SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

Webマーケティングにおける「UXデザイン」を考える

【さあ、UXデザインを始めよう】Webマーケターが取るべきファーストステップとは?

価値ある体験を提供するためのWebサイトの運営

 最後に、コミュニケーション方針に基づいた個別施策を実施するにあたって、Webサイトやランディングページをどのように設計、実装、運用していくかについても触れておきます。

WebマーケティングとUI/UX

 UXデザインという考え方は、スマートフォンの普及とともに広がっていきました。従来のハードウェアUIに比べると比較的制約が少ないタッチディスプレイと、どこにでも持ち出せることで製品やアプリの外にある様々な事象とつながりやすくなったことが要因だと思われます。「UI/UX」という言葉を目にすることが増えたのは、こういった背景によるところも大きいでしょう。UI/UXデザイナーたちは、ここまでで述べてきたUXデザインを遂行し、提供したい体験を定義したうえで、その体験を提供する製品やサービスそのものを実体化させることができます。

 一方で、Webマーケティングの領域でのUXデザインを「UI/UX」とまとめてしまうと、「媒体での広告表現」「自社サイトのビジュアルデザイン」など、具体化しなければならない対象の一部のみに注力するような印象となってしまいます

 こうしたユーザーの目に触れる表現の部分は、もちろん非常に重要な要素ではありますが、Webマーケティングの範囲とはいえ、提供したい体験は、雑誌やCM、交通広告などの媒体や、メールでの問い合わせ対応、実店舗での対面コミュニケーションなどディスプレイの外の実世界までを含んだものであるはずです

 ビジュアル表現やコピーライティングなども含めたUIデザイン主導でコミュニケーションを検討するのではなく、提供したい体験価値や、一貫したコミュニケーションの方針をよりどころにして、UIへの具体化を検討するようにしましょう。

 UXデザインの対象のうち、「UIデザインが関与する部分がどこか」を明確化することが重要
UXデザインの対象のうち、「UIデザインが関与する部分がどこか」を明確化することが重要

UXとUIをつなぐ情報アーキテクチャ

 また、提供したいUXをUIに落とし込む前に、情報アーキテクチャ(IA)の設計を忘れないようにしましょう。Web上には情報が溢れており、ユーザーが目的の情報にたどり着くまでの道のりが遠い状態です。IAとは、多すぎる情報を効率的に蓄積・活用し、ユーザーが見つけやすく理解しやすくするための技術です。

 UXデザインを具体化するためには、UIデザインのベースとなる「IA設計」の強度が重要
UXデザインを具体化するためには、UIデザインのベースとなる「IA設計」の強度が重要

 IAもUXデザイン同様に複雑で難解な側面を持つのですが、Webマーケティングにおいては、Webサイトでのディレクトリ・ファイル構成や、ページ上のテキスト情報の構造(親子・兄弟関係など)、サイト内での用語の統一などが特に重要になってきます。

 個別の施策に注力してランディングページやキャンペーンページを作成していると、Webサイト全体で見たときには、似たような情報が若干異なる言い回しで複数ページに散りばめられていたり、カテゴリーによってディレクトリ・ファイル構造がバラバラでどこに何があるかわからなかったりといった状態に陥りがちです。

 構造化された優良なコンテンツを多数持つことはSEO観点で有効であること、逆に不必要に重複するコンテンツが存在することがリスクとなることはご存知の通りです。また構造化・体系化されたディレクトリルールは、アクセスログ解析をしやすいという効果もあります。IA設計は、コミュニケーションの一貫性を維持し、施策の最適化や施策間の連携を推進するうえで非常に有用なプロセスとなります

まとめ

 どうしてもアカデミックになりがちなUXデザイン。興味や問題意識はあっても、業務に取り入れるための理解の難しさから躊躇している方も多いのではないでしょうか。

 前回、今回とご紹介してきたように、Webマーケターのみなさんが普段意識しているユーザーへの心配りを大切にしていれば、専門知識やノウハウがなくても、できる範囲で、わかるところからUXデザインの考え方や手法を業務で活用できます。その際には、「属人性に頼らず組織的に継続できる取り組みにする」「できるだけ客観データに基づいてユーザーを想定する」というポイントを忘れないようにしてください。

【参考文献】安藤 昌也 (2016) 『UXデザインの教科書』 丸善出版
【図版作成】星川 萌美(株式会社コンセント)

前編:【まずは基本から】Webマーケティングに必要な「UXデザイン」ってなんだ?

次回、「おいしい大麦研究所」立ち上げプロジェクトから学ぶ“UXデザイン”実践法は、11月5日公開予定です。
UXデザインを取り入れたサイト制作の事例として、食品メーカー・はくばくとコンセントが共同で進めたオウンドメディア立ち上げプロジェクトについて紹介します。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
Webマーケティングにおける「UXデザイン」を考える連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

加川 大志郎(カガワ ダイシロウ)

株式会社コンセント プロデューサー/ディレクター
グローバル企業や官公庁などの大規模Webサイト群の構築・運営に関するコンサルティング、プロジェクト推進に従事。事業計画におけるWeb領域の役割定義から、日常のオペレーション業務の効率化までをトータルでコーディネートできる守備範囲の広さが強み。
Twitter:@d4r

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2018/10/31 09:00 https://markezine.jp/article/detail/29378

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング