「ダイエット効果」で注目を集めた大麦
MarkeZine編集部(以下、MZ):Webマーケティングにおける「UXデザイン」の本質を考える本連載。今回は実践編ということで、「おいしい大麦研究所」サイト立ち上げプロジェクトについてお伺いしたいと思います。はじめに、今回のプロジェクト全体の狙いを教えていただけますか?
輿石:今回のプロジェクトは、一過性の売り上げ拡大ではなく、大麦摂取の習慣化を促進しながら、はくばくの商品を長期的にユーザーに選んでもらうための土壌を作ることを目的としていました。「おいしい大麦研究所」サイトは、その目的を達成するためのコミュニケーション施策として考えたものです。
「大麦」と聞くとビールの原材料と想起される方も多いと思いますが、我々の商品は食用の大麦です。一般的に麦ごはんとして食べられている大麦がそうです。「麦ごはん=昔の主食」という印象があるかもしれませんが、2012年頃から大麦の健康・ダイエット効果が注目されるようになり、2016年に当社商品「もち麦ごはん」がマスメディアに取り上げられた際には、同商品の販売数が倍増しました。
そうしたなか、大麦の効果・効能といった情報に目を向けてみると、昔のものも含め多くのデータはあるものの、一般の人には難しい論文だったり、薬機法に触れかねないような不確かなものだったり、適切な情報が得づらい状態でした。そこで情報を整理して、生活者の方に信頼できる情報をまとめてお伝えする必要があると考え、自分たちで大麦の情報サイトを立ち上げることにしました。大麦の効果・効能をはじめ、有益な情報をわかりやすくお伝えすることで、持続性のある消費とともに、「大麦と言えば、はくばく」という純粋想起にもつなげたいという考えがありました。
メディアシンキングという概念との出合い
MZ:プロジェクトは、どのように進めていったのでしょうか?
輿石:当社は元々が原材料メーカーに近いスタンスの会社だったために、最終的に加工された商品を消費する方の視点に合わせて開発するという機会が少なかった。そのせいか、社内に「生活者視点」が足りていないという課題がありました。プロジェクトを進めるうえでは、まずこの課題を解決する必要があると考えていました。
私自身が以前参加したワークショップで、「メディアシンキング」という考え方に出合い、「これだ!」と思ったことをきっかけに、そのワークショップを主催していたコンセントさんに相談。一緒に研修も兼ねたワークショップを社内で開催することにしました。生活者視点が必要な一方でメーカー視点も不可欠なため、その間をつなぐ存在が必要だったんです。
MZ:メディアシンキングとは、どのような考え方ですか?
大崎:「情報・商品の送り手(事業者)と、受け手(生活者)の間の視点をもとう」という、コンセントで開発した思考原則のことです。
生活者視点をもつことはもちろん重要ですが、それだけではなく、事業者側として何を大切にしたいのかという視点も忘れてはいけません。「メディア」つまり「情報の媒介者」というスタンスに立つことで、企業内で眠っている深層的な価値と顧客視点の価値の接点から、これまで気がつかなかった商品の魅力に気づくことができ、生活者の心に響くコンテンツが生まれます。