デジタル変革を通して自ら実感 「顧客体験」は最強の武器
初日の「Business Transformation through CXM」をテーマとしたキーノートのオープニングを飾ったのは、アドビ 会長 社長 兼 CEO シャンタヌ・ナラヤン氏。アドビはパッケージビジネスからサブスクリプションビジネスへと転換を図り成功した企業として広く知られているが、それは常に顧客とのコミュニケーションが求められるビジネスになったことを示している。結果的に顧客体験が最重要という点を、アドビ自身が最も理解していると言えるだろう。
顧客体験を高める上で最重要なのがデータだ。シャンタヌ氏はDDOM(Data Driven Operation Model)という同社独自の言葉を強調。データに基づいたビジネスオペレーションを展開し、顧客体験を高めデジタル変革を加速させているという。
「アドビのミッションはデジタル変革で世界を変えることです。私たち自身デジタル変革を実行し大きな成長を遂げています。『顧客体験』は企業にとって最重要な成長ドライバーなのです」
CXMが企業の成否を左右する時代
顧客体験が最重要と語るシャンタヌ氏が強調した言葉が、Customer Experience Management(顧客体験管理/以下、CXM)だ。
昨今「顧客体験」という言葉を耳にする機会が増えた。顧客体験を高める手段としてカスタマージャーニーを描き、顧客へより良い体験を提供していくことの重要性は各所で既に説かれているが、同社が提唱するCXMは、一般的に語られている内容に比べ、「顧客プロファイル」に対する捉え方の奥行きが深い。
そもそも非認知の状態から始まり、コミュニケーションが深まるにつれて、いつ、どこで、何に興味関心を持ち、どういう行動を行ったのか、様々なプロファイルがリアルタイムで繋がり、「最新の顧客プロファイル」が形成されていくイメージだ。
CXMを重視しデジタル変革を推進した例としてシャンタヌ氏が紹介したのがベスト・バイの事例だ。同社は米国家電チェーン最大手だが、Amazonの登場により窮地に陥っていたという。当時についてヒューバート・ジョリーCEOは次のように語った。
「7年前、我々は死にかけました。私たちはAmazonとの戦いで生き残るために顧客体験へ投資をしたのです。CXMを重視しオンライン、オフライン境目なく一人ひとりの顧客プロファイルを徹底的に把握し、カスタマージャーニーを描き、顧客体験を高めることで復活できました」
具体的には店舗での行動を元に、メールやウェブサイトのパーソナライズを実現。顧客一人ひとりの体験を境目なく高めることに成功した。