウントのフォロワー数の増加も、引き続き支援していく構えだ。

     「AbemaTVもTwitterも、利用者は何か面白いことがないかな? という気持ちで接しています。TwitterがAbemaTVの番組表のようになり、相乗効果をより発揮できる関係性をこれからも築いていきたいなと考えています」(古田氏)

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    マチコマキ(マチコマキ)

    広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

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    MarkeZine(マーケジン)
    2018/03/30 11:00 https://markezine.jp/article/detail/28031