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江端浩人氏に学ぶ、マーケティングとテクノロジー改革の最前線

【江端浩人のDX講座】サブスクリプション成功の秘訣は「おもてなし」精神?日本文化と定額制ビジネス

サブスクモデルに合う/合わないビジネスモデル

 サブスクの隆盛によって、失敗例も出てきている。筆者はそのような失敗事例は、そもそものビジネスモデルが1)サブスクではなく定期購買モデル2)サブスクに向かないモデル、のどちらかだったのではないかと考える。

 たとえば、定期購買モデルを月額定額で行うものには、健康食品や被服(デザインTシャツやスーツ)などがあったが、そもそもの既製品が定期的に送られてくるだけでそれ以上の付加価値がないことからサブスクとは言い難い。

 一方で食品や被服であっても、地元の名産品や季節ごとのものや、個人の食事スタイルに合わせたもの、スタイリストがパーソナライズしたファッションなどは付加価値が高いためにサブスクモデルがフィットする。

 つまりサブスクに合うモデルは、「不稼働資産を活用したモデルで、個別の商品原価が低いもの」と言えるのではないだろうか。たとえば複製使用にあたり原価が低い、ライセンス料のみで物理的な仕入れや配送が発生しない、デジタルコンテンツなどが挙げられる。

 反対にサブスクに合わないものは、原価の高いもの、あるいはキャパ(供給)が決まっており十分なサービス提供ができないものが挙げられる。たとえば、レストランなどの月額食べ放題や飲み放題は原価が高い。もし、食べ放題や飲み放題のお客で常時満席になっていたら、経営に影響が出る。また、多くの顧客を獲得するとサブスクのお客に向けて十分な座席が用意されていなかったり、一般のお客が入れなくてクレームが来たり、制限が厳しいと継続が見込めないため、こちらもブランド毀損とビジネスがうまく回らない結果になる。

 従って、筆者は原価の高いものやキャパに限界があるものに関してはサブスクをお勧めしない。時流に乗って露出や顧客が増えたとしても、持続性に問題があれば必ずどこかでハレーションが起きるのである。サブスクの最重要KPIは”継続率”である。いかにいいサービスを提供し続けて継続してもらえるか、まさに“お得意様”や“常連”をどの程度作れるかが勝負になるのだ。サブスクリプションモデルを自社で実施する際には、保有する資源とケーパビリティを十分吟味して顧客獲得型から顧客囲い込み型への転換が可能か十分に考えないといけないだろう。

 デジタルトランスフォーメーション最前線第1回は、いかがだっただろうか。第2回は、「5Gの登場と動画サービスの隆盛」というテーマでお届けする予定だ。

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この記事の著者

江端 浩人(エバタ ヒロト)

iU大学教授、江端浩人事務所 代表、MAIDX LLC代表、AlMONDO事業顧問

米ニューヨーク・マンハッタン生まれ。米スタンフォード大学経営大学院修了、経営学修士(MBA)取得。伊藤忠商事の宇宙・情報部門、ITベンチャーの創業を経て、日本コカ・コーラでマーケティングバイスプレジデント、日本マイクロソフト業務...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/03/27 09:00 https://markezine.jp/article/detail/30655

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