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運用型広告時代の要!トレーディングデスク最前線(AD)

「クリエイティブ初動で運用コンサル同席がマスト」 小霜和也氏が考えるWebCMの企画作りに大切なこと

 「デジタルクリエイティブ」を提唱して話題を呼び、3月に開催されたMarkeZine Dayでも登壇し来場者を大いにわかせた、業界を代表するクリエイティブディレクター小霜和也氏。小霜氏が企画作りのチームビルディングに運用コンサルを含めるべきだと考えているのはなぜなのか。

まず運用コンサルをアサインした

 本記事では小霜氏が北海道テレビ放送(以下、HTB)からの依頼で手がけたWebCMをベストプラクティスとして、Webの特性をふまえた成果につながる動画広告作りのポイントを学んでいきたい。

 同WebCMの目的は、『ハナタレナックス』という2003年から続いているバラエティ番組の宣伝だ。この番組はHTBが独自制作しており、北海道出身の人気演劇ユニット「TEAM NACS(チーム・ナックス)」のメンバー5人が出演している。

 2月4日にテレビ朝日系列で全国放送された4回目の特番『ハナタレナックスEX~美食めぐりの旅・小樽編~』の番宣のために、小霜氏にWebCMの制作依頼が舞い込んだ。

左から、ノープロブレム合同会社/小霜オフィス クリエイティブディレクター/コピーライター 小霜和也氏、株式会社エスワンオーインタラクティブ 代表取締役社長 高瀬大輔氏
左から、ノープロブレム合同会社/小霜オフィス クリエイティブディレクター/コピーライター 小霜和也氏、株式会社エスワンオーインタラクティブ 代表取締役社長 高瀬大輔氏

 「HTB様から直接僕のところにオファーがあって手がけることになりました。番宣の配信をネットでやりたいけれど、WebCMの制作を初めて手がけるということでご相談いただきました」(小霜氏)

 番組宣伝ということもあって限られた予算ながら、 オファーを快諾した小霜氏がまず声をかけたのがエスワンオーインタラクティブ社だった。小霜氏はなぜ、企画の初動段階からトレーディングデスクに声をかけたのだろうか。

 「どういうターゲットに向けてCMを届けるかという企画の段階から、WebCMの配信で実績ある機動的な『運用コンサル』パートナーが必要だと考えました。クリエイターの思い描く『ターゲット』に、広告配信上の実現性があるかどうかが重要だからです。

 以前エスワンオーインタラクティブさんと一緒にやって頼りになるパートナーだという感触を持っていたので、HTBにも紹介して最初から打ち合わせに同席してもらいました」(小霜氏)

「クリエイティブ発」ではなく「ターゲット発」が正解

 企画段階からチームとして加わるオファーを受けた高瀬氏は語る。 

 「ネットで配信するWebCMの場合、マスメディア向けコマーシャルフィルムをWeb用にアレンジすることが多いです。実質上、運用を担うトレーディングデスクとしては、マス向けの動画が作られ、Web用に調整されたものをどう運用するか、という具合に工程が進んでからオファーをいただくことが一般的。ですので、クリエイティブの企画段階に関わることは、動画広告の場合、当たり前の事ではありません。

 それも小霜さんのような著名なクリエイティブディレクターから声をかけていただき、最初の企画段階からチームに加えていただくことは非常に貴重な機会をいただくことになりました」(高瀬氏)

 小霜氏も、ネット向けのWebCMはまだまだテレビCMの流用が主流と話す。

 「テレビCMをそのままWeb展開するのでは話にならない。最低でもWeb用にチューニングすべき。 僕からすれば、テレビ向けとWeb向けはメディアの視聴態度がまったく違うので『クリエイティブ発』ではなくて『ターゲット発』でなければ、成果は望めないと考えています」(小霜氏)

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運用を前提としたディレクションのポイント

 マスメディアであるテレビ放送用のCMであれば「One to Many」を意識した幅広い世代へ向けたアプローチが考えられる。一方、YouTubeをはじめとする動画配信プラットフォームやSNSでの動画配信の場合は「One to One」を意識したコミュニケーションが求められる。

 小霜氏をCDに、エスワンオーインタラクティブのスタッフが加わったチームが検討したのがセグメントの切り方と、セグメントごとのWebCMの方向性だ。

 「これはわりとすんなりと決まりましたね。番組に出演している『TEAM NACS』は、大泉洋さんや安田顕さんなどそれぞれのファンがいますから、一人ひとりのファンにフォーカスした全5パターン。

 加えて、特番は小樽を舞台にした美食めぐりの旅という内容なので、旅モノ番組が好きなターゲットへ向けて1パターン。そして元々の『ハナタレナックス』ファンへ1パターン。それぞれ30秒と15秒の長尺・短尺で合計14パターン用意することにしました」(小霜氏)

※番組ファン向けは15秒と6秒

 「Webでの運用を前提とした、小霜さんならではのディレクションでした。まず、それぞれターゲット設定が明快。そして、30秒・15秒・6秒と長短のバージョンがあるので配信プラットフォームと時間帯に合わせた配信は勿論のこと、各バージョンの反応をみながら配信内容を細かく調整し易い環境があったこともポジティブでした。」(高瀬氏)

「クライアントファースト」に立ち返る

 「このプロジェクトにはいくつか『制約』がありました。予算が限られていて、使える素材が撮影済みの映像しかない。新たにロケに行ったりセットを組んだりして撮影するほうが、理想的なCM作りができるのは当然です。

 でも予算や素材が潤沢に確保できないのであれば、どんな方法を使えばベストなCM作りができるかを僕は考えます。与件を活かしきってベストを目指すのがクリエイターでしょう。今回は番組素材が使えるので、それを編集し分けることでむしろ各ターゲットに緻密に響くものができるのではと」(小霜氏)

 広告の世界ではよく「作品主義」か「クライアントファースト」かが議論になるけど僕は断然「クライアントファースト」、と前置きして小霜氏は続ける。 

 「クライアントはクリアしたい課題があるからこそ広告や宣伝に予算を投じるわけです。であるならば、広告作りでその『最適解』を出して課題解消を目指したい。それが僕のスタンスです。僕自身は『制約』ではなく『新しい挑戦』だと感じて楽しかったですね」(小霜氏)

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来るべきクリエイティブディレクター像

 小霜氏ならではの、パートナーとなるトレーディングデスクの役割とミッションを十分理解したうえでのWebCMディレクションは、エスワンオーインタラクティブにとってどんな機会になったのだろうか。

 

 「ネット上の広告配信と言うと、クリエイティブを膨大に自動生成して、配信結果から最適化していくケースも当たり前にあります。それはそれで、ネットならではのアプローチですし一つの手段として素晴らしいと思っています。一方でメディアの特性やターゲットセグメントを考え抜いてクリエイティブを作る、という場面がもっとあって良いと感じます。当たり前のことと感じると思いますが、そうでないケースも散見されます。

 そんな中、最初からメディアの特性や広告運用を念頭に置いてWebCMをディレクションする小霜さんと一緒に取り組む機会をいただき、トレーディングデスクとしてどのようなバリューが出しうるのかを学ぶ、貴重な経験をさせていただきました」(高瀬氏)

 現状では、運用に配慮したWebCM作りはレアケースだ。「運用ありき」のクリエイティブが浸透していくために、クリエイティブディレクションに関わる業界関係者に対して、小霜氏は次のように提案する。

 「最初から社内外の『運用のプロ』と相談しながらコンテンツ作りを進めるべきではないでしょうか。Webならではのターゲットセグメントをディスカッションせずに、いきなりコンテンツを作り始めてはいけない。作ってから、運用方針を決めるのでは手遅れです。ターゲットに合ったクリエイティブが存在しないのに妥協するのはちぐはぐなやり方です。 

 僕のようなCD的立場の人間が、運用側とクリエイティブ側とを行ったり来たりしながらコンテンツ作りをディレクションしていく必要があります。マスとWebを一続きにするデジタルクリエイティブの実現のためにも、これからのCDにはそんな役割も求められていくと思います」(小霜氏)

「運用ありき」を貫き、異例の完全視聴率を実現

 『ハナタレナックスEX~美食めぐりの旅・小樽編~』の番宣用WebCMはどんな成果を生んだのだろうか。

 「WebCMの場合、テレビCMの『視聴率』とは異なり、途中でスキップされることなく最後まで視聴された『完全視聴率』を指標として使うのですが、平均で約40%、最高50%超という驚異的な結果となりました。

 通常、完全視聴率ですと10~20%が一般的と言われますから驚異的な成果です。私たち運用側でも、配信を手がける前に一定の仮説のもと完全視聴率を予測しますが、予測を上回る結果でした」(高瀬氏)

 動画の配信にあたってはプラットフォームの特性や時間帯をふまえつつ、絶えず視聴傾向を分析しながらリアルタイムできめ細かく調整するのが運用コンサルティング会社の腕の見せどころだ。

 「視聴者数が伸びているバージョンの配信を強めたり、少ないものを止めてみたりときめ細かな調整を行います。当たり前のことを当たり前に、かつクリエイティブ側と運用側が密接にクロスオーバーしながらプロモーションが実行されていきました。クライアントであるHTB様のご理解もあり、非常に進めやすかったと感じています」(高瀬氏)

 今回の取り組みは「デジタルクリエイティブ」を提唱・実践する小霜氏にとっても手ごたえのある事例となったようだ。

 「マス広告がデジタルへとシフトしていくとよく言われますけど、マスとWebは対立する関係にはありません。マスならではの特性、Webならではの特性をふまえて、両者を一続きの存在として捉えていくのがデジタルクリエイティブの考え方です。

 いまクライアントは、Webでのブランディングに課題を感じているはずです。課題があるのであれば『最適解』を目指すのは私たちクリエイターの使命で、WebCMにおいて企画段階から運用コンサルをチームに組み込むことはその前提だと考えています」

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この記事の著者

浦野 孝嗣(ウラノ コウジ)

 2002年からフリーランス。得意分野は経済全般のほかIT、金融、企業の経営戦略、CSRなど。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/05/08 10:00 https://markezine.jp/article/detail/28145