具体的な打ち手
今回の連載をはじめる際に、私の主宰する「BtoB/IT広報勉強会」(現在800名以上が登録)に参加している会員の方々に、企業のマーケティング、広報活動の一環として「エバンジェリスト・タレント社員」が実施していることついて聞いてみたところ、「SNSでの発信」「登壇」「イベント・セミナーの主催」「コンソーシアム・業界団体活動」「メディアリレーションズ」と様々な活動をしていることがわかりました。そこで、ここではエバンジェリストとして実施する具体的な打ち手について整理したいと思います。
(1)SNS、blogによる発信
SNS、blog、企業のオウンドメディアなどを使って発信します。言わずもがなですが、旧来のメディアとは異なり、好きな内容、タイミングで発信することが可能になるため自由度は高まりますが、一方でペースやルールについてある程度設計しておかないといつのまにかフェードアウトしたり、内容がブレてしまうのは要注意。
また、企業の発信と異なり、あくまでも個人目線での感想や見解を発信することで、「読み手目線」に寄り添うことも大事です。テーマも自社サービスや社内のことだけでなく、業界トレンドやテクノロジーについてなど、幅広い件に言及するのが望ましいですが、コンテンツについては後述します。
(2)登壇
業界団体やコミュニティ、メディアなどが開催する勉強会、イベントやカンファレンスに登壇します。最近は、SNSの浸透もあって、小中規模のコミュニティでも簡単にイベントを開催し集客することができるようなりましたし、最近はベンチャー企業が自社カンファレンスを主宰することも増えてきました。
ターゲットとしてマッチ度の高い人が集まる場に赴き、積極的に発信するのは、伝達効率が良いだけでなく、登壇後の交流タイムや懇親会など、直接ターゲットと交流ができるのが強みです。
(3)コミュニティ形成&運営
メッセージ対象が集まるコミュニティを自ら形成し、運営する手法も一般的です。ユーザー会、勉強会など、形態は様々ですが、「特定のテーマ、課題に興味のある人たち」がオフラインで集まるコミュニティは熱量も高く、大きなフィードバックを得られるだけでなく、参加者はエバンジェリストに代わってメッセージを伝播していく存在にもなりえます。
昨今は「コミュニティマーケティング」として注目されていますが、エバンジェリストはコミュニティの顔役としても有効です。
(4)イベント、セミナーを開催
コミュニティにも近しい位置付けですが、特定のテーマでイベントやセミナー、勉強会などを開催し、そのテーマに興味のある人たちを募ります。講師にその道の有識家や業界関係者を招待するなどすれば、コンテンツが充実するのはもちろんのこと、エバンジェリストとしてのネットワークを広げる効果も得られます。
(5)コンソーシアム、業界団体活動
関連する業界団体に参加します。また既存の団体がない場合は、自ら設立し運営する方法もあります。(3)(4)と同様に、特定のテーマに関して興味関心のある関係者とのネットワークができ、情報発信&収集に役立つ他、状況によっては規制緩和や世論喚起など、事業推進の一助となる効果も見込めます。エバンジェリストはその中で企業の代表として参加し活動することで、外交官的な役割を担うことになります。
例)一般社団法人シェアリングエコノミー協会
シェアリングエコノミーという新しい概念を普及啓発する団体。
(6)メディアリレーション、メディア露出
メディアリレーションについては、広報活動と同様にトピックスやネタを提供する場合もあります。しかし、根本的に広報の役割と異なるのは、掲載が目的ではないという点です。専門家として情報提供したり、自社のサービスだけでなく業界全般を語ることで、専門家として登場することも可能になります。
これらの活動は単発で実施するのではなく、相関性やストーリーを考慮して、一貫性を持たせることが必要です。また、活動の様子を発信したり後から参照できるよう記録して「見える化」することで、活動が信頼の蓄積として積み上がります。
また、仕組み化するなどして効率よく継続していくことで、自身の活動する領域やコミュニティにおいて、自ずと専門家としての認知が高まってきます。そこで、次項では「専門家」として発信する際に気をつけるべきポイントを挙げていきます。