マーケ経験者なし、広告販促費は大手の10分の1でスタート
シェア獲得に向け、激しい競争が繰り広げられているヘアケア市場。各メーカー、“ノンシリコン”や“オーガニック”など様々な付加価値を訴求しながらプロモーションを行っている。そんな中、“ボタニカルライフスタイルブランド”という独自の世界観を築き急成長を遂げたのが、株式会社I-neが展開する「BOTANIST(ボタニスト)」だ。
EC発でスタートしたBOTANISTは、InstagramをはじめとするSNSやネット上で話題になり、店舗での販路も拡大。昨年7月には、初のフラッグシップショップ「BOTANIST Tokyo」を表参道にオープンさせるなど、ヘアケアブランドの枠に止まらない展開を見せている。
だが、BOTANISTをリリースした当時、株式会社I-neの社員数は50人程度。マーケティング専門の部署はなく、社長・幹部・ブランディング事業部・EC事業部を主体に全部署で連携し、マーケティング全般を行っていた。広告販促費も大手メーカーの10分の1以下でのスタートだったというから驚きだ。
一体どのようにして、BOTANISTの急成長は実現されたのか。株式会社I-ne 取締役 ブランディングマーケティング本部長 今井氏と同部署でSNSディレクターを務める横田氏が、MarkeZine Day 2018 Autumnで、その成長過程とデジタルを起点にしたマーケティング施策を紹介した。
市場動向と世の中のトレンドに基づいた商品戦略
BOTANISTをリリースした2015年当時、ヘアケア市場は“ノンシリコン合戦”で飽和状態にあった。そのため店頭に並んでいるのは、アテンションを重視した派手なパッケージの商品が多かった。一方、EC市場には女性用ヘアケアブランドで優位なブランドはなく、これをチャンスと捉えた。
また2015年は、ちょうどSNSの主流がInstagramへ移行し始めたタイミングでもある。こうした市場動向や世の中のトレンドを踏まえて、以下の商品戦略を打ち出した。
・シンプルなデザインにし、パッケージデザインで他商品と差別化
・品質にとことんこだわり、価格優位性の壁を超える
・EC、デジタルを最大限駆使した、SNS時代の消費者に刺さるプロモーション
・Instagramという新しいプラットフォームで映えるクリエイティブ表現
・ノンシリコン以外の新しいカテゴリーの創出
ちなみに、“ボタニカル”というキーワードは、アパレル業界からインスパイアされたものだ。海外では、“スローライフ思考”“ナチュラル思考”が一般化していたことにもインスピレーションを得たという。そして社内に、そういったライフスタイルを好むスタッフが多いことが、ブランド設計に強く影響した。
市場動向とトレンドを抑えた商品戦略により誕生したBOTANISTは発売後、その年の楽天年間総合売上でランキング1位を獲得。今年は、オフラインのシェアで2、3位を獲得するなど、オフラインオンライン共に広く受け入れられている。また、中国で昨年対比約350%増、台湾でシェア3位など、海外での成長も著しい。
今井氏は、発売当初の苦労を「発売当初は、無名な商品なので『売れるかわからない』と言われ、なかなか店頭に並べてもらえませんでした」と振り返る。だが、一部店舗で商品を販売すると、想像を超える売れ行きで一時欠品の状態になったそうだ。そうした情報がバイヤーの間に広まり、また営業部の一からの開拓もあり、オフラインでの販路も拡大していった。
セッションの序盤でBOTANISTの軌跡を振り返った後、デジタルマーケティングの具体的な施策詳細の共有へ入った。