アドビの考える「理想のエクスペリエンス」とは
――2016年以降、アドビは「エクスペリエンス」をテーマに掲げています。まずは、御社が言うところの「エクスペリエンス」を紐解きたいのですが、どのような顧客体験の創造を実現したいのか、ビジョンをお聞かせいただけますか?
スティーブ:私たちのビジョンは、個々の顧客をよく理解して、適切な文脈で優れた顧客体験を提供することです。一言でいうと、Face to Faceのようなエクスぺリエンスの実現です。
今、私はシドニーからテレビ会議を通してMarkeZine編集部さんにお会いしています。顔を見てお話できるので、これはほとんどFace to Faceのインタビューと変わりありません。私は自分の発した言葉に対する反応をリアルタイムで受けて、話を適応させていくことができます。ですが、Eメールをはじめデジタル環境では、相手の反応をつかんで適切に返していくのは難しいことです。
スマートフォンやモバイル端末が一般化し、IoT搭載の製品も増え、コンビニのATMなど街中のマシンの多くがオンラインにつながっています。こうした環境の中で、生活者はほとんど常にデジタルにコネクトしています。だからこそ、私たちはデジタル上でも、まるでFace to Faceで対応しているようなエクスペリエンスを実現することを理想としています。それを実現できるアドビのソリューションを通して、クライアント企業とその顧客を豊かな体験で結びつけることを目指しているのです。
「デジタルだから」というエクスキューズは無くなる
――Adobe Summit 2018(同年3月、米ラスベガスにて開催)では、アドビ製品群の連携が本格的なフェーズに入っていることが見え、本当にエンドユーザー視点で一貫したエクスペリエンスを提供できる可能性が感じられました。アドビのテクノロジーによって、近い未来、私たちの生活はどう変化していくのでしょうか?
スティーブ:Summitで伝えたかったことを、感じていただけて嬉しいです。記事を読まれている日本の方も、また私もそうですが、もはやデジタルテクノロジーは生活の一部となり、欠かせない要素になっています。デジタル上のエクスペリエンスは、これからも増すばかりでしょう。
そうすると、デジタルだからといったエクスキューズを抜きにして、ただ人間として「生活を豊かにしたい」「居心地をよくしたい」というニーズが、デジタル上にも適応されて当然だと言えます。
企業側の視点に転ずると、「Adobe Experience Cloud」を通して、エンドユーザーの期待するエクスペリエンスを提供することができたら、企業のブランドに対するロイヤルティは高まるはずです。
――なるほど。そこでブランド側が重視すべきことは、なんでしょうか?
スティーブ:2つあります。ひとつは、前述のようなエクスペリエンスの実現に欠かせないパーソナライズです。それぞれの生活を豊かにするためには、テクノロジーを効果的に使ってパーソナルなニーズを捉えて、働きかける必要があります。
もうひとつは、「自分が主導権を持っている」とユーザーが思えることです。個人情報の提供を含めてブランドに関与しても不安がなく、メリットを享受できるという信頼関係の構築が大事です。