努力で人気者になれるTikTok
MarkeZine編集部(以下、MZ):TikTokがここまで流行った要因についてどのようにお考えですか。
高橋:2つの理由があるかと思います。まず、今まで写真で「かわいい」を表現する方法は研究が進み、多くのアプリがリリースされてきました。動画でも、1・2年前から「かわいい」を演出できるようになり、ユーザーのニーズに応えられるようになってきました。TikTokもその流れにうまく乗っています。
高橋:もうひとつの大きな要因が「音楽に合わせ手軽にオリジナルの動画を作れること」です。表情を変えるだけでもユニークなコンテンツが作れる。他のSNSでは、投稿はしたいけど何をやったらいいかよくわからないという多くのユーザーは、「人気コンテンツを真似するだけ」になっていました。TikTokでは、そこまで斬新なアイデアのない人でもオリジナルの動画を投稿でき、人気者になれるチャンスがあるのです。天才じゃなくても「撮り方の努力」で人気者になれるというわけですね。
AIによるレコメンドで好みに合った動画が
MZ:自分では動画の投稿を行わず、コンテンツを見ることを楽しむユーザーも少なくないでしょう。そういうユーザーでもTikTokに夢中になる理由とは?
アハト:ユーザーが見たいと思うコンテンツをレコメンドするアルゴリズムが優れています。どういったコンテンツを好んで視聴しているかをAIが分析し、最適化されたものが流れてくるようになっています。
また、TikTokは曲との相性もよく、音楽を楽しむという要素もあります。まるでミュージックビデオを流し見している感覚で使っている方も多いでしょう。
高橋:自分が作った音源をいろんな人に使ってもらえるところも大きく、動画投稿よりも楽曲の投稿に専念しているユーザーも少なくありません。様々な才能を活かせる場にもなっています。
ユーザー層の広がり
MZ:TikTokは若年層から火が着いたと言われていますが、現在のユーザー層はどのようになっていますか。
高橋: ユーザーの年齢層が徐々に上がってきていると思います。先ほどの話にもあった通り、自分では投稿せずにコンテンツを見るだけのために使っているユーザーも増えていっている印象です。
MZ:小学生の間でも人気だと聞きました。
高橋:私の親戚に小学生の子がいるのですが、その子の周りでもTikTokは普通に使われているようです。朝起きてTikTokを見て学校に行き、夜寝る前にまたTikTokを開くという、まさに生活の一部になっているそうです。
MZ:まるでテレビのような感覚ですね。
高橋:動画が話題になってクラスのアイドルのようになっている子もいますが、やはり自分で投稿をするのは一部の子だけで、見て楽しんでいるのが大半のようです。
スマホネイティブを意識した投稿ハードルの低さ
MZ:TikTokは投稿のしやすさもブームの一因だったのでしょうか。
アハト:そうですね。YouTubeの場合はPCでの編集を前提としていますが、TikTokはアプリ内で編集が完結でき、すぐに投稿できるようになっています。スマホネイティブ世代には入りやすいですね。しかも、機能のアップデートもかなりの頻度で行われています。
また、投稿のハードルを下げる音源も重要な要素です。どこでどうアクションをすればいいかわかる音楽が人気あります。その通りやるだけで動画ができますので。「言いなり選手権」という人気シリーズがあります。この楽曲・ネタ自体、ユーザーが生み出したものですが、「右! 左! こっち見てウィンク」と、まさに曲の言いなりにするだけで良いわけです。
MZ:音源には他にどのような特徴がありますか。
高橋:女性ボーカルでは優しい声質のものと高めでコミカルなものの2つが人気あります。声質が高めなものが流行っているのは、2倍速動画の文化の影響が大きいと思います。
TikTokで今人気のあるジャンル
MZ:今人気のあるコンテンツにはどのような傾向があるのでしょうか。
アハト:大きく「ダンス」、「トランジション」、「エフェクト遊び」などのコンテンツトレンドとなっています。「トランジション」というのは、スマホの回転などとあわせて一瞬で映像を切り替える演出のことです。
アハト:TikTokには手振りに合わせて映像加工できる「スタンプ」という機能があり、スタンプやフィルターを使ったものが「エフェクト遊び」です。「#チャレンジ」という企業キャンペーンでは、オリジナルのスタンプや音源をクライアントが提供し、それを使ってユーザーが動画を投稿しています。
今後のトレンドとマーケターが意識しておくべきこと
MZ:今後人気が出てくるであろうコンテンツ、注目の動向などについて教えてください。
高橋:ハロウィンやバレンタインのときはイベント感のあるスタンプやフィルターを使った投稿が一気に増えましたし、今後もイベントごとに盛り上がるでしょう。春休み時期などの企業のキャンペーン展開も楽しみなところです。
アハト:最近は、AKB48のメンバーやPerfumeなどの人気アーティストが続々とTikTokをはじめたことが話題になっています。芸能人、特に音楽系の方の配信は増えていくでしょう。中国では今、音楽チャートトップ10のうち6つがTikTokで流行っている曲という状態です。そうした背景からアーティストやレーベルが続々と参入してきています。TikTokナイズドされた音楽が今後トレンドになっていくと思います。
MZ:現役TikTokインフルエンサー目線で見て、マーケターが意識しておくべきこと、今から準備しておいたほうがいいことについて、メッセージをお願いします。
アハト:TikTokは音源の影響力の非常に強いメディアなので、スタンプと連動したキャッチーな曲作りを考えていく必要があるでしょう。
高橋:今の若者は広告慣れしています。YouTubeをはじめ、「広告は飛ばす」という文化が身についています。ですので、著名タレントを使うことでかえって「これは広告だな」と無視されてしまう可能性もあります。トータルでの世界観作りを意識して、マスでの知名度にこだわらずTikTokユーザーになじみのある人を起用していくのがポイントではないでしょうか。