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第3回 通信販売広告表示の「はてな?」その3

今回はネットで通信販売や、ネットオークションへの出品などで行うときなどに、どうしても気になる「通信販売広告表示」についての疑問について、お答えしていきます(その1、その2)。

【質問】
 個人でネットショップを経営していますが、個人情報の悪用が増える昨今、住所、電話番号などの掲載に抵抗があります。どうしても表示の必要があるのでしょうか?

【回答】

 ネットショップでの商品の販売が、「特定商取引に関する法律」(以下「特商法」)上の「通信販売」に該当し、かつ、当該ネットショップの経営者が、特商法上の「販売業者」に該当する場合は、通信販売広告表示事項(特商法第11条)を広告に記載する必要があり、この通信販売広告表示事項には、販売事業の氏名、住所、電話番号が含まれることについては、「第3回 通信販売広告表示の『はてな?』その1」において既に説明しました。今回は、通信販売広告表示事項の広告への表示の省略について説明します。

 広告の態様は千差万別で、広告スペースも様々なことから、全ての広告に通信販売広告表示事項の全部を表示させることは実態にそぐわないことがあります。そこで、特商法は、広告に、消費者が請求した場合に遅滞なく通信販売広告表示事項を開示する旨を記載するなどの一定の条件を満たす場合は、広告への通信販売広告表示事項の表示を省略することを認めています(特商法第11条第1項ただし書、「特定商取引に関する法律施行規則」(以下「規則」)第10条)。省略できる通信販売広告表示事項の一覧は以下のとおりです。

表 示 事 項 販売価格・送料その他消費者の負担する金額
(法11条1項1号、規則8条1項4号)
全部表示したとき 全部表示しないとき
代金等の支払時期
(法11条1項2号)
前払いの場合 省略できない 省略できる
後払いの場合 省略できる 省略できる
代金等の支払方法
(法11条1項2号)
  省略できる 省略できる
商品の引渡時期等
(法11条1項3号)
遅滞なく行う場合 省略できる 省略できる
それ以外 省略できない 省略できる
返品特約
(法11条1項4号)
  省略できる 省略できる
販売業者の氏名、住所、電話番号
(規則8条1項1号)
  省略できる 省略できる
法人であって情報処理組織を使用する
広告の場合に法人においては
代表者名または責任者名
(規則8条1項2号)
  省略できる 省略できる
商品の隠れた瑕疵に関する
販売業者の責任
(規則8条1項5号)
負う 省略できる 省略できる
負わない 省略できない 省略できる

 上記のとおり、販売価格・送料その他消費者の負担する金額の全部を表示した場合とその金額の全部を表示しない場合とで、省略できる事項に差異がありますが、いずれの場合においても、販売業者の氏名、住所、電話番号を省略することは可能です。

 ネットショップのように電子情報処理組織(インターネットのようにコンピュータと情報通信回線を介して電子データをやりとりするもの)を使用する方法により広告を行う場合において、通信販売広告表示事項の表示の省略が認められるためには、当該広告に、消費者が請求した場合に遅滞なく、以下の3つの方法のいずれかの方法により、通信販売広告表示事項の一部を提供する旨を表示する必要があります(規則10条3項)。

  1. 販売業者等が使用するコンピュータと消費者のコンピュータとを接続する情報通信回線を通じて送信し、消費者(受信者)の使用するコンピュータのファイルに記録する方法
  2. 販売業者等の使用するコンピュータに備えられたファイルに記録された書面に記載すべき事項を情報通信回線を通じて消費者の閲覧に供し、その消費者の使用するコンピュータのファイルに該当事項を記録する方法
  3. 消費者の使用するコンピュータに書面を記載すべき事項を記録するファイルが備えられていない場合に、販売業者等の使用するコンピュータに記録された専ら当該消費者の用に供するファイルに記載された当該事項を情報通信回線を通じてその消費者の閲覧に供する方法

 非常に分かりにくい言葉が羅列されていますが、1の具体例は電子メールです。2の具体例は、販売業者等が用意するサーバに書面に記載すべき事項をブラウザで閲覧できるテキスト形式、HTML形式、PDFファイルなどの形式で記録しておき、ブラウザやPDFファイルの閲覧ソフトによって閲覧を可能とする方法です。3は、ファイルを記録する機能の付いていない携帯電話を想定したものであり、2との違いは、特定の消費者しかアクセスできないこと、消費者がデータをダウンロードする必要がないことの2点です。

 確かに、上記1または3の方法を使用すれば、不特定多数の者が販売業者の氏名、住所、電話番号を閲覧することを回避することができます。しかし、通信販売広告表示事項の表示の省略は、広告の態様は千差万別で、広告スペースも様々なことから、全ての広告に通信販売広告表示事項の全部を表示させることは実態にそぐわない面があることに鑑みて認められたものです。そのため、消費者からの請求があれば通信販売広告表示事項を開示する必要があり、匿名で通信販売を行うことが認められているわけではありません。この点については十分ご留意いただく必要があります。

 本稿中、意見にわたる部分は、筆者個人の見解を示すにとどまり、筆者の所属する法律事務所の意見を表明するものではありません。また、具体的事案により本稿中とは異なる結果が生じる場合があります。

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この記事の著者

笹倉 興基(ササクラ コウキ)

弁護士(東京弁護士会所属)。1995年早稲田大学法学部卒業。1999年弁護士登録。黒田法律事務所において、特許権、商標権及び著作権といった知的財産権に関する案件、ベンチャー企業の支援を担当している。また、M&A・事業再生・リストラクチャリングや民事再生などにも注力しており、ビジネス法務の分野において第一線で活躍中。ネットビジネスに関連する法律に精通している。
www.kuroda-law.gr.jp

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2006/10/20 12:00 https://markezine.jp/article/detail/292

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